観光再開《1》
ちょい書き直すかも。
なんやかんやよくわからないことがあったし、考えたいことも色々あったが……とりあえず無事にシィとサクヤを見つけることが出来た俺達は、残ってくれていた皆と合流する。
我が家の面々は近くのレストランの一つに入っていて、ただやっぱりこちらが気になっていたらしく料理を頼んでいなかったので、そのまま皆で昼食を食べることにした。
なお、二人が無事で一番安堵した様子を見せていたのは、船長達エルレーン協商連合の面々だった。ウチのシィと……いや、ウチのサクヤがすいません。
家族団らんを邪魔しちゃ悪いだろうと、船長は気を利かせてくれて再び去って行き――護衛はやっぱりそれとなく俺達を守る配置に戻ったが――、なので今は家族だけである。
「何はともあれ、二人が無事で良かったよ!」
シィとサクヤの姿を見て、ネルがそう溢す。
「みんな、しんぱいかけてごめんね! ちょっとぼーけんしてきちゃった!」
思いっ切り泣いたことで、ようやく感情の整理が付いたらしいシィは、流石にお腹が空いたらしく、運ばれてきたポテトをポリポリと食べながらそう謝る。
もう昼を過ぎてちょっと経ってるからな。いつもならとっくに食べ終わってる時間帯だ。
「冒険したくなっちゃったなら……しょうがないね!」
「……ん。でも心配した。次からは一緒に冒険に連れて行くこと」
「ごめんごめん、このうめあわせはー……せいしんてきにするよ!」
「あ、精神的になんだ」
少女組のやり取りを聞いて、ネルは俺を見る。
「……何だ?」
「今の言い回し、どっかの誰かからよく聞くなあって思って」
心当たりのある俺は、誤魔化すようにオホンと一つ咳払いし、気を取り直すようにして皆に言う。
「さ、それより、ようやく全員揃ったことだし、飯食ったらしっかり観光するぞ、観光! ちゃんと船長から名所は聞いてきたからな! まずは、エネルギーを補給すべく、このステーキの討伐を行おうじゃないか」
「異議なし! わたしは、ステーキ相手に一歩も引かずに戦うことをここに誓うよ!」
「……同じく。この山盛りのステーキは、実に戦い甲斐がある。数多の戦闘を熟してきた刀として、血が騒ぐ」
運ばれてきた、大皿に乗った山盛りステーキを見て、わかりやすくテンションが上がるイルーナとエン。
このレストランも、船長がオススメしてくれていたところなのだが、それは家族で食べられるよう配慮をしてくれる店だからだ。
ウチの家族は普通に鍋とか一緒に食べるし、おかずとかも、まず大皿で出して、それを各々が取って食べるが、そういう大皿をみんなで突いて食べる、という文化は外ではあまり見られない。
前世でも、アジア圏以外でそういう食べ方をする国は少なかったしな。
だからこうして大皿で料理を出してくれるところは、実は珍しいのである。
しかも、どう見てもここ、店の面構えからして高級レストランだ。大衆食堂とかならまだわかるが、そうでないのにこうやって料理を出してくれるところなんて、どれだけあることだろう。スタッフの対応も良いしな。
店に入った時、そこが一流かどうかを見分ける方法を教えてやろう。
それは、シィかレイス娘達を見て、店員が驚かないでいられる店だ!
「シィはねー、きょうはおにくより、おやさいのほうがいい! このおやさい、まりょくたっぷりだよ! これ、たぶんレイ、ルイ、ローもたべられるとおもう!」
「うむ、偉いの、シィ。イルーナ、エン、二人もしかと野菜を食うんじゃぞ」
「えー、そういうお姉ちゃんも、あんまりお野菜食べない……と言おうと思ったけど、最近はちゃんと食べるんだよねぇ」
「カカ、儂も人の親じゃからな。儂が食わんとリウとサクヤが食わなくなりそうじゃからの。儂自身としては、未だにわざわざ草を食べる必要性は感じないが」
「草言うのやめなさい。お前は超生物だから食生活が偏ってても問題ないだけだ。俺達みたいな一般人はバランス良く食べなきゃダメなの」
「ご主人を一般人の枠に入れるのはどうかと思うっすけど、まあ同感っす。お野菜食べないと、お肌が荒れちゃうっすよ」
「シィはあれるおはだないけど、おやさいすきー!」
ウチの少女組だが、シィは意外と野菜が好きで、エンは別に好きでも嫌いでもないといった感じだ。ポテトサラダとか、ごぼうのきんぴらとかは好物で、レイラに作ってとよくねだるがな。
イルーナも物によりけりではあるが、まず子供が嫌いな筆頭であるトマトとピーマンを漏れなく嫌いなので、野菜全般に良いイメージが無い。
最近は少しずつ食べるようになったが、別に克服した訳じゃなく、我慢しているだけである。その精神はとても偉い。
レタスとかキャベツ、ブロッコリーなんかは食べられるんだが……何が違うんだろうなぁ。わからん。
なお、今まで野菜を食べない筆頭は、レフィだった。俺達と違って、マジで菓子ばっか食ってても肌が荒れるなんざ一切ないし、体調を崩すなんてこともない。超生物なので、そもそも魔力さえあれば食事はそんなせずに済む。
多分、三食ケーキ生活を百年とか続けても、何にも問題は起こらないのだろう。その前に飽きるだろうが。
改めて思うのだが、この世界の頂点付近に君臨する生物は、どいつもこいつも色んな意味で規格外である。というか、魔力って力が、万能なんだろうな。
レフィと過ごすようになって数年経つが、コイツが体調を崩したところをまだ一回も――いや、妊娠してた頃はそういう日もあったが、風邪を引いたことは一度もない。
妊娠してからは菓子を控え始め、三食バランス良く食べるようになり、で、サクヤを産んだ後も、子供が野菜嫌いにならないよう今からしっかり食べているのだ。偉い。
「むむむ、そうだね、もう小さな子供じゃないんだし、しっかり野菜も食べなきゃ……リウとサクヤの好き嫌いを減らすためには、わたし達の好き嫌いが少ない方がいいもんね!」
「……む、確かに。エン達が美味しくないって言ってたら、多分二人も美味しくないって思っちゃう。まあ、我が家で出る料理で、美味しくないものの方が少ないけど」
「たべることはしあわせー!」
「偉いですよー、三人とも。ただ、本当に嫌いなものなら、無理して食べる必要は無いですからねー。どうしても受け付けない料理というのは、存在しますからー」
「あー、わかる。俺は、やっぱ虫食が無理だわ。前に一回、ローガルド帝国で活動してた時に出て来たことがあってよ。あの時は辛かったわ」
好き嫌いする魔帝とか威厳なさ過ぎなので、あの時は感情を無にして食ったがな。
味は、なんかすっぱい肉みたいな感じで、食えなくはないといった感じだったが、ビジュアルが無理過ぎた。
高級食材って、意外とグロテスクなの多いからな……。
「え、でもご主人、エビ食べるじゃないっすか、エビ。タコとかイカとかも。てっきりゲテモノ好きなんだと思ってたっすけど」
「いやそれらはゲテモノじゃ……あー、そうか、それを食べる文化がなけりゃゲテモノに含まれるか。まあつまり、昔から日常的にそれに触れていないと、食べ物だと思えないってことだ。ということは、大人が食わんものは子供も食わんってことだ」
「文化だね、文化。森の恵みが食事の中心のエルフなんかは、きっとお肉いっぱいのこのテーブルを見て、『え、無理……』とかって思うだろうし。異文化交流の難しいところだよ」
「ということはだ、同じ種族がほぼ皆無な我が家で、それぞれが美味しいと思える食事の献立を毎日考えてくれるレイラには心から感謝しないとな。いつもありがとう、レイラ。愛してるぜ!」
「……も、もうー」
「おっ、いいっすよ、ご主人! レイラの珍しい赤ら顔っす! これは写真に収め、家宝として代々祭るべきっすね!」
「食を牛耳るということは、つまり命を牛耳るということ……やっぱり我が家のボスは、レイラなんだね!」
「リュー、ネル、帰ったらあなた達のご飯、三食昆布にしますからねー」
「あっ、じょ、冗談っすよぉ、レイラ! すごい可愛い顔してたから、思わず本音が出ちゃっただけっす!」
「ごめんごめん、うそうそ! 僕も愛してるよ、レイラ!」
「ん、リューは昆布確定ですねー」
「何故に!?」
俺達は、笑いながら少し遅めの昼食を楽しんだ。




