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ときどき、はれ。  作者: あぐりの
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家に着くまで、俺らの話題はずっとあの子の事だった。なぜかと言えば、俺らの周りにはいない未知の世界の子だったからだ。

俺もセイジも高校は普通科だが、ランクで言えば中の下辺りだろう。進学組と就職組が半々くらいで、進学先は私立大や短大、専門学校が多い。国公立の大学はまず無理な感じだ。

だからと言う訳ではないが、ミサみたいなタイプがほとんどだった。ミサは、よく言えばフランクで話しやすい男女問わず仲が良くなれるタイプだ。ファッションなんかも流行に敏感だし、見た目も綺麗系だからナンパに良く遭うらしい。悪く言うと、ガサツで可愛げが無くて口も悪いし暴力的だ。まぁ、周りがみんなそうだから仕方ない。

そんな訳で、あの子は俺らの周りにはいないタイプだから、セイジも俺も興味を持たずにはいれないのだった。


家に帰ると、ご飯の準備がだいたい整っていた。

「もしかして浜の方まで行って来たの?」

足元で甘えてるくーを撫でながら母が聞いた。

「あーそう。」

俺が答えると、

「くーちゃんは途中から歩かないでしょ。」

と笑いながら母が言った。浜に行く時はいつもそうなのよねー。と、母はくーのお腹を撫でていた。

「それで、大変だったんですよー!」

と、セイジが言うと、母は、

「何かあった⁈」

と驚いた。

俺らが何があったか一部始終話すと、母は笑い出した。

「くーちゃんはあの子が好きなのよね〜」

と言って、

「だって男の子だもんねー」

と、くーに話しかけた。

「犬なのに?」

俺が驚いて聞くと、セイジも、

「あ、うちの犬も女の子好きだわ。」

と言って笑った。

「でしょ?あのダックスちゃんは、若い男の子が好きだって言ってたわよ。」

母はそう言って、くーから離れた。

「えっ?母さん話したことあるの?あの子と。」

つい、食い気味で聞いてしまった。俺の様子を見て母は、

「やめてよー?あの子にちょっかいかけるの!」

と言ってからじっと俺らを見つめて、

「そういないタイプの子よね。おっとりしてるし。…あんた達とは釣り合わないわ。」

と言って母は笑った。俺らは苦笑いするしか無かった。


それからしばらく、いろいろ忙しくしていたから、くーの散歩に行く機会が無かった。まぁ、もともとほとんど行ってないのに急に行きだしたら、あの会話の後だから母に怪しまれる事は間違い無かった。だから行けなかったってのが正しいかも。

母はと言えば、あの後二回程会ったらしい。そして、

「あんたの為に、名前、聞いてきてあげたわよ!」

と、ドヤ顔で報告してきた。俺は結構嬉しかったが、表には出さない様になって努めて、

「へぇ〜」

と、興味あるかないか分からない様な返事をした。

「…隠してるつもりかも知れないけど、思いっきり、にやけてるのバレてるからね。」

母は呆れた感じで言いつつも楽しんでる様だった。俺は恥ずかしくなった。

「うっさいなー!じゃあもう、早く教えてよ。」

俺がそう開き直って言うと、

「素直でよろしい。」

と母は満足気に言った。

「犬の名前がふーちゃんで、飼い主の子がゆわちゃん」

と、言うらしい。ゆわちゃん。…うん。そんな感じする。

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