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第37話:回復術師は手伝う

 ◇


 リーナから頼まれた食材は、『卵』『えび』『合い挽き肉』『玉ねぎ』『牛乳』『キャベツ』『バナナ』『だいこん』『とまと』——以上。


 なお、調味料類は全てキッチンに備えられているので、改めて用意する必要はない。


 頼まれた9種類の食材に加えて、非常食も購入しておいた。

 アイテムボックスに入れておくと腐敗することはないので、念のため持っておく冒険者は少なくない。

 とはいえ未調理の食材ばかり持っていても仕方がないのでどこかのタイミングで調理しておく必要はあるが。


 宿に届けられた食材を収納し、部屋へ戻った。


「待たせたな」


「ユージおかえりなさい!」


 純白のエプロン姿で出迎えてくれたリーナ。

 いつものローブも凛々しい感じで似合っていたが、エプロンだとより家庭的で優しい印象だ。


 どっちも良いんだが、こちらの方が新鮮な分感動も大きい。

 俺は照れを隠すように急いで食材を取り出した。


「これで全部だ。合っているか?」


「はい、大丈夫です! 完璧です。ありがとうございます!」


「どういたしまして。手伝えることがあるなら手伝うけど、できることはあるか?」


「あー、そうですね……じゃあエビの殻剥いてもらっていいですか?」


「オーケー、そのくらいお安いごようだ」


 リーナがおぼつかない手つきで別の準備に取り掛かっているのがやや気になるのだが、俺は俺で作業を始めた。


 山積みになったえびを前にして、個々の構造を解析。

 人間や魔物と比べてかなり単純な構造なので、一瞬で終了した。


 解析結果をもとに、最も効率の良い塩梅で解体。

 ピキピキピキピキ……。


 と殻が割れる音が心地よく鳴り響き、殻剥きが完了した。

 少し細工をして、背わたも殻に癒着させてあるので、サクサクと取り外すだけで仕事は完了だ。


 ここまで、時間にして10秒ほど。


「終わったぞ」


「え、もうですか!? 速すぎです……!」


「そうか? 他に何かできることがあればいいんだが」


「うーん、じゃあキャベツをすりつぶしてください!」


「キャベツを? ……分かった」


 てっきり卵やら薄力粉を準備しているので、エビフライにするのかと思ったのだが、違うらしい。

 キャベツを使うエビフライなんて聞いたこともないしな。


 何か考えがあるのだろう——と言われるがままにキャベツのすりつぶしに取り掛かる。


 専用の機械を使ってもいいのだが、すりつぶしならもっと簡単な方法がある。


「よっ」


 シンクに手の平で軽く押してやることで、圧力により簡単に潰すことができるのだ。

 作業に取り掛かる前にさっきの解体でいい感じに見えない切り込みを入れておくのが綺麗に磨り潰すときのコツだったりする。

 なぜかあまり流行らないようなのだが、この方が楽で速い。


「終わったぞ」


「う、嘘ですよね!? わっ……本当でした」


 若干ドン引いているような気がするのは多分気のせいだよな……?


「わかりました。えーと、じゃあ衣に混ぜて、サクサクのエビフライにしますね」


「え? これエビフライなのか?」


「そうですよ? キャベツのおかげでサクサクになると思います!」


「そ、そうなのか……。キャベツ入りのを食べたことがなかったもんでな」


「私も初めてです! でも多分美味しいと思います!」


「え」


「どうしたんですか?」


「いや、なんでもない。楽しみに……してるぞ」


 ちょっと雲行きが怪しくなってきたのだが、多分大丈夫だろう……多分、おそらく。確信はないが。


 リーナはエビフライのために用意したであろう衣に調味料類を次々と投入していく。

 塩胡椒は全然分かるとして、割合が独特なのと、ソースとかって食べる前にかけるものじゃなかったっけ?


 いや、完成するまではわからないしな。

 温かく見守るとしよう。


「うーん、今回は見た目がイマイチですけどこんなもんですね」


 緑色のエビフライになったのはリーナ的には意外だったらしい。


「味見をしないのか……?」


「フライで味見なんてしないですよ。今更何をやっても手遅れですし」


「うん、まあ……それもそうだな」


 俺の微妙な心境はどうも伝わっていないらしい。

 リーナに代わって俺が緑色のエビフライの揚げ担当をしているうちに、リーナは次の作業に取り掛かった。


 二品目はハンバーグらしいのだが、こちらはバナナとにんじんとだいこんを黄金比でブレンド(リーナ説)しているらしく、なかなか期待……できそうだ。黄色のハンバーグって見たことあるだろうか? ははっ……。


 そして、いざ実食——


「今回はなんとか爆発させずに済みました! 大成功です——!」


「そ、そうなのか……」


 爆発って何かの比喩なんだろうというのはさすがに俺でも分かるが、リーナ的には成功だったらしい。

 まずは一口。


「んん————っ」


「ど、どうですか……?」


「不思議な味……だな。これは初めてだ。新感覚料理……か」


「それは美味しいってことですよね! 初めて喜んでもらえたので本当に良かったです!」


「うん、想像に任せるよ……」


「じゃあ、これから毎日私、頑張りますね!」


「あー、いや……俺も腕を磨きたいしさ、明日からしばらく俺に担当させてくれないか?」


「ユージがですか……?」


「うん、もしかするとリーナも参考にできることがあるかもしれないし」


「それもそうですね! 分かりました、楽しみにしていますね」


「ありがとう、助かるよ」


 ……本当に。

 数日でなんとかしないと、本当にヤバイ。

 これはダメなやつだ。

なんとなく閑話のような感じになりましたが、大事なことだったので……。

明日から第二章本番みたいな感じです!

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― 新着の感想 ―
[一言] 料理の腕は間違いなく劣等紋……
[気になる点] いつも不思議なのが食べた本人(この場合リーナ)は 美味しいと感じているのだろうか? [一言] 最初の「待たせたな」で つい コント赤信号のネタを思い出してしまいました
[一言] 夢・・・ はかなく散る
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