第68話:回復術師は稽古をつける④
「まずは……そうですね。前に戦ったときに思ったことですが、クラインさんはやや力任せにしてしまっている側面があります」
俺がパッと思いついたことを口にする。
クラインさんは顎に手を当て、思い出すように呟いた。
「力任せに……そうかもしれないな」
もちろんクラインさんは王国で最高の魔法士なのだから、力任せとはいっても確かな技量も持ち合わせている。
とはいえ、思い当たるところはあったようだ。
「クラインさんは有り余る魔力と力強いパワーがあります。ですが、そこにもう一段階上の緻密な魔力操作を覚えればさらに高みを目指せますよ」
俺は、『探知』『解析』『身体強化』を習得する過程で、緻密な魔力操作を覚えた。
それを攻撃魔法にも応用することで小さな力を最大化することができている。
もっとも、『回復術士』から『回復術師』になったことで魔力量自体が大幅に増え、純粋な魔法の威力も強化された。
だからこそ回復役でありながら本職の魔法士以上に戦えているのだが……まあ、それは今のところは再現性に乏しいし、考えても無駄なことである。
「少し肩を貸してください」
「それはいいが……いったい何をするつもりなんだ……?」
「俺の魔力の使い方を見れば参考になるかもしれません。……自己流ですけどね」
言いながら、クラインさんの右肩に俺の左手を乗せた。
「どんな魔法でもいいんですが……そうですね、氷柱弾を人がいないところに撃ってみましょう」
「ああ、わかった」
クラインさんは、ギルドマスターという高い地位にありながらも、若輩者の俺の言うことを素直に聞いてくれている。
これがゼネストたちとは明確に違う強さの秘訣なのかもしれないな。
そんなことを思いながら、氷柱弾を展開するクラインさんの魔力を『解析』し、その解析結果によるムラを徹底的に矯正する——
俺は回復術師として、瞬時に対象を回復させる高度な回復魔法を求められ、そればかりを使ってきた。
微量の俺自身の魔力を対象に流し込むことで根源に働きかけ、その作用で身体を回復させる。
その過程で、触れている対象の魔力を操れるようになった。
ただし、相手が俺の魔力操作を受け入れない場合にはできないのだが……。ともかく、俺はこれを『魔力代理使用』と呼んでいる——
「……⁉︎ な、なんだこれは……!」
氷柱弾を撃とうとしていたクラインさんは、何かを感じ取ったようだった。
「流れに任せてください。俺が操っています」
「な、なるほど……ということは、ユージはこれほどまでに緻密……さらに大量の魔力の処理を並行していたのか……」
「まあ、そういうことですよ」
そうしてできた氷柱弾は、使っている魔力量こそ普段と同じだが、いつもよりも禍々しく青く輝いているように見えた。
実際、『解析』した結果も前に見たものとは比べ物にならない威力になっている。
「じゃあ、撃ちますよ」
ニコニコ漫画にて本作のコミカライズ『劣等紋の超越ヒーラー 〜世界最強の回復術師による異世界無双〜』が本日更新です。2話前半まで公開されております。
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