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第50話:回復術師は見せつける

 ◇


 クラインとリリアは大勢の観客の注目を浴びていた。


「あれって誰だ? 結構やるのか?」


「ユージが出てこないのかよ。つまんねー」


「はーあ、ちょっとだけ見て帰るか……」


 とは言っても、全くと言っていいほど期待されていなかったのだが——


「準備はできているか?」


「……ええ」


「よし、ではリリアに尋ねる。決闘は申し込まれた側にルールの選択権があるが、何か希望はあるか?」


「選択権?」


「ああ、よほど常識から外れていない限りはなんでも自由に決めていい。例えば挑戦者側に先取攻撃権を認める——とかな」


「前にユージが戦ったときはなんて答えたの?」


「あいつは特になにも。『お手柔らかに』なんて言いやがったから本気でぶつかったさ。ギルドマスターともなれば真意も見抜けるようになるってわけだ」


「そう。……じゃあ、私もそれで!」


 言って、リリアは魔道短機関銃マジック・サブマシンガンをクラインに向けた。

 間髪入れずに引き金を引き、無数の魔弾が炸裂した——


 不意打ちそのものだったが、『ルールの希望』を答えた時点で決闘は開始されている。これも戦略の範囲として不正とは扱われない。


「ふん、そうこなくっちゃな! 勝つためならなんでもする心意気……冒険者らしくていいじゃないか!」


 クラインは前面にバリアを展開し、衝突に備える。

 だが——


「かかったわね!」


「なんだと!?」


 総数2万発の魔弾群が急遽あらゆる方向に進路を変え、クラインの背後、左右、あるいは上空から降り注いだ。


「昨日ユージにあんなに簡単に弾かれちゃったもの! 私だって対策するわ!」


「面白い……だが——ふんっ……ふんっ……ふんっ! うおおお!!!!」


 クラインの身体が膨張し、生命力・魔力・防御力・攻撃力が大幅に上昇する。

 そして次の瞬間、無数の魔弾がクラインを襲った。


「うおおおおおおお!!!!」


 まったくの回避なく全ての魔弾を受けたクライン。


「……っ! だ、大丈夫なのこれ……!?」


 さすがのクラインでもこの数の魔弾を前にしては成す術がなかった——ということか。となれば、今度はクラインが無事かどうか心配になる。


 リリアが武器を下ろした時だった。


「まったく問題ない。しかし、並の冒険者なら死んでいたな……。さすがはユージが見込んだ冒険者だ。ここまで楽しめたのはユージ以来かもな。……って、そう考えると短いが」


 そんな風にクラインがリリアの評価を口にすると——


「す、すっげええええ!!」


「ギルドマスターはやべーけど、あの子も普通にやべえよ! ……闘技場が穴だらけだよ!」


「あんなの見たことねえ! なんであんな冒険者が無名なんだよ! ユージといい、あの子といい、絶対おかしいだろ!?」


 盛大な手の平クルーに少しドン引きするリリア。


 と、同時に決闘を始める前にユージが『絶対に勝てない』と言っていたことを思い出す。

 今もてる全力を叩き込んでも、清々しいくらいに歯が立たなかった。


 昨日のユージとで二連敗。やはり気分としては下がるが、良い経験になったのは確かだ。

 軽く息を吐き、リリアは両手を挙げた。


「降参よ。これ以上戦っても勝てないと悟ったわ」


「む、今からが本番だと思ってたんだがなぁ」


「多分、本気でかかってこられたら私……死ぬわ。それがこれからの課題ね」


「そうか、何かを掴んでくれたのなら何よりだ。俺も久しぶりに興奮したぞ」


「それなら良かったわ。ありがとう」


 リリアは中央区画を離れて、ユージのもとへ戻ろうとした。

 なのだが、ユージの姿が見つからなかった。ユージだけじゃなく、リーナとシロの姿も消えている。


 キョロキョロしながら、二人とシロを探すリリア。

 幸い、ユージの姿はすぐに見つけられた。こうして大量の冒険者に埋もれているというのに、ユージは一際目立っているように感じられる。


 もしかすると、これがクラインの言っていた独特のオーラというやつなのかもしれない。


 しかし、ユージの近くにいる人物を見た瞬間、そんな些末なことを気にしていられなくなった。


「な、なんでユージが!?」

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