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第1部エピローグ:異世界に咲くは百合の花

 一面に広がる万能薬……月光草の畑を見渡しながら、フウカは遠い日を思い出していた。

 

 揺れるカーテン。

 自分の前に立つ、紅茶色の髪の乙女。

 どこまでも明るく、前向きで強運な彼女がうねる濁流のなかで手を差し伸べてくれた乙女の姿を。


 ……それはもう、何年も前の物語で。




「フウカちゃん!」





 聞き慣れた、懐かしい声がする。

 フウカは、ゆっくりと振り返る。


 遠い日の記憶よりも、大人びて成熟したミヤコの姿。

 紅茶色の髪を結い上げて、馬車のうえから手を振っている。


『にゃふぅ〜、今日も働いたにゃあ〜』


 その膝には、四大精霊が一角、水を司る大精霊ウンディーネ……の猫型スタイル。

 ウミが、のんびりと尻尾を揺らしている。


 柔らかい風が、フウカの腰まで伸びた麗しい黒髪を揺らす。


「おかえりなさい、ミヤコ」

「ただいまっ、フウカちゃん! 今日もばっちり儲けたよ!」


 紆余曲折あったすえ、ミヤコは王国を股にかける行商人として名を馳せている。

 その女商人に扱えない商品はなく、その女商人に突破できない商圏はない。

 ……とまで言わしめる、敏腕商人である。


 内乱や差別などを抱えた地域であっても、ミヤコが商売にやってくるだけで周囲の誰もが笑顔になるような、ーーそんなミヤコの明るさを『太陽の女神』なんて表現する人も多いとか、多くないとか。


「いやあ、やっぱりシャンリィさんのお客さんは手強いねっ!」


 その師匠は大陸からやってきて、何年経っても少女のような風貌のままの謎の行商人ーーシャンリィである。


 シャンリィは、いまはパートナーとともに、戦火をくぐり抜けた故郷を駆け回っている。そのために、ノーヒン王国の客層を弟子に預けているわけだ。


「そうは言っても、ミヤコのことだから仲良くやっているんですわよね?」

「まあ、ぼちぼちね」


 屈託のない、何年経っても変わらぬ笑顔。

 フウカは、その笑顔に自然に頬が緩むのを感じた。


「……おかえり、ミヤコ」

「ただいま、フウカちゃん」


 握る手と手。

 万能薬である幻の月光草の栽培に成功し、いまや敏腕の治療師――『月光の聖女』と呼ばれるフウカこそ、ミヤコの帰る場所である。


 王都のはずれにあるふたりが拠点にしている屋敷は、飼い猫……もとい飼い水精霊ウミをはじめ、さまざまな事情(・・・・・・・)で【大精霊の館】などと呼ばれているが、それは別のお話。



「そうだ、フウカちゃん。お土産があるんだ」

「お土産?」

「はい、これ」

「……ああ。わたくしこの花、好きなんですのよ」


 差し出されたのは、一輪の白百合。

 この世界ではすこし珍しい、しかし、数年後にはフウカの手によって一面に咲き誇り、ミヤコの手によって世界中に届けられるーー清らかな純白の花である。

 

 

そういったわけで第1部完結、エピローグでございます!!!!

この先は、ゆるふわスローライフの短編連作を更新していく形になります!!!!!

(もしよかったらブクマはそのままでお願いします!!!!)


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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