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第四十七話 ココの見る周囲

 私はココ!

 今日はミューと楽しくピクニックに来てるよ。

 久しぶりに街の外に出たけど、太陽の光と草木の匂いが心地いいね。

 あと暑苦しいフードを被らなくていいのもいい。

 私は寒いのは割と平気だけど、暑いのは好きじゃない。

 我慢できないわけではないんだけど夏場は少しボーっとしちゃう感じ。

 周りのヒト達に種族の事で色々言われるよりかはマシだと思うから我慢するけどね。

 でも、私がフードを被らないでいいということはミューも被らないでいいってことで、目の前で可愛らしい耳がみゅんみょんと上下に揺れている。

 私がその耳の動きを目で追っていると、その持ち主がくるりと振り返って笑顔で言った。


「いい天気だねー。こんな日は外でお昼寝したら気持ちよさそうだね」

「それじゃあ寝る? 私がおんぶしてあげるよ?」

「それは遠慮しとくよ。ココに悪いし、折角の初クエストだしね」


 苦笑しながら言うミューに、私は大人しく引き下がることにした。

 ミューがそう言うなら残念だけどおんぶするのは諦めることにしよう。

 別にミューくらいの体重だったら10人背負っても問題ないんだけどね。

 さっき冒険者ギルドで持ち上げた人に比べたらどれだけ楽しいだろうか。

 きっといい匂いがして柔らかくてふわふわしたんだろうなー……。

 帰り道はおんぶしてもいいかな? 後でまた聞いてみよう。


「あんた達は少しは警戒しなさいよ。まだ森の外とはいえ、結界がない外ではどこから魔物や野生動物が襲ってくるかわからないんだからね」


 私はその声に顔をしかめる。

 私たちの楽しいピクニック中にそんなことを言ってくる赤い髪のヒトの姿。

 名前はハルとか言ったかな?

 別に私とミューの二人でもいいんだけど、今回はこのヒトと他2人がついてきていたのだった。

 正直、邪魔だなあとか、どっか行ってくれないかなあと思っているんだけど、この調子じゃあずっと着いて来るんだろうな。


 話によればこの3人とミューは小さい時からの友達らしい。

 でも、私がミューの村に行った時にはこの3人は村から出ていてミューの傍にいなかったんだから、今のミューの1番の友達は私で間違いないはずだ。

 だというのに、ミューは今でもこの3人と楽しそうにお話ししているのがとても不思議。


「ごめんね。ところでこの辺にはどんな魔物がいるの?」

「そうねえ。まあ平原にはそこまで大きなやつはいないけど――」


 そんな風にお話ししているミューとハルとかいうヒト。

 きっとミューが優しいからかな。

 しかもあんなに可愛いのだ。

 つい構いたくなるのも仕方ないと思う。

 でも一回は置いて行ったんだから少しは遠慮してほしいと思う。

 だって今は私が一番なのだ。

 もうちょっと距離を空けてほしいし、話す回数も1日1回くらいでいいと思う。

 なのに、今日はもう20回は会話しているし、今も近い。

 これは非常に問題だと思う。


 そう思ってハルとミューを見ていると、ハルの方がびくりと身を震わせてこちらをチラリ。

 目が合ったかと思うと、眉をしかめてミューと会話がとまる。

 うんうん、それでいいんだよ。

 私が満足してそう思っていると、後ろからちょんちょんと肩を叩かれる。

 振り向くとそこには背の高い男のヒトが二人。

 体と目が細い方が私に小さい声で話しかけてきた。


「あのさ、折角仲間になったんだから仲良くしない?」


 えぅ? この言い方すると私が仲良くしてないことを気にしているのかな?

 でも、考えてみるとこの人たちはいつ私の仲間になったんだろう?

 ミューの一応前の友達ではあったけど、私とは仲間になった記憶がない。

 むしろ最初は突っかかってきたくらいだし。

 ところで、この人の名前はなんて言ってたっけな。

 疑問に思ったことはすぐ聞くようにミューに言われていたので、聞くことにした。


「あなたの名前なんだっけ?」

「あー、うん。……おいらはボーイって言うんだ。こっちはジェロ。よろしくね」

「ふーん」

「……あははは」


 なぜかがっくりと肩を落とす細い方と、その肩をポンと叩く太い方。

 よくわからないけど変なヒトだと思った。

 ミューが一緒に行くといったから許しているけど、いざというときは置いていこう。


「ここから森に入るんだね」


 徐々に目の前に迫ってきた森にミューがぽつりとつぶやく。

 ちょっと心配そうにしているようだけど、森に入ったことがないのかな?

 エルフの人は森にいることが多いけど、ミューの村の近くにはあんまり深い森がなかった気がする。

 私は楽団にいた時にご飯貰えなかった時とか、よく夜の内に森に行ってご飯を捕まえたりしていたから慣れっこだけどね。


「そうそう。ちなみに目標のチェリープラネットの花は木の上の方に咲くんだけど、あんまり頑丈な木じゃないから、枝や幹を傷つけないように気をつけてね」


 そう言いながらハルは全員にそのなんとかとかいう木の絵を見せた。

 これなら見たことがあるし、匂いも特徴的だったからすぐ見つけられそう。

 ミューは絵を見ながら困ったような顔をする。


「木の上かー。僕あんまり木登り得意じゃないんだけどなあ」

「えぅ? じゃあ私がとってくるから待っててよ」

「ここまできてそれも寂しいんだけど」

「じゃあミューは俺と一緒に来るといい。見つけたら肩に乗せる。それなら届く」

「いいの、ジェロ? じゃあそうしようかな」


 肩車!? なんてうらやましいことを……。


「ミュー! 私が肩車するよ!」

「いや、ココもそんなに大きくないから肩車してもらっても」

「乗った状態で私がジャンプすればいいって!」

「いや、でも」


 私じゃ何が不足なんだろう。乗り心地?

 確かに大きい方が安定性は高そうだけど。

 そんな押し問答をしていると、ハルが呆れたような顔で私たちの間に割り込んでくる。


「はいはい。ここはジェロに任せてもいいでしょ。あんたが乗せて飛んだらどっかで落っことしそうで怖いわ」

「落としたりしないもん!」

「まあいいけどさ。それじゃああんたらがちんたらやってる間に私は大量にとってこようかなー。ねえ、ミューもたくさん持ってきて大量に稼げる方がいいでしょ?」


 ハルがミューに目配せしながら言うと、ミューはきょとんとした表情になる。


「?? 多いに越したことはないんじゃない?」


 その言葉に私はハッとした。

 言われてみればこれはミューとのチームの初任務。

 二人で楽しくやってもいいけど、このヒト達三人に負けるのはなんとなく嫌だ。

 ハルが挑みかかるようにして続ける。


「ココ、折角だし私と勝負でもしてみる?」

「わかった。絶対に負けないから! そういうことだからミューは危なくないところで待っててね。絶対に勝ってくるから」

「えっ? うん、がんばってね」


 よーし、絶対勝つぞ。

 ミューは何かに気づいたような表情になってハルに親指を立てているけど、私が勝って帰ってくれば次からは私だけで十分ってわかってくれるよね!

 行くぞ!とその前に。

 私は、背の高いヒト二人に近づいてちょいちょいと手招きしておく。

 この二人は頭の位置が高いから話しかけるのも一苦労だね。

 二人は何だろうという顔をしながらかがむ。


「なになに、おいら達になんか相談?」

「ミューをちゃんと守っておいてね」

「そりゃあもちろんわかって――」

「ミューが少しでも怪我したら、あなた達埋めるから」

「はい?」

「埋めるから」

「……ハイ」


 納得してくれたようで、二人とも素直に頷いてくれた。

 この前のトバとかいう所でミューが危ない目に遭ったようなことは二度とごめんだからね。

 この二人もあんまり強くはないけど、すくなくともゴブリンよりは頑丈そうだし、友達を自称するなら、いざという時は命を張って庇うくらいはしてくれるだろう。

 私は満足すると、ハルの方を振り返る。

 しかし、そこにはあるはずの姿がない。


「あれ? ハルは?」

「ココが二人に話しかけている間に行っちゃったよ。小声で勝負開始だって言ってた」

「えぅ!? ずるいー!」


 こういうのってよーいどんで行くんじゃないの!?

 やっぱりあの卑怯さはミューに悪いえいきょーを与えそうだからしっかりと倒さないとね!

 私は手足をエクストラで変身させると一気に森の中に駆けていくのだった。

 ちなみに私が森の中に入っていく直前後ろの方で話し声が聞こえた。


「じゃあ僕らも森に行こうか」

「なあミュー。やっぱりおいらたちここら辺でのんびりピクニックでもしない?」

「安全、第一」

「えー。折角ここまで来たし、僕のことを気遣ってくれるのは嬉しいけど、少しくらい――」

「おいらたちの安全が危ないんだって!」

「きっと、埋めるというのは、埋葬」

「なんの話?」


 ちゃんと言いつけ通り守ってくれるようでなによりだね!

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