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第39話:回復術師は教える

 ◇


 さっきの三人組のパーティからはやや離れた場所についた。

 魔物が密集している一番効率が良い場所からはやや逸れているのだが、それならそれでやっておきたいこともある。


「じゃあ、今日はリーナに全部任せようかな」


「全部……? それってどういうことですか?」


「言葉通り、今日の依頼を任せるって意味だぞ? たった50体だしな」


「ええええ!? いや、無理です! 無理!」


 物凄い勢いで首を横に振るリーナ。

 フェンリルの洞窟で一緒に戦えないのを残念そうにしていたので任せてみようかと思ったのだが。


「ここってBランクパーティ向けの魔物ですよね。私なんてまだまだ全然……」


「それなら問題ないぞ。確かに今のリーナじゃちょっと厳しいけど、ちょっとコツを掴めばすぐにでも戦えるようになる。というか、ポテンシャルは十分高いしな」


 俺はアイテムボックスから短剣を取り出した。

 ここ数日武器を使っていなかったので軽く振り回して、感覚を取り戻す。


「いいか、リーナは技量と腕力だけで魔物を攻撃してしまっている。まあ、つまり——こういうことだ」


 ザクッ!


 俺は近くにいたちょうどいいエリート・アンテロープを短剣で斬り付けて実演して見せた。

 急所を狙ったわけではないのだが、一撃で倒すことができた。


 討伐証明を切り取りながら、説明を続ける。


「リーナのやり方ではこういう原始的な方法で倒すことになる。でも効率が悪いだろ? そこで、魔力を併用して身体能力・武器性能を底上げするんだ。こんな感じで——」


 魔力により青い輝きを纏った短剣で近くのアンテロープを斬り付ける。


 ザクッ!


 さっきよりも格段に鋭利さが増し、破壊力が上がっている。

 おまけに副次的効果として魔力なしよりも傷の回復速度を遅延させることができる。

 もう少し強力な魔物になると極端に回復速度が速い魔物もいるので、そこでも効率よく対処できる。


 メリットに対してデメリットが『魔力を消費してしまうこと』以外に特にないので、非常に使いやすい。


「な?」


「す、すごいですけど違いがよく分かりません……! どっちも一撃ですし……ユージが強すぎるだけなのでは?」


 本気で実演したのではないのだが、どっちもワンパンというのは例が悪かったか……。

 さすがに天の声は再現不可能だしな。


 とはいえ——


「リーナも二回目のやつは十分再現可能だよ。魔力を流し込んで、剣と一体化するイメージでやってみるといい」


「魔力を流し込む……? ちょっとよくわからないです……」


「うーん、抽象的かもな。最終的には自分で気づくしかないんだが……まあ、その手伝いくらいはしようか」


 練習を繰り返すことで魔力操作の精度は上がっていくし、自在に使えるようになる。

 一度覚えれば忘れることはないし、きっかけさえあればすぐにでも覚えられるのだ。


 魔力操作の感覚に気づくには、実際に体内で魔力が動いている感覚を掴むのが最短ルート。


 群を抜いた魔力操作のプロフェッショナルである『回復術師』なら自分だけではなく、他者の魔力もある程度操作できる。そういう意味で手助けができるということだ。


「リーナ、剣を持ってくれるか?」


「はい……こうですか?」


 両手で剣を握ったことを確認して、俺はリーナの肩に手を触れた。


「……っ! き、急にどうしたんですか!?」


「ん? 何か問題か?」


「そういうわけじゃないですけど……なんか、ユージが積極的だなって」


 何が積極的なのかよくわからないが、俺はリーナの体内魔力を軽く操作し、剣へ流し込み、共有させた。

 リーナも何かに気づいたのか、ピクッと身体を揺らした。


 剣が淡く輝き、成功したことが視覚的に分かる。


「もしかして……こういうことなんですか!? なんか、力が漲っている気がします!」


「その通りだ。俺の補助なしでももうできるな?」


「はい、やってみます」


 俺が肩から手を離すと、一瞬だけ光が消えていき、すぐに復活した。

 どうやら一発でコツを掴んだようだな。


「じゃあ、近くの魔物をそれで攻撃してみるんだ。まあ、危なくなったら俺が助けるし、気楽にやればいいぞ」


「分かりました!」


 返事をするや否や、リーナは近くを歩いていたエリート・アンテロープに斬りかかった。

 念のため予告通りいつでも助けられるよう準備をしていたが——杞憂だったようだ。


 ザクッ!


 一撃で倒すことに成功し、即死した魔物がドサっと倒れた。


「わ、私一人で倒せました! ユージのおかげです!」


 俺は苦笑いして、


「何を言ってるんだ。これは100%リーナの実力だぞ。俺は何もしてないしな。練習がてら、この調子で50体倒せそうか?」


「はい、頑張ります!」


 ということで、一応はリーナの状況を注意しつつ任せることにした。


 さて、暇になった俺はどうするか。


「シロ、ちょっと背中に乗せてもらえるか?」

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