収束
敵全員殺しちゃっていいの?という質問に、仕様ですと答えましたが、あれは嘘だ!!残念だったな、トリックだよ。
……すみません、『展開上わざと(キリッ)』と言っておきながら、やっぱりこっちの方がいいかなと思って変更しました。
「もう!何で家ごと燃やしちゃうのさ!!」
「む……ちょっとぐらいいいじゃろう。それに、ちゃんと消火もしたではないか」
「消火ってこの水浸しのこと!?水の勢いが強過ぎて火の点いてなかった隣の家まで壊しちゃったこれを消火って言うの!?」
――俺が黒尽くめを小脇に抱えて勇者のところまで飛んで戻ると、なんかレフィと勇者が漫才をしていた。
「……何やってんだ、お前ら」
「あっ、おにーさん!!ちょっと見てよ、これ!!」
勇者が指差した方向へと視線を向けると、そこにあるのは焼け焦げた家の残骸と、水害でもあったのかと聞きたくなるような惨状の崩れた家。
「もう、レフィったらアンデッドを倒すのに火魔法を使うのはいいけど、後ろの家ごと燃やしちゃうんだもん!!」
そう、レフィにジト目を送りながら、腕を組んで怒る勇者。さっきは俺にからかわれて怒っていたはずなのだが、そっちの怒りはもう解けたのだろうか。
「いや、亡者どもを葬るためにはあれぐらいの火力が必要だっただけじゃ。それ故、あれは致し方の無い被害であると言える」
「さっき思いっきり『あっ……』って言っていたじゃないか!!」
その言葉にサッと顔を背けるレフィ。
あぁ、うん、まあ……大体察した。
「ところでお主、その小脇に抱えておる其奴が、言っておった痴れ者か?」
その二人の様子に苦笑していると、勇者の糾弾を逃れるためか、レフィが盛大に話を誤魔化す。
「そうそう、コイツが俺らの観光邪魔したヤツ」
そう言って俺は、小脇の黒尽くめ野郎をドサッと地面に放った。結構乱暴にしても、完全に意識を失っているため目を覚ますことはない。
まあ、起きたとしても、文字通り身体に食い込んでいる鎖のせいで身動きは取れないだろう。
直前の魔物ゾンビどもとの戦闘でテンション上がってしまい、思わずコイツも大剣で串刺しにしてしまったのだが、ふと「あれ?コイツ、殺しちゃマズくね……?」と我に返り、慌てて虚空の裂け目から上級ポーションを取り出し、こんなクソに使うのは勿体ないが、もうあの世行き数秒前!といった様子の瀕死だったコイツに瓶二本分を振りかけてやったのだ。
ぶっちゃけ、死んだら死んだでどうでもよかったのだが、上級ポーションの効果のおかげでどうにか一命を取り止めたらしく、こうしてまだ息の根がある。
というかホントに、完全にどてっぱらに穴が開いていたのにもかかわらず、肉とか骨とか内臓とかがメキメキネチョネチョグチュグチュ言いながら、まるでビデオの逆再生のように回復していく様子はもう、言葉に言い表せない気持ち悪さがあったな。思わず鳥肌が立ったね。
コイツの身体ともはや一体化するようにして巻かれている鎖は、その回復の過程でアイテムボックスから取り出したヤツを巻き付けておいたものだ。取ろうと思ったら、腹の肉をもう一度掻っ捌かないと無理なので、まず逃げることは不可能だろう。
恐らくこのまま一生、鎖が身体の一部となるだろうが、まあ、知らん。生きていただけマシだと思え。
「あー……あれじゃな。なかなかに奇矯なナリの男じゃな」
男の身体の肉に食い込んでいる鎖を見てレフィさんがそう溢すが、レフィさん、それやったの僕です。
「……この男が、元凶なの?」
そう、勇者がスッと眼を細めて言う。
「後何人かいたけどな。一応コイツも死霊術?らしいのを使ってたから、まず間違いないと思うぞ。他のヤツらは殺しちゃったけど」
「……そっか。じゃあ、アンデッドが急に活動停止したのは、おにーさんのおかげだったんだね」
「お、ゾンビどもは止まったか」
聞くところによると、どうやら街を襲っていたゾンビ達は、俺が黒尽くめどもを潰した頃、急に動かなくなってただの死体に戻ったらしい。
そうか、来る前にそれっぽい効果のでっかい怪しい魔導具をぶっ壊して来たのだが、あれで当たりだったようだ。
――と、そうして彼女らと話しているとその時、大通りの方から何やらガヤガヤと喧噪が近付いて来る。
「……これは、いったい……」
見ると、どうやら街の衛兵達や冒険者達が鎮圧に乗り出して来たらしい。武器を構え、周囲を油断なく警戒している。
ただ、何となくどこか困惑しているような様子だ。辺りを見渡しながら怪訝そうな表情を浮かべている。
あれか。勇んで出て来てみれば、倒すはずのゾンビがいなくなってて、どうすればいいのか困り中って感じか。
そして、その集団の先頭に立って同じく武器を握っているのが――この街の領主のおっさんだった。
「おぉ、おっさんか。……あれ、アンタ、領主なんだろ?こんなところまでホイホイ出て来ちまっていいのか?」
「……貴殿か。街が襲われているのに、のんびりと館で寛いでいるという訳にもいかんだろう。というか、何故貴殿がここにいる?」
「いや、俺は別にネルがここにいるから来ただけだ。あと、はい、これ。首謀者」
そう言って俺は、黒尽くめ野郎をおっさんの方に蹴って転がす。
「……この者は?」
「なんか街の外で姿隠しながらコソコソしてたヤツ。他にもいたけど、それ以外は殺しちまった。後で確認でも何でもしてくれ」
「……そうか、ならば後で確認に人を向かわせよう。この者はこちらで貰っていいんだな?」
「おう。俺が捕まえてても意味無いし。でも、後で事の次第ぐらいは聞かせてくれるんだよな?」
自身で直接尋問してやりたいところだが、俺、尋問のやり方とか知らないし。あんまりグロいの得意じゃないし。
というか、もう面倒臭い。俺はただ観光がしたいだけなのだ。今回のはただ巻き込まれただけっぽいしな。
ならば、そういうのにも精通していそうなおっさんにこのまま渡してしまっていいだろう。流石に俺が捕まえたヤツの情報を出し渋る、なんてことはしないだろうし。
「そうだな……この者を捕らえたのは貴殿だ。聞き出せた情報は貴殿にも渡すことを約束しよう。それに――どうやら、街を救っていただいたようだ」
辺りを見渡し、ゾンビどもが沈黙している様子を見てから、領主のおっさんはそう言った。
燃えた家を見て苦笑を溢し、ちらりと俺の方を見てきたが、それやったの俺じゃないからね?
「――お前達!どうやら脅威は去ったようだ。だが、ボーっとしている暇は無いぞ!!すぐに復興に取り掛かる、気合を入れ直せ!!」
領主の言葉に、突然の事態に付いて行けず困惑の表情を浮かべる衛兵達だったが、だんだんと危機が去ったことを実感し始めたようで、少しずつ喜びの声が増えていき――。
――やがてその歓喜の雄叫びは、街中に響き渡るような大気を震わせんばかりの大歓声となっていった。
恒例のあっさり終わるシリアス。もう、作者が早く日常回を書きたくてな……。
次回で恐らく、街編は終わります。




