異世界観光:武器屋
「そういやお前、今更のことだし俺が言うのもアレだけど、こんなずっと俺達に付いて来てていいのか?一応敵ってことになってるんだし、後で怒られたりとか」
雑踏の中を進みながら、自身もまた雑踏の一部と化しつつ、隣を歩く勇者へと問い掛ける。
「……本当に今更なことを言うね。まあ、それは仕方ないことだから。君達を放っておいたら、それこそ何かあった時怖いでしょ?それならいっそ、一緒に付いて行った方がいいかなって思って」
失礼な。俺は基本的に向こうから絡んで来なければ何もしません。
「それと、言っておくけど僕は別にこの街の出身って訳じゃないから、そこまで街の地理に詳しくはないからね?」
「俺達よりは詳しいだろ」
「……まあ、そうだろうけど。それで、どこに行きたいの?」
「俺は武器屋と本屋に行きてぇ。レフィはどこか行きたいところあるか?」
そう言って俺は、首を上に曲げる。
再び俺の肩の上によじ登り、肩車されているレフィは、快適そうな様子で腕を組みながら答えた。
「儂は飯の美味いところに行きたいの。甘味処があるのであれば、そこがいい」
「いや、お前朝も散々っぱら食ってたじゃねえか」
「フッ、あれぐらいで儂の胃袋を満腹に出来ると思ったら、大間違いよ」
さいですか。
「――という訳だ。飯屋と武器屋と本屋だな」
「んー、わかった。それじゃあ、まずは武器屋から行こうか」
* * *
そうして連れて来られた、街の武器屋。
店内の壁には所狭しと色んな武器が飾られ、そして投げ売りの安物がタルに入って売られている。
俺達以外の客も数人おり、店員の偏屈そうなじっちゃんがジロリと今入って来た俺達を一瞥するが、すぐに興味を無くして、手元の武器を磨く作業に戻る。
いい。実にいい雰囲気だ。オラ、ワクワクすっぞ。
街に来てからテンション上がりっぱなしだな、俺。
俺は普通の剣は扱えない訳だが、一度本職の造る武器がどんなものか見てみたかったのだ。
やはり製作には、他の誰かの作品の研究というものが欠かせないからな。インプットが無ければアウトプットは生まれないのである。
クリエイティブ魔王として武器を自分で作る俺にとって、武器屋というのは一度は必ず見ておきたかった場所なのだ。
「へぇ……結構品揃えがいいな」
「ここは一応、騎士達の武器も取り扱っているところだからね。前に一度だけ、騎士団の遠征に付いて行ってこの街に来た時に、この店に連れて来てもらったんだ」
勇者もまた、店内をキョロキョロしながらそう答える。
武器の質の良し悪しなどは、流石に素人であるためそこまで詳しくわからないのだが、しかし俺には伝家の宝刀、分析スキルがある。
壁に並べられた品の品質は、大体B−~A+といったところ。投げ売りのタルの中の武器はE−からC+とピンキリだ。
……と、お?
投げ売りの品を何気なく見ていたその時、ふと一本の品が目について、俺はそれをタルの中から引き上げた。
刀身には錆が浮き、刃もところどころが欠け、持ち手も柄も無骨な造りで、誰が見ても粗悪品のナマクラの剣なのだが……。
太古の英雄の剣:はるか昔、名も知られぬ英雄が人々を守るため手に取り、数多の強敵を屠った剣。現在はその力の大半を失ってしまっている。品質:測定不能。
お、おお……。
なんかすげえのあったぞ。
これ、あれじゃないの。モン〇ンでいうところの『太古の塊』シリーズじゃないの。強化成功したら、力が戻る、みたいな。
「ほう……?お主、なかなか良さそうな物を見つけたの」
「あぁ……」
店内を物珍しげに見ていたレフィが、俺の持っている剣に気付き、興味深げに言う。
……あれだな、例の斧を武器錬成で造り変える時に、一緒に素材として混ぜてしまおうか。ちょうど、大剣へと造り変えるのに、あれだけじゃ全然素材が足りないと思っていたところなのだ。
武器錬成は、何も一つの素材だけが使えるという訳ではない。魔力を流しておけば、複数の素材を融合させ、一つの武器として造り上げることが出来る。
他にも素材が必要となりそうだが、しかし上手く行けば相当な業物を造り上げることが出来るのではなかろうか。
素晴らしいぞ、人間。ロマンの何たるかをわかっていやがる。流石と言わざるを得ない。
「よし、買おう。レフィ、お前も何か欲しいのあるか?買ってやるけど」
「いや、物珍しくはあるが、特にはないな。それよりは、後で儂に食い物を買え」
「へいへい、了解しました。ネル、は……ネル?」
見ると勇者は、壁に掛かった一本の長剣を食い入るように見つめ、噛り付いていた。
「……お前、立派な武器持ってんだろうが」
聖剣なんて、世界でも数えるぐらいしか無さそうな立派なヤツ。何か阻害する魔法でも掛かっているらしく、分析スキルで詳しい能力までは読み取れないけど。
……いや、どうなんだろう。もしかして異世界なら、聖剣はそこそこの数造られてたりするのだろうか?このぽんこつ気味の勇者が一本持ってるぐらいだしな。
実はそんな、言う程凄いものではないのかもしれない。
「えっ?あ、う、うん、そ、そうなんだけどね。や、やっぱりほら、こういうのは別でしょ?」
まあ、言いたいことはわかるけどな。
「見るのはいいけど、そんなに長居はしないからな。他に行くところもあるし」
「う、うん、わかった。も、もうちょっとだけ」
こういうのはどちらかと言うと、男が興味を引くもので、女は「ふーん」て感じでそこまで面白いとは感じないものだと思っていたのだが……まあ、楽しそうだからいいか。




