第57話:回復術師は遭遇する
◇
話が纏まったので、俺たち四人とシロは温泉施設から出てきた。
歩きながら、一般の村人や冒険者に聞かれても問題のない範囲で依頼についての説明を受けていた。
驚いたのは報酬の件だ。
「今回の依頼は王国からの特命ということもあって、かなり条件が良いわ。依頼を受けてくれた時点で受託報酬が金貨100枚、出動報酬が金貨1000枚、成功報酬は未決定だけど、金貨5000枚じゃ下らないと聞いているわ」
「そんなに貰えるのか……」
「王国どころか、世界を揺るがす事態なんだから、このくらいの報酬は当然だと思うわ。これでも安すぎるくらいだから、もうちょっと掛け合ってみるけど」
「なるほど、そこはヘルミーナに任せるよ。よろしく頼む」
俺はあまりお金のことでがっつくタイプの冒険者ではないが、もらえるのであればより多く貰える方が嬉しい。
これについては朗報だった。
参加するだけで金貨100枚というのはかなり美味しい。
半額をパーティの活動資金として留保した後に三人で分割することになっているのだが、それでも一人当たり16枚ほど。普通の村人が半月余裕を持って暮らせるほどの金額だ。
もちろん諸々の生活費はパーティの活動資金から出すから、純粋に自由に使える金額ということになる。
今でも持て余していたりするのだが、不安定な職業だけにいくらあっても困ることはない。貯金はあればあるだけ安心できるので、冒険者にとってお守りのようなものである。
村の中心部からやや下って、俺たちが借りている宿が近くなった頃。
「ねえユージ、あの人見たことある〜!」
「ん?」
シロが突然路地裏のゴミバケツを見ながら言ってきた。
俺も常に『探知』を使っているわけではないので、人がいるのかどうかすぐに判断はできなかったが、明らかにこんなところに人なんていないだろう。
いるとしたら何をしているというんだろうか。
「いやいや、こんなところに人なんて……それも見たことがあるって——え?」
ゴミバケツの方へ歩いて確認すると、隠れるようにボロボロの青年が蹲っていた。
冒険者のような格好をしているが、汚れて浮浪者のようになっているし、顔色も悪い。
しかしこの青年、シロが言っていた通り俺もどこかで見たことがある。
微かな記憶を頼りに、どこで見たのか特定する。
「あっ、ゼネストのパーティにいた新人の回復術士か。まあ……お前には悪いことをしたな」
確か、俺が抜けてからヘルミーナが加入して、最終的にこの回復術士がゼネストのパーティに加入したという流れのはずだ。俺の認識が正しければ。
ゼネストのバカのせいで加入歴数日というレベルで一年の冒険者資格停止だから、運悪くババを引かせてしまった。
この青年に恨みはないし、新人がパーティーリーダーに口出しできるほど風通しが良くないパーティだということを俺は知っている。
俺としては心が痛いというのが本音だ。
パーティに所属し、結果としてゼネストについて行ったことは事実なのでどうすることもできなかったのだが……。
「それで、こんなところで何してるんだ?」
「あなたはあの時の……ユージさんでしたっけ。お願いなので、あの人たちに言わないで……」
「何か訳ありか……? なんで知られるとまずいんだ?」
「僕、パーティを抜けたので……」
「もしかして追い出されたのか?」
「いえ、僕がやり方についていけなくて、逃げ出してきたんです。今頃探していると思います……」
「あいつらもそんなに暇じゃないだろ……。こんなところで隠れなくてもいいと思うぞ」
「いえ、絶対探してます。絶対に……」
俺は首を傾げて、ふと三人の方を見た。
三人とも俺と同じようによくわからない顔をしていたので、俺の理解力の問題ということではなさそうだ。
「よかったら、どんな事情があるのか教えてくれないか? 飯ぐらい奢るからさ。腹減ってんだろ? もしかしたら力になれるかもしれないしさ」
「そんな……申し訳ないです」
その瞬間、青年のお腹がぐーっと鳴った。
この様子だとご飯をロクに食べていないんだろう。
「気にするなって言っても納得できないか。じゃあ言い方を変えよう。何があったのか、俺に教えてくれ。その報酬として飯をご馳走する」
「……わかりました。お気遣い感謝します」
そんな流れで、近くの飲食店に五人で駆け込むこととなった。
俺たちもそろそろ夕食の時間だったし、たまには外食というのも悪くない。
ヘルミーナは帰ってくれても良かったのだが、流れ的に一緒についてくることになってしまった。
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