4ページ目 初心者(アマチュア)と熟練者(エキスパート)
午後十時半ごろ
目が疲れたし目薬取りに行くか。
ガタン
イッタイアシガァ!
止血するのに10分ぐらいかかった
足を地に付け歩みを進める。
大きく踏み込み強く地面を蹴った瞬間、風を切る様に加速した。
予想より速く走れたことに内心、驚きながら抜いた刀を強く握る。
その勢いを保持したまま切りかかった。
もちろん初心者が適当に振り回ただけだと、簡単にいなされる。
そしていなしナイフを叩き込もうとしたのだが、その日本刀が予想より遥かに上回る鋭さを保有していたため、反射的に防御した。
刃と刃が接触し独特な金属音を響かせると、殺人鬼は大きく吹き飛ばされていた。
これを見て俺って実は才能あるかも、なんて勇は考える用な人間ではなかった。
当然、あの身体能力の高さはなんだとか、日本刀を持ったことないのにまるで長年使ってきた用な感触はなんだなど、言いたいことは有るが戦闘中に相談などはさしてくれないだろう。
何故なら現実は勝った者が正義であり、そのためならどんな手段さえ正当化される、相手が必殺技撃ちますよと言う雰囲気をかもし出しているのにわざわざ待つだろうか?自分は全力で止めるだろう。
それは相手だって同じことだ。
戦える、今はそれだけで十分だ。
殺人鬼も姿勢を低くし試走体制をしそのまま突っ込んで来た。
空気抵抗を感じさせない滑らかさ、そして速さを持ってして、命を刈り取ろうとナイフを切り掛かってくる。
その攻撃を、全てを取り込むような漆黒の刃を持った短刀で受け流した。
滑らかに刃をすべらせながら右手にある日本刀に切りかかるが、回避される。
間合いを見計らいながら考える。
素早さは多分こっちが上だが、相手の方が経験を詰み力を効率よく使用しているし、技術も上。
打開作はないかと模索していると、ナイフが薄く光を灯してるのがわかった。
瞬間、殺人鬼が眼前にまで接近していた。
勇は反射的に短刀で防ごうとするが、刃同士が接触するとガクンと衝撃が伝わった。
その衝撃の威力故に短刀をずらされ、すれ違いざまに腹部に一閃。
右の腹に3cmほどの肉を横にたたっ切った。
「あっがッ」
激痛が襲い、肺の酸素吐き出し、振り向きながら後退………。
しなかった。
激痛に顔を歪ませ、涙を流しながら一歩前に踏み出した。
一般人なら痛みに悶え、うずくまるのだが。
(こんなの、9年間痛み耐えて来たんだ!今更こんな痛みがなんだってんだ!)
勇を奮い立たせたのは、皮肉にも虐められた経験だった。
一歩前に踏み出した事に気が付き、相手が驚き思考が乱れた、その刹那。
「セィ!」
と、声を出しなが回し蹴りが炸裂した。
もちろん優は武道経験はほぼなく、単純に振り向きざま蹴っただけだが。
しかしバカンと暴力的な騒音を響かせながら相手を、吹き飛ばしていた。
二回ほとバウンドし壁に叩き込つけたのだが、常人なら軽く死ねる程度の攻撃を与えるても、平然と立ち尽くしている。
一方優は。
「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」
荒い呼吸を繰り返していた。
腹部に手を当てれば真っ赤に染まり、それを直視したせいで言うまでもなく酸っぱいものが込み上げてくる。
袖で涙を拭いながら、構え直す。
此方は負傷、相手はほぼ無傷、どうやったらこの状況を打破出来るだろうか?
『魔法を使って!』
そう考えていると、頭に声が聞こえてくる。
「は?魔法?」
距離が離れたことにより会話が出来る暇ができたので、打開策を相談していたらいきなり頭が痛くなってきた。
『そう魔法』
「おいおい…ここは幻想世界じゃないんだぞ」
『いや、僕と契約しているから使えるはずいや、使えなくちゃおかしいよ』
本当かよ。
しかしどうすれば当てられるか。どんな強力な攻撃も当たらなくちゃ意味がない。
そしてミスった時、また相手が当たってくれるとは限らない。
そう思いながら一つの案を思い付く。
『おっいい案じゃないか、それならワンチャンあるんじゃない』
と頭の声(仮名)の賛同を得て覚悟を決める。
「スゥ…ハァ………」
深呼吸をし、心を落ち着かせると、軽くステップを踏みながら短刀を真上に思いっきり投げた。
その後、左側の壁に寄りながら試走体制の準備をした。
相手も殺る気になったのだろう、二刃のナイフを構え直した。
そして。
ダンと体を空気に叩きつける様に加速した。
切り掛かってくる、そう相手は予測したが。
しかし勇は左手にコンクリート製の下水道の蓋を握っていた。
歩道の端には必ずといって言い程、下水道がある。
下水道とは、雨水や汚水などを集めるために製作された物である。
その身近な物をまるで紙のように持ち上げそして、ぶん投げた。
その下水道の蓋を相手はナイフで殴って防いでしまった。
バラバラになったコンクリートは、砂埃となり僅かの時間、視界を塞いだ。
視界が戻ると目の前にいた彼女の姿が消えていた。
(後ろ、か?)
そう思い振り向きながらナイフを振るう。
が…そこに彼女はいなかった。
『さぁ!魔力を刀に纏わせて』
了解!と心で言いながら投げた短刀を空中で受けとる。
『集中して!体の中に流れる僕の力を感じて』
「あぁ!」
魔力とか何とかよくわからないが不思議と悪い気分じゃない。
精神集中をすると漆黒なオーラを感じる。
それはまがまがしく、穏やかじゃない雰囲気を感じたが、何故だろう?心が落ち着く。
『それを纏って後は感で分かるさ』
感覚で振るうか、なんとなくわかった。
目を見開くと日本刀が薄く漆黒の物に纏っているのを。
そのまま上へ降りかぶりながら落ちていった。
どこにいったそう思い辺りを見渡たすが居ない。
けれど気配があるため遠くに行っていないはずだ。
けど何処へ?
考えるそして思い付く。
ハッとした顔で顔を上げる。
「上!?」
「遅い!」
日本刀から肉を断つ感触がつたわり、空気中に鮮血が舞った。
大きく相手が吹き飛び、赤い水溜まりを作った。
「ハァ……」
息を出し緊張がなくなったのか、コンクリートの上に座りこむ。
その際地面に尻部をぶつけ、ムギュと可愛らしい声を上げてしまう。
反射的に手で口を塞ぎながら視線を落とした。
「つかれたぁ」
『お疲れ様』
周りを見てみると視界を塞いでいた物が消え、月明かりが地面を照らしている。
どうしようこの姿、そう思い腹部を抑えながら歩いていった。
『さらっとジュースは買っていくんだね』
「まぁな」
◇
「ひどく殺られましたねぇ」
ここは教会。
山の中にある小さな寂れた教会である。
そしてそこにはに三人の人物がいた。
その中には優を襲った殺人鬼もいた。
「うるさい」
少し拗ねたような声を出しながら、治療をされる様はここの面子には見慣れた者だった。
「あれが見つかったようですね」
静かな質感を持つ声が響き二人は口を閉じた。
「わかっていると思いますが…あれをあの組織に渡してはいけない」
そう言ったあと殺人鬼のほうを見つめ。
「アリス」
「あっハイ」
「貴方が護衛につきなさい。」
「え?」
波乱はまだまだ序章だった。