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135日目:結果発表②

結果発表〜!!

「テスト返すぞ」


 瞬間、教室中に走る緊張感。


 テストを受ける前とは違う、ある種の恐怖。既に終わっているが故に、もうどうすることもできないという点が恐ろしいのかもしれない。


 過去の自分を、現在の自分は甘んじて受け入れるしかないのだ。


 いや、受け止めるしかないのだ。


「今回も、各クラスの担任がまとめて返却する。解答も配布するが、質問は各担当の先生に個人的にしてくれ」

「カテキン、今回はうちのクラスはどうだったのー?」

「普通ってところだな。どのクラスも平均点が低めだったが、範囲が狭い割に難しかったか?」

「私はそう感じたけどねー。この前のテストで、点採られすぎたって思ったのかな」

「それはあるかもな。先生方にもプライドがある」

「カテキンには?」

「あるわけねぇだろ。はい、雑談終わり。出席番号順に取りに来い」

「はーい」


 やっぱり、今回は難しかったのか。前回が良すぎたっていうのもあるし、先輩と付き合えた喜びでそれどころじゃなかったというのもあるし。


 いやいや、それを言い訳にするのは良くない。学業と両立できなかったのは自分が悪い。


 自分の番が来たので、教卓まで歩いてテストの束を受け取る。


「茶戸。そこまで落ちてはいないが、少し勉強不足だったかもな」

「はい……。重々承知してます」

「なら良い」


 自分の席に戻って、点数を確認する。確かに思ったよりは悪くない、最悪の結果は回避できた。


 元々苦手な数学が、平均点を下回っている。これだけは覚悟していたけど、改めて見るとキツい。


 そうだよね。少し無理して入ったけど、練羽(ねりう)高校はレベルが高い学校なんだから、もっと勉強しないと。


「クグルちゃん、どうだったー?」

「そういうココさんは、トップ継続ですか」

「いやー、普通に転落。やっぱり難しかったねー」

「えっ、ココさんに勝てる同級生が居るんですか」

「そりゃいるでしょー。部活もバイトもしないで、塾に通ってるような生徒の方が勝ってないとおかしいんだから」

「その発言、ギリギリだと思うので気をつけてくださいね」

「はーい。ま、私にとって点数なんてどうでもいいんだけどね。少しだけ悔しいけど」

「進路が決まってる……んですか?」

「内緒ー」

「あれ」


 そこは教えてくれないのか。自分だけなんでもお見通しなのに、意外と秘密が多いのはズルい。


 前に進学はしない、的な会話をしたような気がするけど、正直うろ覚えだ。


「お前ら、静かにしろ。良いか、これで取り敢えず今年の大きなテストは終わった。でも油断はするなよ」

「はーい」

「それじゃ、解散」


 そう言って、糧近先生は教室を出ていった。次の授業はなんだったかな、確か現代文だったハズ。


 ……今日は朝のログボを渡していないし、昼も会えないって言ってたし、そうなるとバイト前の少しの時間しか会えないことになる。


 そこで、テストの点数勝負の結果がわかることになりそうだ。3年生も今日返却予定だろうし。


「あー……絶対負けてるよね……」

「負けたら罰ゲームとかあるのー?」

「独り言に返事をしないでください。……罰ゲームは無いと思うけど、勝者にはご褒美があるっぽいです」

「じゃあ、勝っても負けても美味しいイベントだね」

「そう言われてみると、確かにそうなんですけどね」


 でも、仮にも勝敗を決する戦いだから、負けないに越したことはない。


 それほど負けず嫌いというわけでもないけど、勝ち負けがあるなら勝つべきだろう。仮に負けるとしても、勝つための努力を放棄するのはなんか違う。


 いや、正直に言うと今回は全然努力が足りていなかったんだけども。


「ココー、クグー。昼休み、4人でご飯食べよ」

「良いよー」

「私も大丈夫ですよ、セイナさん」

「やったー!」


 そんなに喜んでもらえると、なんだかこっちまで嬉しくなってしまう。ココさんのおまけ、程度の存在だという自覚はあるけども。


「いやいや、そんなに自分を卑下する必要は無いと思うよ」

「心の声に返事をしないでください」

「あはー、ごめんごめん」


 すっかり慣れてしまったせいで、ツッコミがズレている気がする。心の声を聞かないでください、の方が正確だっただろうか。


―――――――――――――――――――――


「じゃあ、今回の勝負はボクの勝ちだね」

「はい……完敗です」


 放課後。バイトに向かうまでの少しの時間、先輩と一緒に玄関前のベンチに座っている。


 流石は先輩と言うか、点数も順位も全く落としていなかった。条件は同じだったハズなのに。


「君と付き合えて嬉しかったのは事実だけど、でもそれで点数を落としたらほら。先輩の威厳ってやつがなくなっちゃうじゃん?」

「……なるほど」

「えっ、ちゃんとボクも嬉しくて舞い上がって叫び散らかしてたからね!?」

「そこは疑ってませんよ」

「じゃあ、先輩の威厳の部分? 最初からないだろって指摘!?」

「落ち着いてください、被害妄想が膨らみ過ぎです」

「なんだぁ。あまりにも莎楼が暗いから、てっきり」


 やっぱり、先輩は頭が良いんだなぁ。もしくは、努力しているところを全く見せないだけか。


 先輩の日常を、知り尽くしてるかと問われたらそんなことは無いし。


「暗くもなりますよ、負けたんですから。で、勝者の景品って結局なんだったんですか?」

「ふっふっふっ、よくぞ訊いてくれたねぇ。勝者はねぇ、敗者に『3つ願いを叶えて貰える』んだよ!」

「今考えました?」

「違うよぉ、ちゃんと前から考えてたよぉ」

「そんなランプから出てきた魔人的な感じで、3つも願いを叶えるんですか」

「うん。そうだよ」


 ちょっと目がマジすぎて怖い。最近は割となんでも叶えてきた気がするだけに、尚更。


「ほら、ログボで貰ったチケットを使い切っちゃったからさぁ。新しいのが欲しかったんだよね」

「勝つ気満々だったわけですね……」


 言ってくれれば、また作って渡したのに。


 というか、そんなものが無くてもお願いなら聞くのに。全く、可愛いなぁ先輩は。


「じゃあ、楽しみにしててねぇ」

「お手柔らかにお願いします」

「残念だけど、それは約束できないかな」

「……ハードなプレイは、出血しないレベルまででお願いします」

「違うよ!?」

「違うの!?」


 てっきり、更に上を行くハードなことをご所望なのかと思った。


 噛むことは許してるから、次は首絞め……とか、そういう普段はお願いしにくいことを頼んでくるのかと。


「きっとビックリはしちゃうだろうけどさ、気長に待っててよ」

「わかりました。据わらせておきます、肝を」

「それじゃ、そろそろバイトに行こっかぁ」

「そうですね」


 先輩の誕生日に向けて、少しでも稼いでおかないと。


 残念ながら、テストの点数は全然稼げなかったんだけどね。

次回、読まなくても大丈夫だと思われる番外編。ではなく盤外編です。

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