【たのしく学ぶ倫理と哲学-01】人間の心理ってなんやねん
ぼく「おい、生徒よ」
生徒「はい」
ぼく「今日から、倫理・哲学を学んでいくで、よろしく頼むわ」
生徒「いきなり唐突過ぎませんか、先生」
ぼく「細かい事はええねん!センター試験とかでも科目として存在するし、皆も倫理学とか哲学って興味あるやろ?」
生徒「ただちょっと...難しそうですよね」
ぼく「そんなに難しい事はないんや、実際は学ばなきゃ損ってほど知識が詰まってるし何より面白いねん
ここで言う面白いっていうのは、学問としてというのもあるけれど娯楽的な感情でもやで」
生徒「倫理学が娯楽ですか?」
ぼく「せやで、頭のネジが2,3本飛んでる変な奴らが無茶苦茶な答えを出したり、マジもんの天才が常人には考えられないような行動をする。
そんなノンフィクションのヒューマンドラマが倫理学や。テレビのドラマやアニメでもなかなか無い展開をしてくるで」
ぼく「ちなみに関西弁で適当に喋ってるように見えるけれど、きちんと学問した筆者が真面目に書いてるで。
分かりやすく受け取ってほしいからラフな言い回しをしているだけで、これらはきちんとした知識として捉えてな。」
---倫理学・哲学ってなんやねん---
生徒「タイトルにもありましたが倫理学や哲学って何なんですか?」
ぼく「それが一番の難題とも言えるんやけれど、大雑把に言えば『人間について』という学問や」
生徒「人間について...いきなり難しそうじゃないですか!」
ぼく「そうでもないんや。ほら、数学やったら実数やら幾何学やらが中学校で出てきて、
行列やら関数やら微分積分...って増えていくやん?倫理学に関しては、『人間について』という主題からブレることはまずないんや」
生徒「でも『人間について』ってどういうことですか?よくある哲学の、『生きるってどういうこと』みたいな感じでしょう?」
ぼく「もちろん『生命に関して』も考えるで。
でもな、倫理学でも数学でも国語でもやけれど、めっちゃ賢い昔の人が編み出した考え方とか知識を勉強することやろ?
仮に直角三角形における三辺の法則(ピタゴラスの定理)を今から発見しろ!って言われてもコーラ一気飲みするより難しいやん」
生徒「そりゃそうですけれど...」
ぼく「だから自分で考えることってそんなに無いんや。もちろん専門的に研究するとなると、とんでもなく莫大な知識が居る。
それこそ哲学ともなれば全学問の深い知識+倫理的な考え方や哲学を学ばなアカンから、めっちゃ難易度高いんや。」
ぼく「でも、いうてめっちゃ賢い人達が学んだことを「ほえーそうなんか」くらいで学ぶだけなら、めっちゃ楽しい教科やと思うで」
生徒「ちょっとやる気が出てきました」
ぼく「ええ感じや、マジで昼ドラ的なドロドロした展開も出てくるからテレビ見てる感じで学んで行こうな。
じゃあ早速、第一話の『人間の心理』についてやるで」
---人間の心理ってなんやねん---
生徒「さっそく難題ですね」
ぼく「まあな、ワイからしたらそんなん考えてもしゃーないわ!スマホポチポチするで!ってなるけどな」
生徒「...本当に倫理学の勉強したんですか?」
ぼく「ワイとは変わって超賢い人が『人間の心理』について研究したねん、それがこれや」
・ポリス的動物
アリストテレスによる定義。社会的に他の人達と共同して生きる点からポリス(都市国家)的動物と呼んだ。人間の本質は『共同生活』という点に見出した。
・ホモ・サピエンス
植物学者のリンネによる定義。「サピエンス」は知恵を持つという意味で、人間は知恵を持ち行動するからこう呼ばれた。人間の本質は『知性』という点に見出した。
・ホモ・ファーベル
ベルグソンによる定義。動物を作ってそれを使い、自然を改変するという点からファーベル(巧みに物を作る)と呼んだ。人間の本質は『道具を使う』という点に見出した。
・ホモ・ルーデンス
歴史学者のホイジンガによる定義。「ルーデンス」は遊ぶという意味。遊びから学問や芸術が発展したと考えた。人間の本質は『遊ぶ』という点に見出した。
・ホモ・シンボリウス
哲学者カッシーラーによる定義。言語などの「シンボル(象徴)」を操り、それを介して多様に理解すると考えた。人間の本質は『象徴』という点に見出した。
生徒「なるほど...わからないので説明してください」
ぼく「よっしゃ任せとけ、まず最初に『ポリス的動物』についてや、
一番最初に書いてるだけあってこれが最初の考え方であって一番古いものやで」
生徒「ポリスって警察のことですか?」
ぼく「ちゃうねん、ポリスって社会的とか、都市国家って意味やねん。
ポリス的動物ってのは、その社会の中で共に協力して同じ人間達と生きる動物ってことや」
生徒「なんかめっちゃシンプルですね」
ぼく「そうや、実際にはアリとか、サルとかも集団行動をするという発見が研究が進んで見つけられているけれど、
この考えにたどり着いたアリストテレスってやつは何年前の人間やと思う?」
生徒「うーん....西暦900年とかですか?」
ぼく「今から約2100年以上も前や、つまり紀元前1世紀やな」
生徒「マジで!?」
ぼく「せや、しかもアリストテレスはマジもんの天才で後からめっちゃ登場するから名前だけは憶えておきや。
ちなみにアリストテレスの言う『ポリス的動物』はともに協力し合う動物とか言う意味だけではなく、
損得勘定や、善や悪の判別の中で都市国家を生きる生物とも解釈されてるで。」
生徒「次は、リンネのホモ・サピエンスですね。これは聞いたことがあります!」
ぼく「せやな、まあこれは別にええわ、単に知恵を持つから~って感じで理解してくれ。
それよりも面白いのがリンネや。」
生徒「名付け人ですか?」
ぼく「せや、こいつは1707年に生まれた『植物学者』やで。生物学もちょっとやってたけどメインは植物なんや。
せやのに人間について考えたくなって色々あったんや。あと名前と反して男やしめっちゃイケメンのハゲやで」
生徒「ふーん」
ぼく「ワイが言いたいのは、結果や思想を持ってる教科書に載ってる哲学者ってのは、哲学だけ学んでるわけやないんや。
色々な学問から倫理や哲学に飛び込んできてる。つまり学者にとっては哲学ってのはあらゆる学問に通じてるってことや。」
生徒「じゃあ数学者が哲学勉強するとか、言語学者が哲学を学ぶとかあるってことですか?」
ぼく「ピタゴラスの定理で有名なピタゴラスなんかバリバリの哲学・倫理学者やで。言語学やと日本人からの有名人多いねん。
中でも数学者から哲学を学ぶ人はかなりの数や」
生徒「次を教えてください!」
ぼく「ファーベルもルーデンスのシンボリクスも、リンネと同じ流れやと思ってくれていいで。この辺りはそんなに重要でもないし
テストに出てもそのまんま出てくるからな」
生徒「じゃあ『人間の心理』で一番大事な考え方は何なんですか?」
ぼく「今から言うフロイト(1856~1936)や。こいつはすごいで。
何がすごいって、フロイトで検索してみ。もうポケットに拳銃入れて闇の世界を渡り歩いてそうな面してるやろ?」
生徒「偉人に対して凄い失礼なこと言ってますね。否定はしませんけれど」
ぼく「この人めっちゃ悪い面構えしてるけど、精神医学者なんや。人に対してめっちゃ親切で送られて来た手紙は必ず返信してたらしいで」
生徒「信じられません...」
ぼく「生徒くんも失礼やんけ....それでこの人は何を発見したかというと人間の防衛機能についてや」
生徒「防衛機能?」
ぼく「人間は、つらくなったり、悲しい事や信じられない事があると、相手に対して暴力振ったりしてまうやろ?
子供の時のつらい記憶とかも大人になったら忘れてしまう。そんな精神変化について研究したんや。そしてその結果を
ざっぱに書くと以下の通りになるで」
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・人間の意識的な行動(手を伸ばす、何かを見る、泣く)というのは人間の自我のほんのちょっとの部分でしか無く
大半は無意識の領域に突き動かされている。
・心の奥底にエスという謎めいた場所があって、そこから「ごはんたべる!」とか「かわいい!キスする!」
みたいな欲望が自我に向かって飛んでくる。それを教育やしつけが防いでくれる仕組みになっている。
ただ、欲望が大きすぎると抑えきれないし、抑えつけすぎても精神的に悪い。
・欲望は、性的なものである。(フロイトは本能的に飛んでくる欲望の起源は全部
エッチしたい欲と食欲だけを指していたと言われている)
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生徒「なんとなく僕にもわかります」
ぼく「せやろ?今の現代人なんてもうドンピシャに当てはまるはずや、さらにフロイトは人間の防衛本能として以下のものを
発見したで、ちなみにこの発見は精神医学の基盤となってるほどすっごいものや。数学界でいうピタゴラスの定理やで。」
---無意識化の抑制機能
① 抑圧=嫌な記憶を忘れること
(例) サッカー選手になる夢を目指していたが、断念して無意識にボールから遠ざかる
② 合理化=失敗したことを、もっともらしく正当化してしまうこと
(例) 失恋時に、あんな奴と付き合わなくてよかったわ!と意識する。
③ 反動形成=実際の欲求と反対の行動をとってしまうこと
(例) 小学生が好きな子にいたずらする
④ 投射=自分の欲求や意識を、相手の中に読み取ること
(例) アイドルが自分の事を好きなんじゃないかと想像してしまうこと。
ライブなどで「目が会った!こっちを見てくれている!」というのもこれ
⑤ 退行=欲求が実現できないときに防衛的に、精神が前の発達段階に戻ること
(例) お菓子かってよーとごねる子供
⑥ 昇華=社会的に価値の低い欲求から、価値の高いものに置き換えること
(例) 毎日喧嘩してたけど、ボクシングに目覚めるのがこれ
生徒「多すぎて覚えられません」
ぼく「まあそうやろな、と思って例文を挙げてみたで、自分に心当たりあるか?
ちなみにあって当然や、人間だれしも無意識化でこの行動をとってしまうんや、安心してや」
生徒「好きな子に嫌がらせするなんてもうドンピシャです...」
ぼく「落ち込むことはないで、誰にでもあることや。ただマジで気をつけなきゃアカンのは4の投射や」
生徒「どうしてですか?」
ぼく「さっき言ったフロイトの欲求構造があるやんか、あの抑制システムが投射によって置き換えられてしまう可能性が
非常に高いねん。または、投射によって抑制しきれなくなる。
結果としてストーカーになったり、事件を起こしてしまう。だからマジで気をつけなアカン。」
生徒「でも...ライブで目が合うのとかって本当にあったりするし、好きな相手に自分に気があるのかな?って思っちゃうのは
誰にでもありますよ」
ぼく「その通りや、ここからは心理学に近い話になってくるから割愛するけれども、対策としては、相手に確認することや。
その傾向があると自覚したらまず相手に好きな人を聞け。その結果、ほかの防衛機能が働いたとしても相手に危害を与えるよりはマシや。
そして立場が違いすぎて聞けない場合は、相手に好意はまず無いねん。」
生徒「重々気を付けます」
ぼく「ちなみにワイもこの防衛機能を習うまではマジで欲望に浸っていたで」
生徒「勉強して対策出来たってことですか?」
ぼく「いや、欲望は減ってへんねん....」
生徒「ええ...」
ぼく「ただな、『自覚』出来るからこそ『合理化』出来るねん。
あー、また好きな相手にひどい事言っちゃった...ワイって最低や...って思った時にこの知識があれば、
人間の性なんやからしゃーないやん!よっしゃ気を取り直すで!ってなる」
生徒「それって反省してないんじゃ...」
ぼく「反省して抑制し過ぎるとどこかで防衛機能が崩壊して大変なことになったり、うつ病になるねん。
そういった患者は近年とても多くてニュースなんかでも殺人事件として取り上げられてるよな。
だから、反省することも大事やけれど、こうして知識を持っておくだけで最悪の事態は避けられる。これが
人間の心理について学んだ成果や!」
生徒「なんか凄く得した気がします。」
ぼく「他の学問を批判する訳ではないんやけれど、倫理学は学んですぐ使えるものが多いねん。
数学や古典や歴史やら地理やらも、もちろん大事や。でもな、現代社会においては情報が多すぎて自身を
管理しきれない人が急増してるねん。そういう意味でも、昔の人の考え方とか倫理を学んでおくことで上手く生かしてな」
ぼく「次回はいよいよ哲学をするで!いきなり古代ギリシア時代の哲学やけど、ここから何千年もかけてヒューマンドラマが始まっていくで!」
---おまけ
生徒「ちなみにこのフロイトの考えに反対した人はいなかったんですか?」
ぼく「むっちゃおるし、今でも疑問視されてるで」
生徒「やっぱり...」
ぼく「中でもフロイトの元弟子だったユングって人がおるんやけど、
人間の欲求は性的なものだけじゃねーよハゲ!って怒って弟子をやめたで」
生徒「そのユングって人の考え方を教えてください。」
ぼく「ワイもユング派なんやけれど、人間には個人的な欲望(さっき言った性的欲求)に加えて
集団的欲求ってのもあるんちゃうか。って考えられたねん。
例えば、神話って各国であるやん?でもあれって、何千年も前からあって各国で会話する手段がなかったのに
神様は違えど、どうやって同じ神様って考えにたどり着いたんやと思う?」
生徒「わかりません」
ぼく「ユングもわからんかったらしいし、ワイなんて10秒考えて諦めたわ。
でもそういった無意識化の人間としての集団心理とか集団欲求って絶対あるはずや。
そういう考えが出てるってことは無いということはありえへんねん。」
生徒「なるほど、確かに不思議な感じはしますよね。」