ワタクシ、高貴な身の上でしてよ
少々遅れました。
感想評価ブクマ等があれば筆ののりが良くなるかも知れないです(チラッ)
――天空都市 ラストル・ギア 教会前広場
《これより、メニュー画面を通常仕様に切り替えます》
《『鍵』のランクがアップしました『無色の鍵』→『幼気な詐欺師の鍵1/5』》
《『鍵』の傾向値が閲覧可能になりました》
《『My Gate』の機能が解放されました。開闢の門を開くことで『幼気な詐欺師の門』に侵入可能です》
《フレンド機能が解放されました。パーソナルを交換し、フレンドを増やしましょう》
《未確認の報酬があります》
《イベントの告知が来ています》
《タイト2 様(Not Friend)よりメッセージが届いています》
《ギルドで始まりの門攻略の旨を報告しましょう》
ユリエールによって飛ばされ、次の瞬間にはログインの時と同じ姿勢で開闢の門のそばに立っていたテラを待っていたのは、目眩がしそうな程大量のシステムメッセージ。
こういう風に一気にやることが増えると全部ほっぽり出してしまいたくなるが、どれも重要案件なのでそうも行かない。
順番に整理していきましょうか。
まず上三つは鍵関連ですね。言動のログによって鍵の傾向が決定すると言う設定でしたし、恐らくチュートリアル終了に合わせてログを参照し、変化する仕様になっていたのでしょう。
それに伴い『My Gate』に関しても解放されています。後ろにある開闢の門から行けるようですが、取り敢えず今はスルーします。
また、言動のログを参照した結果を数値で表したものが『傾向値』です。これについては見た方が早いでしょう。
――――
『幼気な詐欺師の鍵』
《Call Card 1/5》
・ユリエールのカード
《傾向/傾向値 (上位5つまで表示)》
・幼さ 12
・演技 10
・戦闘 5
・知性 4
・採集 2
――――
これを見ると私は幼さと演技を感じる言動が多かったという事が読み取れます。今までの行動を思い返してみても納得のいく結果ですね。
この数値が何に影響するものなのかと言いますと、前にも軽く説明しました通り、『My Gate』ダンジョンの内部構造です。
つまり私の場合、実際にそうなるかは分かりませんが可能性の一つを挙げるなら、もちっふるみたいなかわいい外見をしつつ(幼さ)も、その実(演技)そこそこ好戦的(戦闘)で知性もあるモンスターが出やすい、という感じですね。
傾向値によっては珍しいモンスターや素材が大量!なんてケースもあるので、傾向値のコントロールに邁進しているガチ勢の方も居るそうですが、普通にプレイする限りに於いてそこまで気にする必要の無い数値です。
私にとっては、しっかりと演技が出来ているかの目安にするぐらいしか実用性の無い数値なので、紹介はこのくらいで良いでしょう。
ちなみに、鍵の名前の横の『1/5』という数字は『Call Card』の枚数/上限枚数だと説明にありました。現在はユリエールさんのCardのみなので一枚ですね。
次はフレンド機能の解放です。タイミング的に考えて、これも鍵の変化と同じくチュートリアルのクリアに紐付けられていたのでしょう。
どちらかと言えばマルチプレイよりもソロプレイの方が得意な私ですが、別段ソロプレイにこだわりを持っている訳でもないので、今後大いにお世話になる機能でしょう。
タイト2からのメッセージも恐らくフレンド登録ついでに会わないか、とかそんなんでしょうし、早速の出番ですね。おっと、その前に早くパーソナルを書いてしまわねばな。
タイト2からのメッセージはやはりと言うべきか、フレンド登録の件と、合流するための待ち合わせの場所と時間を問うものだった。
LUNEの様なメッセージ画面に、チュートリアルが今し方終わった旨と、今から中央ギルドに行くことを思考入力で書き連ね、メッセージを送る。
メッセージ画面を閉じ、報酬の受け取りとイベントの確認の為にお知らせを開く。視界がウィンドウに圧迫され、初めに目につくのはイベント開催の文字。
イベント詳細を眺めていると少々時間を食ってしまいそうなので、サッと斜め読みするだけに留め、先に赤く強調されている報酬欄を展開する。
チュートリアルクリア報酬と銘打たれたそれらは、序盤では大金と言える1000ギアと、経験値が100ポイント、それから初期装備交換チケットだった。
報酬を受け取ると同時に経験値によりレベルアップ。レベルが3まで上昇する。
《タイト2 様(Not Friend)よりメッセージが届いています》
ステータス画面を開き、ステータスの変化を確認し終えたところで、タイト2から折り返しのメッセージが届く。曰く、「了解、今からギルドに向かう」とのこと。
チケットを交換する時間ぐらいの余裕はあるだろうが、万が一で待たせてしまうのも忍びないので、私は確認作業を中断し、友人との待ち合わせを優先させる。
――空中都市 ラストル・ギア 第一中央ギルド
個人スペースになっているギルド内に入ってしまうと待ち合わせが出来ないので、少々プレーヤーで混雑気味の入り口付近でプレイヤー達のPNを眺め、タイト2を待つ。
普通ならば、一人でポツンと軒先に立ち、視線をあちこちへ彷徨わせる幼女など、迷子案件として優しい大人か悪い大人に即声をかけられるハズなのだが(偏見)。
幸いな事にプレイヤー達の見た目幼女率がわりかし高めだったおかげで、上手く紛れ込む事に成功しあまり目立つことは無かった。
目的の人物が現れたのは十分ほど経った頃。待ち時間を使って初期装備チケットで駆け出し短剣使いの装備セットを交換し、その性能を確かめている時だった。
「これはこれはテラお嬢様。大変お久しぶりでございます。折角の再開です。お話ししたいこともありますし、どうかあちらのカフェでお茶でもご一緒願えませんか」
いかにもな白銀の騎士装備に身を包んだ、180cm程の背丈をした美形の男が、見事な一礼の後にそっと手を差し伸べてくる。
内容だけ見ればただのロリコンナンパ男だが、爽やかな笑顔と自然で美しい動作に惑わされ、周囲がそれを許容する。
きっと周囲の人間が見ているのはナンパ男と女の図では無く、ささやかな恋心を抱く騎士様とお嬢様の図だろう。
イケメンフィルターってずるい。これでリアルでもこの顔なんだよなタイト2。
驚いた演技で時間を稼ぎ、返答を考える。
勝手に私をお嬢様にしたこいつにちょっとした意趣返しをしつつ、周囲の期待の眼差しを裏切らないようにするには……よし。
「えぇ、勿論お受け致しますわ。それより、お嬢様だなんてよして下さい。私とお2様の仲でしょう?寧ろ呼び捨てでもかまわないのですわよ?」
タイト2をお兄様に仕立て上げた上で、『仲』の部分を強調し、呼び捨て許可でダメ押し。
周囲の反応は上々、期待していたであろう騎士とお嬢様っぽいやりとりをした甲斐があるというもの。
「呼び捨てなど恐れ多いです。それに、兄などと言ってはあらぬ誤解を招きかねません。お控え下さい」
一方当人は焦ること無くそう切り返してくる。私の『仲』に対抗して『誤解』を強調してくる辺り流石である。
しかし甘い、その答えは予測済みだ。
「あら、お2様と呼べとおっしゃったのは他ならぬお2様ではありませんか」
すかさず私はこいつに『幼女にお兄様と呼ばせているロリコン野郎』の疑惑をかぶせていく。
実際には私たちはNPCでは無くプレイヤーだとPN表示でばれているため、これが茶番の類いだと言うことは全員理解しているはずだが、それでもタイト2を見つめる視線は心なしか少し冷えた気がする。
「こ、子供の頃の話ではありませんか。ご勘弁を。それよりも、さぁ早く行きましょう。美味しいと評判のケーキがあるんですよ」
状況の劣勢を考慮したのか、即時撤退を決めたタイト2。私も十分満足したのでそれに乗ってやる。
ただ最後に一つ。
「まぁ! お2様が私の為にケーキをご用意して下さるんですね!?嬉しいです」
訳:勿論お前の驕りな?
「は、はい。楽しみにしていてください」
爽やかな笑顔が一瞬だけ引きつったのを私は見逃さなかった
思わぬ所で茶番タグ回収
そういえば、説明忘れていましたが、主人公は戦闘終了と共に武器がインベントリに自動収納される設定にしています。戦闘開始時も同様に自動で手元に出現する設定です。メニュー画面で切り替え可能。
YouGOにおける魔法は、スキルレベルによって影響する範囲や持続時間、威力が変化するものの、明確な魔法名などはシステム的には定められていません。
YouGO世界にはNPCによって魔法を使った技に名前を付けられていますが(例、プライリトル プライオール)、これもシステム的に個別のスキルとして認められているわけでは無く、この場合、プライリトルもプライオールも同じ信仰系魔法スキルの『プライ』だという位置づけです。
しかし、効果の弱い魔法も強い魔法も同じ『プライ』と呼ぶと不便な点が多いため、ある魔道士が天空都市中の魔法技術を集め、スキルレベルや効果の大小などを基準に区別し、名前を定めた『天空都市魔道大全』という本を執筆。
その本が大いに評価され、教育機関の教科書にも用いられた事で天空都市に広くその基準が普及していった、というバックストーリーがあります。