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68日目:Hokkaido Rendez-Vous(中編)

遂に北海道の地に。

「──きて、起きて」

「んっ……え?」

「おはよ、サドちゃん。着いたよ」


 慌てて左右を見ると、確かに空港に着いていた。どうやら、朝食を済ませた後に寝てしまっていたらしい。


「すみません、助手席なのに寝てしまって……」

「大丈夫。私はそういうの気にしないし」

「ありがとうございます……」

「二人は搭乗手続きがあるでしょ。ここからは別行動だね」

「荷物、降ろしますね」

「手伝うよ」


 私が眠っている間に到着していた、空港の駐車場-どうやらここは第二駐車場らしい-に降り立ち、雲間から覗く太陽の光を浴びる。


 私と先輩の荷物を降ろして、ヒアさんは運転席に戻った。どうやら、違う駐車場に移動するらしい。


「それじゃ。楽しんできて」

「あ、あの。これ、受け取ってください」

「何これ」

「ガソリン代と高速代、あと朝食のお金です」

「いらないケド」

「でも、流石にタダというわけにはいきませんよ。ガソリン代だけでも」


 言葉の途中で、ヒアさんが右手を伸ばしてそれを静止する。そして、静かに微笑んだ。


「じゃあ、そのお金で私ときーちゃんにお土産買ってきて。それでチャラ」

「は、はい……わかりました」

「ん。じゃ、良い旅を」

「ありがとうございました!」


 ヒアさんの車に向かって頭を下げ、先輩は手を振った。

 ヒアさんはいい人でもあり、格好いい人でもあるということを改めて思い知った。


「受け取ってもらえなかったねぇ」

「そうですね。先輩のセンパイなだけあります」

「えぇ? ボクだったら普通にもらうけどなぁ」

「いや、先輩は受け取らなさそう」

「買いかぶりすぎだよぉ」


 荷物を持って、空港に向けて二人で歩き出す。先輩のキャリーバッグが、コンクリートの地面の上でガラガラと景気よく音を立てる。


 荷物のせいで手が繋げないのが残念。

 北海道に到着したら、絶対に手を繋いでデートする。


 空港の入口に到着し、開いた自動ドアの向こう側に一歩を踏み出す。少しだけ涼しい。

 思っていたより人が多い。子連れの人や、スーツ姿のビジネスマンらしき人、海外の人もチラホラ見える。


「まずはチェックインをするんだっけ」

「そうですね。その後に荷物を預けて、検査を受けたら終わりみたいなもんです」

「アプリで予約したEチケットを見せるんだよねぇ」

「そうです。まぁ、そこら辺の詳細は省きましょう」


 そういうところを細かく説明する必要は無いだろう。もう次の瞬間には飛行機の座席に座っていたい。


「そういえば、最後に飛行機に乗ったのっていつ?」

「中学の修学旅行の時ですかね。先輩は去年の修学旅行が最後ですか?」

「うん。あれっ、莎楼は今年が修学旅行……?」

「そうですけど」

「そ、その間、ボクのログボはどうなるのぉ?」

「そんな先のことはいいじゃないですか。ね?」


 正直、修学旅行のことなんて全く考えていなかった。今の私は、今を生きることで精一杯だったりする。というより、とにかく北海道旅行が楽しみで楽しみで仕方がない。


 少し悩み始めた先輩と一緒に、チェックインカウンターに向かう。

 やっぱり良いな、荷物をガラガラ引くの。もし次があるとしたら、私も買おうっと。


―――――――――――――――――――――


「──きて、起きてください」

「んっ……ふぁ」

「おはようございます、先輩。新千歳空港に着きましたよ」

「あれぇ……。どうして飛行機の中はカットなのぉ……?」

「カットも何も、外が見えない真ん中の席だから寝るって言ったの先輩ですよ」


 予約した時から外が見えないのはわかっていたけれど、まさか寝るとは思わなかった。

 行きの車の中でも寝たのに、どんだけ先輩は眠たいんだろう。朝早かったし、仕方ないか。それとも、絶賛成長期なのか。これ以上、胸とか大きくなったりするのかな。


 それにしても、窓側の席の人がカーテンを閉めたのを見て、小声で「閉めるなら譲ってよぉ」と呟いたのは面白かった。そして可愛かった。

 帰りは窓側を予約しているので、喜ぶ先輩の顔が見られるだろうか。


 ほとんど全員が降りたタイミングで手荷物を持って席を立ち、飛行機を降りる。


「空港で荷物を受け取ったら、すぐに札幌に向かいますか?」

「どうしようかなぁ。荷物を置きたいし、ホテルにそのまま行こっか」

「そういえば、ホテルはどこを予約したんですか?」

「札幌オウジホテルだよぉ」

「それなら、バスで行きましょうか。都心を走るバスなら、途中でオウジホテル前に停まるようですし」


 話しながら、預けていた荷物を受け取る場所まで歩く。コンベアーから回転寿司のように流されてくる荷物の中から、自分たちのものを探して手に取る。


 あとは空港を出て、沢山あるバス停の中から目当てのところに並ぶだけだ。


 行きの空港よりも多い人の波に翻弄されつつ、無事に外に出ることができた。時刻はもうすぐ午前十時。

 出てすぐのところにあったバス停で待つことにした。あと五分ほどで来るらしい。危ない危ない。


「思ったより涼しくないねぇ、北海道」

「肌寒いのかと思っていましたが、普通に夏ですね」

「今日の最高気温は35℃だってさぁ。溶けそう」


 スマホで調べたらしい先輩が、まだそこまで強くない陽射しで既に溶けそうになっている。

 北海道は冬がとても寒いらしいけど、夏は普通に夏なのか。冬が寒い分、夏は涼しくても良さそうなものだけど。


 水着を買いに行った時に着ていた、右半分が白で左半分がグレーっぽいベージュ色のワンピースを着ている先輩が、静かにしゃがんだ。そんなに暑いのがショックだったのか。


「ホテルに荷物を置いたら、何をしましょうか」

「何もしたくなぁい」

「沢山寝たんだから、少しくらいは動きましょうよ」

「じゃあ、お散歩しよ」

「私、大通り公園に行ってみたいです」

「時計台とかも見に行こっかぁ。ベタだけど」

「ベタなのが良いんですよ。なんせ初めての北海道なんですから」


 先輩が飛行機の中で寝ちゃうのも、北海道が思ったより暑いのも、何もかもが初めてでワクワクする。

 二人でホテルに泊まるのは初めてじゃないけど。


 突き抜けるような青空を見上げて、近づいてくるバスの音に心を躍らせる。


 ここから始まる、私と先輩の北海道ランデブー。

更新遅くなってすみません。しかも、ところどころカットが入っていますね。書きにくいなぁと思ったところは素直に切ってます。そこら辺についてのご意見や感想があったら、是非お寄せください。

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