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ときどき、はれ。  作者: あぐりの
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冬の終わりを感じ始めたある日の事だった。家に帰ると、新しい家族がふえていた。チワワと言う種類の犬だ。母親は、俺に、おかえり!と言うなり、

「可愛いでしょ‼︎くーちゃんよ〜‼︎」

と言って来た。

当時流行っていたCMそのままを母はパクり、うちにもチワワのくーちゃんが家族として加わる事になったのだった。

大学2年だった俺は、バイトや講義、遊びで忙しくしていたので、

「俺は世話出来ないからね。」

と初めに宣言しておく事にした。変に押し付けられたらたまらない。

「あんたに期待なんかしてないわよ!」

と母は言い、

「でも、可愛いでしょ〜!」

と無理矢理抱っこさせて来た。俺は、

「わ、わっ!」

と戸惑いながらも、落とさないように気を付けて抱いた。意外と大人しくしていて、ジッとつぶらな大きな瞳で俺を見つめて来た。うーん、まぁ、可愛くないわけじゃないけどね。

「可愛いと世話は別の話ね。」

俺はそう言って犬を下ろし、部屋へ行った。この犬が、俺の日常を変えて行く事になるとは、この時は全く想像していなかった。


俺は実家から電車で30分くらいの所にある大学に通っていた。駅直結の公園を突き抜けると校舎があり、都会の割には緑に囲まれた場所だった。

「ジュン、どうなの?くーちゃんは!」

大学へ続く遊歩道のベンチで友達と話していると、急に後ろから話しかけられた。同じ専攻でバイト仲間のセイジだった。セイジは犬好きらしく、小さい頃から実家で犬を飼っていると言っていた。今は実家から離れて暮らしているから寂しいのか、うちの犬をやたら気にしてくれていた。

「え?どうって、普通だよ。」

俺が素っ気なく答えると、

「何⁈くーちゃんって‼︎」

と、俺の隣で座っていたミサが話に入って来た。

「ジュン、まさか彼女出来たの⁈」

俺とセイジは面を食らって、笑い出した。

「ミサ、違うし!犬の話だから!」

セイジは笑いながらミサに話して、

「こいつに彼女出来るわけないじゃん!」

と失礼な事を言って笑った。

「なんだー!犬かぁ〜びっくりさせないでよー」

ミサがそう言うと、セイジがすかさず、

「何?ミサってもしかして、ジュン好きなの?」

と聞くと、

「は?マジ無いし。」

とキレ気味で答えて、セイジの脛に蹴りを入れた。セイジが痛さで声が出ずに悶絶しているのを横目に、

「チワワでくーちゃんなんて、ベタすぎじゃん。」

とミサは俺に笑って言った。だよな。と俺も笑った。


「でもさ、ジュンは何で彼女いないの?」

ミサが聞いて来た。

「だって、イケメンじゃ無いけど、顔はまぁまぁ問題無いじゃん。性格だって、セイジに比べたら何の問題も無いし。」

褒められているのかいないのか、多分ミサ的には良い事言ってると思っているんだろうと言う感じの顔で言った。

セイジはディスられただけだったので怒っていたが、

「ジュンは、高校の時に流れで付き合って後悔したらしいよ。」

と、俺のことを解説し始めた。

「あー、ありがち。」

ミサは持っていたコーヒーを飲んで空を見上げて言った。

「でもな、やる事はしっかりやってから別れたってよ。」

セイジはニヤっと笑ってミサに言った。

「うわ、サイテーじゃん。」

ミサは軽蔑した目で俺を見て来た。

「あのな、それはセイジの話だっつーの。」

俺は呆れ顔で言った。セイジは笑って誤魔化している。

「なんだー‼︎びっくりした!もう本当セイジってサイテーだわ。」

ミサはセイジにそう言い放つと、

「まーいーや。今度飲みながら話そ。」

と言って、バイト行って来る。と帰って行った。


ミサが帰ると、

「ジュン、今日バイトないでしょ?くーちゃんに会わせてよ。」

とセイジが言って来た。癒されたいんだよ〜と言っていたが、

「何?また金欠な訳?」

と俺はしっかり分かっていた。

「だってジュンの母ちゃん、困ったらいつでも頼りなさいって言ってくれた!」

セイジはそう言って、お願いします!と手を合わせた。

セイジは大学に入ってすぐに声を掛けて来てくれて、誰とでもすぐに仲良くなっていた。ベビーフェイスで人懐っこいので、昔からかなりモテているようだ。出会って2年近くになるけど、彼女が途切れた記憶が無い。ミサの言葉通り、女に関してはサイテーな部類に間違い無く入る男だった。

友達としては、話も楽しいし良い奴だと思っている。セイジの部屋に泊まらせてもらう事も良くあるし、うちに泊まって行く事もあった。わざわざ俺の家近くにバイト先を選んだのも、うちのご飯目当てと言っても過言ではない。と、セイジ自身が言っていて、そんな感じも、まあ、別に嫌いじゃない。

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