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第52話:回復術師は羽を休める

 ◇


 闘技場を離れて、サンヴィル村北部の温泉へ。

 この村の温泉に何か特別な効能があるというわけではないが、一般的に温泉に入ると身体に流れる生命力と魔力が活性化され、疲労回復に最適とされる。

 忙しい冒険者は常に疲労を溜めがちになるから、たまにはこうしてゆっくり過ごすのも仕事のうちなのである。……というのは半分本音で、半分言い訳だ。


「じゃ、俺とシロはこっちだから。二人もゆっくりな」


「こればっかりは仕方ないわね。私たちが先に温泉から上がったらそこの待合室で待ってればいいのよね?」


「ああ、そうしてくれ。俺が先でもそうするつもりだし」


「リリアとは積もる話もありますからね……。覚悟しておいてくださいね!」


「それってどんな話なんだ……? 俺にもちょっと聞かせてほし——」


「ユージには関係ありません! ユージのことですけど!」


「え……はあ!? ますます気になるぞそれ」


「女の子には女の子の事情があるんです! リリアなら分かりますよね?」


「ええ、まあ……そうね。ユージには関係ないわ」


 二人の間では共通理解なのか……。

 まるで俺だけ除け者にされたみたいでちょっと気になるが……まあ、大事なことならそのうち知ることになるだろう。


「分かったよ。言える時になったら教えてくれ。じゃあ、また後で」


 二人と別れて、浴場へ。

 この時間は他に客がいないらしく、ガラガラだ。真昼間から僻地の温泉に来る客は珍しいからな。


 脱衣所で服を脱ぎ、ロッカーに収納する。

 使用されていないロッカーは鍵が刺さったままなのだが、ふと一箇所だけ鍵が抜かれたものがあった。


 独り占めできるかと思ったけど、先客がいるのか……。


 プライベート温泉ではないので仕方ないが、怖いおっさんがいたら嫌だなあと思いつつ、俺は浴場へ向かった。


「シロ、滑るから気をつけるようにな。それと、他のお客さんの迷惑にならないように」


「分かったー! ユージの後ろついていくー」


「それなら安心だな」


 扉を開けると、朦々と湯煙が立ち込めていた。

 迷わず露天風呂へ。


「ふぅー……」


 適度に温かく、肌に吸い付くようなお湯が気持ち良い。

 一気に疲れが吹っ飛び、極楽気分だ。


 シロも気持ちが良いのか、目をとろっとさせている。

 そういえば、先客がいるかと思っていたがどこにも人らしき影は見つからない。


 何かの間違いだったのだろうか?

 温泉職員が使ってるとか?


 まあ、なんにせよ希望通り独り占めできたのはよかっ——


 ザバーッ!


「え?」


 何かが水中から飛び出してきた。

 水しぶきが顔に降り注ぐ。


 多分、よく見なくても人である。それも、女。ここは男湯だったはずなのだが……。

 湯煙のせいで大事なところがピンポイントで隠れてしまっているのが残念……ではなく幸いだったが、もはやそんなことはどうでも良い。


 なんでこいつがこんなところに? なんの目的で? こいつ実は男だったの?

 様々なことが頭をよぎったが、最終的に言葉になったのは次のようなことだった。


「え、えーと……ヘルミーナだっけ?」


「ええ、お久しぶり。突然出てきたことを悪く思わないでね」


「突然出てきたとかそんなことじゃなく……その……」


「安心しなさい、私は女よ。ここが男湯だってことは知ってる」


「安心できねえよ!? ダメなやつだろそれ!」


「あなた……ユージが温泉に向かっていたから、先回りしたってわけ。昨日話していたことで、進展があったからね」


「だとしても普通に待ってれば良かっただろ。別に避けはしねーよ」


「私だって温泉に入りたかったもの。何か理由を作らないと騎士団はケチだから経費使えないの!」


「お前の事情かよ!? はあ……それで、なんで神出鬼没なマネを?」


「最初は私だって普通に待っていたわ。でも遅いから、暇つぶしに泳いでいたの」


「温泉は遊泳禁止な!」


 裸の付き合いをすると内面が見えてくると聞いたことがあるが、それは本当だったようだ。

 まるでコントのようなやりとり。だんだんとヘルミーナの素が見えてきた。

 公安部隊ということで、もしかするとそう見えるよう意図的に装っている可能性もあるが、俺はこれがこいつの本来の姿なんだと思いたい。

 これが作り物なら出来すぎているしな。


「まあいい。他の客が来る前に出て行けよ? それで、話ってなんだ?」


 冷静を装いつつも、心臓バックバクである。

 ヘルミーナはなかなかの美人なのだ。紳士である俺じゃなきゃどうにかなってしまうだろう。


「じゃあ、ちょっとここを出てからね。せっかくだし、ユージの背中を流しながら説明するわ」

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