(ロリコンじゃ)無いです。
7話から本格始動。
チュートリアル編はシステムの紹介が主です。
『Your Gate Online』通称YouGOは、コスモ社より考歴2032年の春に発表されたタイトルである。同年秋頃にβテストが開始され、前評判は上々。そして12月の20日、クリスマスシーズンに合わせるように満を持して正式にサービスを開始させた。
32年3/12
《新規プレイヤーが入室しました。名前を設定して下さい》
ピコンというSEとともに視界の上隅に表示されるメッセージ。リアルではあり得ない表示法のそれは自分がVRゲームの世界に帰ってきたのだと言うことを実感させる。
受験勉強の為にゲームを半年間自粛し、先んじてプレイしている友人からの“YouGo面白いぜ自慢”にも必死で耐え抜いた先に今の自分がいるのだ。感動もひとしおである。
名前はテラ。ゲームネームは統一する派なので入力は一瞬。YouGoはキャラ名かぶりNGのゲームなのだが、運良く申請は一回で通った。
《容姿の設定を行います》
今の自分の姿が映し出された等身大ホログラムが目の前に映し出される。まだ何もいじってないのでデフォルトの男キャラが表示されている。
本来ならここで気合いを入れてキャラメイクするのが常道なのだが、その必要は無い。と言うのも、ゲームの公式ホームページ上で予めキャラメイクする事が出来るようになっているからだ。
このサービスは、スタートダッシュしたいけどキャラメイクも拘りたい、という人や、じっくり時間をかけてキャラ作りしたいという人達に大変好評で、現在では大抵のゲームで利用できる様になっている。
俺の場合はそのどちらでも無かったが、三ヶ月も時間があったのだ。勉強の合間に少しずつデザインを設定していけば完成させられるだけの余裕はあった。甚だ不本意ではあるが。
そう言う訳で、予めパソコンで作っておいたキャラデータをロードし、キャラメイクを完了する。
デフォルト男が消えてゆき、代わりに現れたるはポニーテールの女性キャラ。髪色はネオングリーン、瞳は金色。長身な自分とは反対に140cm程のかなりの低身長。
ロリコンではありませんよ。えぇ。断じて。まぁ完全に趣味が入ってないとは言いませんが、深層心理は自分でも分からないので(ちょっぴり言うと、小学校の頃の初恋の子に似てる気もしないでも無い)。
ただこれはプレイスタイルの問題でしてね。
私はロールプレイ、要は演じることが大好きでして。だから折角のゲームですし自分とは違う自分を演じたくてですね、はい。
まぁ、そこについては追々詳しく話しますので今はご勘弁を。
基本設定としてやるべき事はあと一つあります。それこそこの『Your Gate Online』の目玉コンテンツの一つ、『鍵』です。
この『鍵』について説明するにはYouGOの世界について少し話さなければなりません。
なかなか壮大な設定があるので、必要な部分だけかいつまんで説明しましょう。
まず、プレイヤーは『空中都市 ラストル・ギア』を拠点として冒険することになります。ただし、名前通りそこは空中に浮いているので何らかの手段で地上に降りなければ行けません。そこでプレイヤーや一部NPCに送られる『鍵』の出番です。
公開されている『鍵』の機能は3つ。
1つ、パーソナルの開示、自分の情報を見る、見せる為に使います。
2つ、行き先の決まった『Gate』の開門。
そして3つ、『My Gate』の開門。
ラストル・ギアに存在する門、『Gate』はそれぞれ地上やダンジョンなどに繋がっているので、プレイヤーはそれを通って冒険に行くわけですね。
『My Gate』は所謂自分専用のダンジョンだと思っていただければ。
説明はこんなところですかね、次に参りましょう。
《あなたに合った『鍵』を設定します。いくつかの質問に答えて下さい》
あぁ、補足しておくと、『My Gate』はプレーヤーの言動やステータスが中身に強く影響するのです。
例えば、戦闘ばかりのプレーヤーは攻撃力の高いモンスターが多くなるとか、生産系のプレーヤーは素材を落とすモンスターが多くなったり採取ポイントが増えたりといった具合に。
今回質問を受けるのは、初期の『鍵』の方向性を決めるためだそうです。とは言え、どんな内容のダンジョンでも自分のレベルに会わせた難易度で生成されるので、『鍵』の方向性はそこまで重要な要素ではないのですがね。
ですので、拘る人で無いならばこの質問も演出以上の価値は無いんですよね。
まぁ私は比較的真面目な性分なのできっちりと聞かれたことには答えますが。
《あなたはどの様な道を選びますか?戦いの道を進むのか想像の道を進むのか、或いは……》
「演じる道を選びます」
《では、過去と今と未来どれが一番好きですか?》
「未来……いや、過去ですかね」
《走ることは好きですか?》
「嫌いでは無いです。好きでも無いですが」
《ジャンプして下さい》
一瞬遅れたけどその場でジャンプする。こういうのもあるんですか。
《最後の質問です。自分と他人違いは何だと思いますか》
と、実はこの質問だけは固定されていて、ホームページでも確認することが出来るのです。ホームページには他人の回答とかも載っていたのですが、個性的なものが多く、眺めていると意外と暇を潰せましたよ。
まぁでも私は回答丸パクリというのは好きじゃないですし、幸か不幸か悩む時間はたっぷりとあったので、折角だからと1から考えてきました。
声に出すのは少し恥ずかしいですが。
「確固たる観測者たり得るか、だと思います」
《……、これにてアカウントの正式発行が完了いたしました。このままログインしますか?》
「はい」
《では数秒後、『天空都市 ラストル・ギア』教会前広場にスポーンします。よいゲームライフを》
主人公の脳内口調が急に変わるのは、自分のアバターが男性キャラから女性キャラに変わったからです。
利用規約はゲームにダイブする前にホーム画面で表示され、承認しないとダイブ出来ない仕様になっています。
様子見投稿なので、更新は暫く後になります(反響が凄ければ別ですが)。4、5話くらいストックできたら順次投稿予定です。
「確固たる観測者たり得るか、だと思います」解説
自分は他人じゃないんだから、本当に他人が「自己意識」と呼べる物を持っているのかが証明できない。もしかしたらここは自分の夢で、他人は想像の産物かも知れないし、自分以外はゲームのNPCで、作られた存在かも知れない。それは誰にも証明出来ない。所謂悪魔の証明ですね。
ただし、その点自分はこういうことを考えていられる時点で「自己意識」がある事を「自分は」確信出来るし、夢だとしても自分の夢、ゲームだとしても自分はプレイヤーだと自分レベルで確信出来る。故に自分は「確固たる観測者たり得る」のだ、という持論。
アマチュアの考えなので専門家が見れば鼻で笑うレベルかも知れないが、主人公と僕はほぼ同年代なので、思考レベルも同程度だと言うことで勘弁していただきたい。