サクヤの能力
前回のあらすじ:ペット達に会わせたらサクヤに称号が増えた。
「――なるほどのぉ。やはり、と言うべきか、何と言うか……まさに、お主の子じゃなぁ」
先程の出来事を説明すると、何故かしみじみと、そう溢すレフィ。
「え、そ、そうか?」
「その時々にて、適した力を得るのは、魔王の力以外の何物でもないですねー」
レフィの言葉に同意するように、そう言うレイラ。
……言われてみると、確かにそうか。
状況に合わせ、適宜『器』の形が変わっていくのは、魔王の力そのものだろう。
「それで、セイミの方は何か変わっておったのか?」
「あぁ、実はサクヤを確認した後に見てみたら、やっぱり一つ称号が増えてた」
セイミに増えていた新しい称号――『王の友』。
王の友:王と心を通わし、臣下であり、友となった者。彼らに主従はなくとも、しかし確かに、絆は存在するのだ。
セイミ自身に聞いてみたところ、何だか一つ、サクヤとパスが繋がったような感覚があるようで、我が息子が眠ってしまったから確認出来ていないが、もしかすると意思疎通がもっと簡単に出来るようになったかもしれない、と話していた。
「ふむ……じゃが、良い力じゃな。それは、自分だけで生きるのではなく、他を求め、共に生きるための力じゃ。お主は、直属の配下が五匹おるが、もしかするとこの子はそれを超えるかもしれんのう」
「はは、ありそうだ」
俺とは違う形で……サクヤは、魔物を従えていくのかもしれない。
ちなみに、シィとレイス娘達を入れれば俺の配下は全然五匹じゃないのだが、正直あの子らのことは、もうそういう風には見れないからな。
二度と、彼女らを戦いの場に出すことはないだろう。
あぁ、いや、そう言えばあと一匹、ローガルド帝国から連れ帰ってきた狼君がいたか。
まだまだ弱いが、もうちょっと強くなってくれれば、直属の配下に加えてもいいかもな。
彼のことを、意外とウチのペット軍団が気に入っているのだ。「見る目がある」とか「機転が利く」とか「ユーモアがある」とか言っていた。
ユーモアがある、はよくわからないが……やはり、適した状況判断が下せるだけの、高い知能を持っているのだろう。
「で、思ったんだけどさ……サクヤは、早めに色んなことを体験させてあげた方がいいと思うんだ。子供だからその内でいい、っていうようなことも、早めに体験させてあげた方が、この子のためになるんじゃないかって」
「確かにのう……どうやらこの子は、お主以上に数多を経験することになりそうじゃからな。武器は多いに越したことないじゃろう」
「まだ早い、と心情的には言いたくなってしまいますけどねー。確かに、そうかもしれませんー。ユキさんとレフィの二人で見ていれば、外に出てもどうとでもなるとは思いますしー……」
コクリと頷くレフィと、少し心配そうなレイラ。
「そう心配せんでも良いじゃろう。数多を経験させる、と言うても、別に戦いの場に連れて行く訳でもない。要は、観光とかで良いのではないか? 本格的に戦いの術を教える、というのは、流石に身体が出来てからになるじゃろうし、それまでは遊びのようなもので良いと思うぞ」
旅行か……確かに。
「今更だが、そういう戦う術って、世間一般のじゃあ、いつくらいから教えるんだ? 他所のご家庭じゃあ」
「龍族は生まれた時から魔法が使えるし、そこらの魔物ならば蹴散らせるぞ」
「お前ら最強種族は、こういう話に参加する権利はありません」
「何じゃとぉ~?」
わざとらしく怒ったような素振りを見せながら、わしゃわしゃと俺の髪をボサボサにするレフィ。
彼女の好きなようにさせたまま、俺はレイラへと問い掛ける。
「どうなんだ、レイラ?」
「私達の一族では、魔法の技術を教えるのは三歳辺りからですが、それが当たり前にあるものと認識させるために、乳児の段階から魔法を使ってあやしたりはしますねー」
「あぁ、それでリウとサクヤにも、色々見せてあげてるのか」
レイラが、二人をあやしながら魔法を見せたりしている様子は、俺も見ている。レイラに言われ、俺達が魔法を見せることもあるしな。
そうか、あれは羊角の一族における、教育の一環なのか。リウとサクヤが喜ぶからやってるんだと思ってた。
いや、まあ、実際そういう思いもあるのだろうが。レイラ、二人の世話をしている時、実は結構顔がとろけてるし。
完全無欠才女レイラが見せるとろけ顔。素晴らしいものがあります。
「戦士を生業とする一族などでは、生まれて数か月後には、狩りに連れていくところもあるようですねー。命のやり取りが日常なのだと理解させるために、戦いの空気や血に慣れさせるそうですー。それこそリューのウォーウルフ族では、男の子なら早めにそうさせるとかー」
……それくらいしないといけないのが、この世界なんだろうな。
野蛮な風習だろう。が、生きるために、それが必要なのだ。
「ふあ……呼んだっすかー?」
その時、隣の部屋で昼寝をしていたリューが、小さくあくびをしながら顔を覗かせる。
「おはようリュー。もう起きたのか。まだ寝ててもいいぞ?」
「いえ、少し眠気があっただけなんで、もう元気いっぱいっす! それで、何の話をしてたんすか?」
「あぁ、リウとサクヤに……特にサクヤに、どれくらいから戦う術を教えようかと思ってさ」
ここまでの流れを、軽く彼女にも話す。
「ははぁ、なるほど……ご主人の子っすねぇ」
二人と同じ反応をするリューである。
「そうっすね、ウチの一族も、そういうことをしていたっす。勿論最大限安全に配慮してっすけど、生きるために戦いは避けられず、生きることとは少なからず他者の命を奪うことだと、小さい頃に教えるっすね。ウチにも覚えがあるっす」
残酷だが、真理だな。
「なるほどなぁ……ま、いつから剣術とか魔法とかを教えるかはまた考えるとして、この子らも落ち着いてきてるし、とりあえずみんなで旅行に行くか!」
「お、いいの。確かネルも、近い内に休暇が取れると言うておったな。イルーナ達の学校も……まあ、あそこは融通が利くじゃろう」
「旅行っすか! いいっすねぇ。どこに行くっすか?」
「人間国家だったら、実は前からエルレーン協商連合に行きたいと思ってたから、そこがいいな。魔界だったら魔界王都だ。まだみんなで行ったことないし。リューの一族にリウを見せるべく、獣人族の里へ行くって選択肢もある。ちょっと遠いが」
エルレーン協商連合。飛行船を開発し、大戦にも活用して、一気に名を上げた国。前から一度は行ってみたいと思っていた。
「あー、お気遣いは嬉しいっすけど、ウチの里はもうちょっと後でいいっすよ。父様と母様には顔見せしたっすから。それこそ、里に行くのはリウが物心付いてからで大丈夫っす」
「そっか……それじゃあそうしよう。レフィ、レイラはどう思う?」
「獣人族の里が後で良いのならば、儂は何でも良いぞ」
「すでに『扉』が繋げてあって、その気になれば魔界王都は日帰り旅行が出来るんですよねー? 遠出の旅行なら人間の国、近場の旅行なら魔界王都。あとはネルと少女組の予定を確認して、って感じでどうでしょうかー?」
「うむ、そうじゃな、それが良いの」
「ウチもそれで賛成っす!」
「よっしゃ、リウ、サクヤ、旅行行くぞ、旅行! 色んなもの見ような!」
そう声を掛けると、二人は俺を見ながら「えぅう、ばぁう」「うおう、おおう」と返事を返した。可愛い。




