表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ときどき、はれ。  作者: あぐりの
2/4

俺の家は、大学から30分ほど電車で南に下った駅から、歩いて15分くらいの場所にある。近くに人工浜が出来た為、夏になると特急が止まったりして、一気に賑やかになる。今はまだ春先だから、浜に散歩に来る人くらいしかいなくて落ち着いていた。

「本当にジュンちは良い場所にあるよなー」

セイジはうちに来る時、毎回の様に言う。

「あんな良い浜に徒歩圏内だし、くーちゃんの散歩にめっちゃくちゃ良いじゃん。」

「まぁ、たまには散歩に行ってるみたいだけど、だいたいは家の周りだよ。」

「えー、散歩まだだったら、行ってみようぜ、浜。」

セイジの提案に、俺は、面倒くさっ!と言った。が、聞き入れられる事は無かった。


家に着くと、母さんが散歩に丁度出ようとした時だった。

「あらーセイジくん!」

可愛い好きの母さんは、見た目可愛くて人懐っこいセイジを気に入っていた。

「今から散歩ですか?俺に行かせて下さい!」

セイジはラッキー!とばかりに言った。

「あら、そう?じゃあご飯の準備をしてようかしら。食べてくでしょ?」

母さんもその辺りは良くわきまえていた。その上、

「カレイの煮付けとかどう?」

と、セイジが肉より魚派と言うのもしっかり把握していた。

「めちゃくちゃ嬉しい‼︎」

セイジが喜んで言うと、

「本当にセイジくんは上手いわね。」

と母さんは皮肉りながらも楽しそうに言った。ただの可愛いって男じゃない事も、しっかり把握しているようだ。


そんな感じで、俺らはくーの散歩に行く事になった。俺は近所にしようと言ったが、セイジが断固として、浜に行く。と言い張り、仕方なく浜まで向かうことになった。

くーはと言うと、セイジを警戒しているようだった。まだ2回目くらいだから、まぁそうだよな。セイジは実家で犬を飼っているだけあって、無理に構ったりせず一定の距離を保って接していた。

「俺らの足だと直ぐに着くけど、くーちゃんは大変だなぁ」

短くちょこちょこ動くくーを見て、セイジはしみじみ言った。まだ一歳前のくーは、ちゃんと言う事聞いて歩く様になってきたばかりで、まだまだあちこちに歩きたがる。だから余計に時間がかかるのだった。

浜へ向かう橋を渡っていると、

「あー、やっぱり結構犬を散歩させてる人いるじゃん。」

とセイジが言った。橋から浜が見渡せて、確かに犬の散歩をしている人が結構いるのが見て取れた。


浜は、橋を挟んで南側が海水浴場になっていて、北側は芝生広場が3個ほどあった。犬の散歩をしている人が多く見えたのは、海水浴場の方だった。

俺らは、人の少なそうな北側に行く事にした。橋に1番近い広場は、芝とクローバーが敷かれていて、ミニイベントが開かれたりするステージもあった。真ん中の広場は、所々丘みたいになっている。1番奥は、散歩道がある広場だった。

橋を渡っている途中から疲れ始めたくーを抱いていた俺は、クローバーが敷かれてある広場にくーを降ろした。

「お、くーちゃん元気取り戻したじゃん?」

セイジは、リードをぐんぐん引っ張るくーを見て、笑って言った。さっきまで、もう歩きたくない〜って感じでいたくせに、広場に来た途端、嘘の様に元気になった。

「やっぱり広い所が好きなんだよ!」

セイジはくーと一緒にはしゃぎ出した。

「ジュン、人全然いないから、くーちゃん離してボール投げしようよー!」

母さんには、多分離しても大丈夫。と言われていたが、慣れてない俺はどうしようか悩んだ。周りを見渡したが、真ん中の広場に人がチラッと見えるだけで人が居なかったし、何よりくーがボールを見てやる気満々になってしまい、リードを繋いだままだと、俺も走り回る羽目になるのが嫌で、

「分かったよ。」

と言って、くーのリードを離してやった。

俺の心配をよそに、くーは意外にも賢くボールを取りに行っては、ちゃんと咥えて戻って来た。

いつまでやるんだ?と、20歳の俺らの肩が疲れを見せ始めた頃だった。

くーがボールを咥えて戻って来るかと思ったら、途中でボールを離し、横にワンワン‼︎と言って走り出した。

俺らは焦ってくーを追いかけた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ