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第44話:回復術師は相手をする

 リリアは、俺が作った『魔道短機関銃』と瓜二つのものを片手に持っていた。

 小柄な彼女でも片手で扱えるし、横から様子を見ていた限りでは、見た目が同じでも性能が段違いだ。


 やっぱり、本職が作ると違うな。

 まあ、練金術士が武器を製造するのを本職というべきかは議論の余地がありそうだが。


「じゃあ、ひとまず試し撃ちしてみたらどうだ? 俺が軽く蹴散らしちゃったと言っても、まだ50体くらいはいるだろ?」


「今ならできる気がするわ。任せて!」


 さっきまでのリリアとはまるで顔つきが違う。

 不安そうな気持ちからくる劣等感や不安のようなネガティブな感情が全て払拭され、自信と期待で一等星のように明るく輝いている。


 だが、連射——の直前でリリアの引き金を引く指が止まってしまう。

 何を考えているのか、さっきぶっ放した俺ならわかる。


「安心して大丈夫だ。俺たち以外に周りに人はいない」


「どうしてわかるの……?」


「『探知ヒール』でこの辺一帯の魔力を常に監視しているからな。人と魔物、さらにいうとシロみたいな魔獣とは魔力の質が根本的に違う。ま、ここは視界が開けているし、目視でも十分だけどな」


「そんなことまでできるなんて……ユージって凄い!」


「いや、それほどでも——」


「そうなんですよ! ユージは凄いんです! なので、ユージに認められたリリアは自信を持っていいんです!」


 俺の声をかき消すようにリーナが声を上げた。めちゃくちゃ楽しそうに……。


「謙遜とかじゃなく本当に——」


「ユージがすごいのわかってくれてシロも嬉しい〜」


「……」


 なんか、もう否定するタイミングを見失っちゃったな。

 まあ、褒められて悪い気はしない。ありがたく受け取っておこうか。


「じゃあ、いくわ!」


 と言って、リリアが新兵器をぶっ放す。

 一秒間に数万発——正確には19256発の弾丸が一斉に飛び出していく。

 これだけの弾数があるとどこかを狙わずとも魔物は逃げる隙がなく絶命していった。


 もはや確認するまでもなく50体は余裕で倒しているだろう。


「すごい……! これなら見返せるわ!」


 飛び上がって大はしゃぎし、武器に頬擦りするリリア。

 テンションを上げることには成功したが、浮かれすぎるのも良くない。

 ちょっとこの辺でバランスをとっておくとしよう。


「早速大活躍してくれたのは嬉しいし、なかなかのものだと思うけど、まだリリアには伸び代があると思うぞ。この調子で改良を重ねていってくれ」


「私頑張る! でも、こんなに強い武器があればSランクの依頼でも余裕で倒せちゃうかも? ユージのために頑張るわ!」


「んー、Sランクとなると一筋縄ではいかなくなるんだけどな。ここよりさらに強い魔物になると防御力が高かったり、回避力が高くてそもそも当たらないってこともある」


 リリアは満足してしまっているが、これが真実だ。

 そういう意味では、とんでもない武器を持っていても実はまだ大したことはない。第一、初めて使った武器を使いこなせる者などほとんどいないだろう。


 Sランク依頼という意味では、今の時点ではリーナの方が活躍できるだろう。

 あくまでも俺やリーナは支援職なので、これからメインとなるアタッカーはリリアに任せたい。

 そのためには、ここで満足されては困る。


「信じられないっていうことなら、俺に向けて撃ってみてくれ。全部回避してみせるよ」


「そんなのできるわけない! もし怪我でもしたら……」


「ユージなら大丈夫です。やってみてください。それに、もし当たっても私の強化魔法がかかってるので大した傷にはなりません」


「リリア、ユージ舐めすぎー」


「ほら、二人も言ってることだしさ」


「も、もうどうなっても知らないわよ!?」


 少し距離を取り、決闘のスタイルとなったところで出力抑えめでリリアが引き金を引いた。

 約二万発の弾丸が俺に向けて飛んでくる——


 しかし、俺が焦ることはない。

 アイテムボックスから使い慣れた短剣を取り出し、


 キンキンキンキンキンキンキンキンッッッ!


 襲い来る弾丸の全てを弾き続けた。

 リーナの強化魔法のおかげで身体が軽いし、『探知』を使うことで擬似的に動体視力を引き上げることができ、まるで止まっているかのようである。


 もちろんそれでも弾数の影響で避けきれないこともあるので、ジャンプしたり、後ろに下がったり、横移動するなどしてカバーする。


 まあ、本気を出せば全て弾くこともできるが、それは疲れるからな。


 最後の十発に関しては特別に手の平にバリアを展開し、衝突スピードをゼロまで減速。そうすることで、まるで手で弾丸を掴んだかのように演出した。

 実戦では全く役に立たないパフォーマンスだが、それだけ余裕があるということの証明にはなる。


 俺は、手の平に持つ十発の弾丸をパラパラと地面に落とした。


「これで終わりか?」


「そ、そんな…………!?」


 愕然とするリリア。

 今までにない強大な力を手に入れてもなお、歯が立たなかったのだから。

 それこそが俺の狙いだったわけだが。


「そう気を落とすな。初日にしては上出来だと思っている。ま、どうせ前のパーティを見返すならもっと凄くなってからでも遅くはないって分かっただろ?」


「ええ、舞い上がって勘違いしていたわ。私なんてまだまだよ。ユージは本当に凄いわ」


「いや……だからそんなに大したこと——」


「そうです! ユージは凄いんです!」


「リリアかしこいー」


 いやぁ……さすがに否定しておいた方が良い……よな?



 


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