表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/236

10日目:十日目で先輩と上手にする方法(中編)

好きな人と一緒に、美味しい食べ物を食べるのって幸せですよね。※後輩の誕生日を、5/12から5/27に変更しました。

「簡単なルールを考えたんだけど」

「なんでしょうか」

「自分がした質問に、自分も答えるのはどうかな」

「例えば、私が猫派か犬派かを訊いたら、まず最初に私は猫派です、と答えるわけですね」

「理解が早いねぇ。因みにボクは犬派だよぉ」

「そうなんですね」


 将来、どちらを飼うかで喧嘩するのは避けたい。お互い、好きな方を飼うのは駄目だろうか。しかし、先輩が犬が良いと言うなら、犬でも構わない。私は猫派だが、犬も嫌いではない。柴犬とかは好きなくらいだ。


「それじゃあ、ボクから質問するね。第一問、趣味はなんですか。ボクはコスプレ」

「お見合いみたいな質問ですね……って、コスプレイヤーだったんですか」

「いやぁ、別にそんなイベントに出たりとかはしないけどね。本当に個人的な趣味って感じだよぉ」

「私は、やはりネトゲですかね。最近は少しプレイ時間が短くなってきていますが」

「へぇ、どうして?」

「えー……と。先輩と遊ぶ方が楽しいからですかね」

「君は本当に、突然すごいことを言い出すよねぇ」


 照れ笑いのような表情を浮かべる先輩。なんだか最近、先輩相手に本音がすんなり出るようになってしまった。これは良い変化なのだろうか。先輩は喜んでいるようだし、取り敢えずは良いことにしておこう。


「それでは、私も質問しますね。第二問、お誕生日はいつですか。私は5月27日です」

「えっ、来週じゃん」

「別にアピールをしたかったわけではありませんよ?」

「そっかぁ、覚えておくね」

「ありがとうございます。……あの、先輩の誕生日は?」

「クリスマス・イブだよぉ」

「へぇ。クリスマスプレゼントと一緒にされやすいと聞きますが、実際はどうなんですか?」

「親からプレゼントなんて貰ったことないよぉ。友だちからは貰ったことあるけど」


 忘れていた。先輩に家庭の話は地雷だった。薄々、不仲なのではないかと思っていたが、やはりそうなのか。

 プレゼントを貰ったことがない、となると、不仲どころではない気もするけど。幼少期にも貰ったことがないのだろうか。


「あの、すみません」

「謝ることじゃないよぉ。君がそうやって踏み込んできてくれるの、すっごく嬉しいからさ」

「そう、ですか」


 うん、と頷き、先輩は笑顔で私を見つめる。私に気を遣っているわけではなく、本気でそう思っているのだろう。その優しさ、私に対する好意に、何か少しでも返すことができるだろうか。……できれば、過激なこと以外で。


「それじゃ、第三問いくよぉ。初めて出会った日のこと、覚えてる? ボクは覚えてるよ」

「実はその、はっきりと覚えていないんです。先輩のバイト先で、なんか先輩が気さくに話しかけてきて、なんだかんだで連絡先を交換した……みたいな感じでしたっけ」

「そっかぁ。君にとっては、あれが初対面なのか」

「それより前に会ってました?」

「覚えてないなら、それはそれで」

「いやいや、気になるじゃないですか。教えてくださいよ」


「ランチセット、お待たせしました……」

「あ、ありがとうございます」


 質問タイムの途中で、さっきの店員さんがランチセットを持ってきた。木のプレートに、珈琲とサラダと、少し大きめのアップルパイが乗っている。珈琲の湯気とアップルパイの甘い香りが、鼻腔をくすぐる。


 会話は一旦中断し、ナイフとフォークでアップルパイを切る。ザクザクっと小気味よい音が鳴る。林檎がしっとりとナイフに吸い付く。これは絶対に美味しいやつだ。


 切り終えたアップルパイにフォークを刺し、口に運ぶ。焼き立ての香ばしさが、口いっぱいに広がる。林檎は酸味をほとんど感じさせない甘さで、バターの加減がかなり好みだ。


「先輩、これすっごく美味しいですね」

「そうだねぇ、アップルパイ食べるならここって感じだねぇ」

「珈琲も美味しいです。ブラックなのに飲みやすいというか」

「いいお店だねぇ」


 先輩は満足そうに微笑み、残りのアップルパイを頬張る。なんだか私まで笑みがこぼれてしまう。好きな人と一緒に美味しいものを食べられることは、やはり幸せだ。


「食べ終わったら、次はどこに行きます?」

「やらしぃことができるところ」

「忘れてはいませんでしたか」

「それが今日のログインボーナスだからねぇ」

「あ……あの。今日、うちの親が不在でして。良ければ私の家に来ませんか……?」

「え、いいのぉ?」

「先輩さえ良ければ」

「それじゃあ、お言葉に甘えて」


 今日一番の笑顔を私に向け、先輩は残りのアップルパイとサラダをあっという間に平らげ、珈琲をゆっくりと飲み干した。


 付き合い始めたわけでもないのに、家に誘ってしまった。部屋は片付いていただろうか、玄関やリビングは整っていただろうか。いや、普通に友だちだって家に招くか。


「あの、先輩。さっきの話が途中でしたが」

「なんだっけ?」

「ほら、初対面の時の話ですよ。私の記憶が先輩と違うみたいだったので」

「だからぁ、それはボクだけ知っていればいいんだよぉ」

「なんだか釈然(しゃくぜん)としませんが……」


 二人で席を立ち、会計をするためにレジに向かう。カウンターのすぐ横だったので、先程の店員さんが慌ててやって来た。別にそんなに急がなくても良いのだが。


「1200円、です……」

「はーい」

「先輩、自分の分は自分で払いますよ」

「いいよぉ、ここはボクの奢りで」

「では、次回は私が払います」

「あはぁ。さりげなく次のデートの約束までしちゃったね」


 店員さんに、心の中で『会計中にいつまでイチャイチャしてるんだよ』と思われていないか、少し不安になった。

次回、後輩の家へお宅訪問。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング→参加しています。気が向いたらポチッとお願いします。 喫と煙はあたたかいところが好き→スピンオフのようなものです。良かったら一緒に応援お願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ