閑話:イルーナの家族
すまん、続きが全然書きあがらなかったので一旦閑話。
少し前、我が家に家族が増えました。
リウとサクヤ。
どちらも、とっても可愛い、見ているだけで胸がぽかぽかしてくるような、新しい大事な家族です。
リウは、いつでも元気いっぱいで、まさにリューおねえちゃんの子って感じです。その愛くるしい動きを見ていると癒されまくりで、どんな疲れも一瞬で吹き飛んでしまいます。
サクヤは、リウよりも大人しい子ですが、やっぱり愛くるしいのはリウと一緒で、時々見せる笑顔など、可愛過ぎて頭がとろけそうになります。
あと、サクヤは人をよく見ているような印象があります。おもちゃとかで遊ぶ時は、一人で遊ぶよりも、誰かが一緒に遊んであげるととても喜ぶような印象で、もう可愛さがてんげんとっぱしています。
ちなみに、『てんげんとっぱ』の意味はよく知らないのですが、おにいちゃんが使う感じからして、多分メーターを振り切っているような様子を表す言葉でしょう。
そう、リウとサクヤの可愛さは、もう測れないレベルにあるのです。可愛すぎて毎日てんげんとっぱです。
また、二人が生まれたことで、家族のみんなにも、変化が起きたように感じます。
特に、大人組のみんなです。
おにいちゃんは、父親らしく。
おねえちゃんとリューおねえちゃんは、母親らしく。
リューおねえちゃんとか、前はちょっとおっちょこちょいなところがありましたが……いや、今でもおっちょこちょいなところはあるのですが、ただそれ以上に頼もしさを感じるようになった気がします。
失敗した、じゃあ次はそれ以上に頑張ればいいという、そういう切り替えがとっても早くなったように思うのです。
レイラおねえちゃんやネルおねえちゃんも、リウとサクヤが生まれて母親らしくなったように思いますが、おねえちゃんとリューおねえちゃんの変化は、それ以上に大きいように感じます。
そうしてリューおねえちゃんが頼もしくなったことで、彼女ととりわけ仲の良いレイラおねえちゃんが、時々涙ぐんでいる様子を見かけます。どうやら相当感慨深いようです。
きっと、お腹を痛めて子供を産むことによる心の変化というものは、わたしが想像付かないくらいに、とっても大きいのでしょう。
大人組に変化があったように、シィやエン、レイスの子達にも、変化があったように思います。
学校に通い始めたから、というのもあるかもしれませんが、それ以上に、自分達に『姉弟』が出来たことの方が、強い影響があったように思います。
あの子達の中に、「姉になったのだから、それに相応しいようしっかりしなきゃ」という意識が、芽生えたように見えるのです。
のほほんとしているシィなんかは、その変化が顕著で、ふわふわな言動自体はいつもと変わらないものの、何だか芯の部分がしっかりし始めたように思います。
リウとサクヤを、姉として守ろう、という意識を持っていることが、節々で感じられるのです。
エンや、レイスの子達からも、そういう思いが感じられ、その意識も見習っていこうと思うものです。
自分のことはわかりませんが、わたしも彼女らと同じように成長出来ていたら、嬉しいな。
そんな、家族が増えたことで変化したみんなですが――前と変わらないこともあります。
「ゆ、ユキ! それは儂が食うておったものじゃぞ!」
「うむ、美味い美味い。人が楽しみにしていた菓子を食べる時は、なお美味い!」
おねえちゃんが食べていた途中の菓子を、横から首を伸ばしたおにいちゃんが、がぶっと噛み付いてモグモグ食べる。
「こ、このっ、しょうもないことしおって……! というか、まだ自分の残っておるではないか!」
「フッ、レフィよ……隙を見せたらやられる。それがこの世界だと俺に教えてくれたのは、お前だろう?」
「そんなこと一度も言うたことないわ!」
「そうだったか? 確かにそうかもな」
出会った頃から変わらず、楽しそうにケンカを始める二人。
結局あとで、おにいちゃんは自分用のお菓子を食べた分だけおねえちゃんにあげると思いますが、多分ちょっかいを出したくなってしまったのでしょう。
そもそも、おにいちゃんそこまでお菓子が好きな訳じゃないし。
ただ、おねえちゃんもおねえちゃんで、口では怒っている素振りを見せながらも、様子からして楽しそうなのが丸わかりなところが、可愛いところです。
本当にお似合いの夫婦です。
リウとサクヤが生まれ、そのお世話をする時間が増えたので、前程ではなくなったのですが、それでも二日に一回くらいはこうしてイチャイチャしています。
良いことではあるのですが……正直「はー、またやってるよ……」とちょっと呆れてしまいます。大人組のみんななんかは、こうなった時の二人のことは、生暖かい目で見てそっとするのがいつもの対応です。
まあ、おにいちゃん達がああやって騒がしくしていると、家全体が賑やかになって楽しいので、二人がそうしているのを見て「日常だなぁ」と感じるものなのですが。
ちなみに、夜は夜で、二人だけで楽しそうに遊んでいるらしいということは、エンから聞いています。
魔王の力があるおにいちゃんは、お家――ダンジョンにいる間はあまり眠らなくても良いそうで、おねえちゃんの方は覇龍で肉体が世界で一番強いそうなので、つまり二人は夜の時間が長いんです。
だから、みんなが寝静まったあとも、リウとサクヤの様子を見ながら、ボードゲームで遊んだり、お酒を飲んだりしているそうで、二人の時間を形成しているそうです。
多分それは、二人にとっては無くてはならない、大切な時間なのでしょう。わたしは夜はすぐに眠くなってしまうので、ちょっといいなぁと思ってしまいます。
……種族がどうの、というのは別に特に考えたことはないのですが、こういうところだけはとても羨ましくなります。
夜は眠くて眠くてしょうがありません。学校に行くようになってからは、お寝坊することも出来なくなったので、大変です。
学校、とっても楽しいけれど、朝がキツいのだけどうにかならないかなぁ……なんていつも思ってしまいます。
シィもエンも、レイもルイもローも、特殊な種族なので一日元気いっぱいで、それが羨ましくなってしまいます。
レイラおねえちゃんの妹、エミューちゃんだけが、わたしの辛さに共感してくれます。
おにいちゃんとおねえちゃん以外の大人組も、大人だからか朝早くても特に気にした様子はないですし……ただ、面白いのは、一番しっかりしていてお母さんみたいなレイラおねえちゃんが、実は最も朝が弱かったりすることです。
趣味の研究を夜遅くまでしているらしい、ということを除いても、レイラお姉ちゃんは朝が眠くなってしまうようで、可愛いです。
我が家にいると、十人十色、という言葉を、強く実感してしまいます。
ただ、そうして十人十色であっても、とても仲の良いわたしの家族達を見ていると、平和というものを強く感じられて、嬉しくなってしまうものです。
みんなが、わたしの家族みたいならば、世界はずっと平和だろうという確信がわたしの中にあります。
――今のわたしの日々は、こんな感じです。
毎日騒がしく、楽しく、充実した日々。
「……んふふ」
「? イルーナ、どうした~?」
「……イルーナ、楽しそう」
「ん、そうかも! みんな、幸せそうだなぁって思って」
「しあわせいっぱい~! しあわせのおかし~!」
「……このお菓子は幸せの味。作ったレイラは幸せマスター」
「エンがいうなら、もうまちがいないよ! レイラおねえちゃんは、しあわせマスタ~」
「ふふ、ありがとうございますー」
「ははは、まあそうだな。毎日三食、加えて菓子も、レイラのマジで美味い料理が出て、俺達は幸せだ」
「その儂の分の幸せを、お主が今食うたがの!」
「もー。二人とも、何でもいいけど、あんまりのんびり食べてると夜食べられなくなっちゃうよ」
「そうっすよ、二人とも。イチャイチャするのは良いっすけど、一緒に全部洗いものしたいんで、食べ終わってからイチャイチャしてほしいっす」
「「い、イチャイチャしとらんわ!」」
それは無理がある。
わたしは、そうして今日をみんなと共に過ごしていく――。




