時限式椅子取りゲーム
私達は温かな暗がりの中、目を逸らす事さえ出来ずにただ互いの姿だけを見ていた。
私とよく似た男の子。男の子によく似た私。私達には、互いに、その他に見れるものはなかった。私たちだけがこの場所に存在している。
ただ、一定のリズムが流れ続け、時折声がここまで潜ってくる。それは私と彼の至福だった。
最近、その音がどんどん大きくなっていっている。私たちは本能的に感じた。
ここから出る瞬間が近づいているのだと、つまり、私と彼の"別れ"がすぐそこまで迫っているのだと。
私たちは別れの時が訪れるのを恐れながら、同時に期待していた。
一方がここを去れば、もう一方はなかったことになるのだ。
片割れだけが、ここを出て、母に会うことができる。
私と彼は睨みあう、どちらが外に出られるのか奪いあう。
時限式の椅子取りゲーム。
今回はちょっと静かなお話を投稿してみました。
前回に引き続き、昔書いた作品です。(いろいろ付け足してはいます。)
読んでいただき、ありがとうございました。