リューの家族とレイラの家族《2》
そう言えば、羊角の一族の里と繋がったのに、まだレイラの家族を呼んでなかったな、と思ったので、小タイトル変更しました。
無事に、リューの両親には連絡が行ったらしい。
ただ、彼らも色々仕事があるだろうし、何より住んでいるのが遠方の地なので、来るのはもうちょっと先になるだろう――なんて思っていたのだが。
「どうも、お義父さんお義母さん」
「……やめろ、貴様にお義父さんなどと呼ばれると、背中が痒くなる」
「あら、私はお義母さんで構いませんよ? もう、身内なんですから」
微妙そうな表情の親父さんと、ニコニコと笑うお袋さん。
リューの両親は、なんと、俺達が連絡をお願いした一週間後には、もうこちらにやって来ていた。超早い。
恐らく、連絡が入ってすぐに準備して、その翌日にでも飛行船に乗ったのだろう。じゃないとこの短期間でこっちには来られないはずだ。
「あ、それなら僕も、お義母さんって呼んでいいですか?」
一緒に迎えに来ていたネルの言葉に、リューのお袋さんはニコニコとしながら応える。
「えぇ、勿論構いませんよ。うふふ、娘が増えたようで、何だか嬉しくなってしまいますね。ねぇ、あなた」
「……その問いは何も言えなくなるからやめてくれ」
チラリと、視線で助けてくれと懇願してくる彼に俺は苦笑し、口を開く。
「とりあえず、ここで立ち話もなんだし、リュー達が待ってるから、我が家に行こうか。あと、悪いんだが、実は今日、もう一組お客さんが来る予定なんだ」
「ふむ? わかった、そういうこともあろう。どこのお方だ?」
「レイラ――俺の、魔族の奥さんの家族だ。羊角の一族の」
そう、今日は、イルーナ達の学校が終わり次第、レイラのお師匠さんのエルドガリア女史と、レイラの妹のエミューも我が家に訪れる予定なのである。
イルーナが、ウチにエミューを連れて来たいと言うので、どうせだからとエルドガリア女史も呼ぶことにしたのだ。
リューの両親が来るのがもうちょっと先だと思って今日呼んだら、たまたまかち合ってしまった訳だが……まあ、彼らにとっても一応、これからは遠縁と言える存在になる……なるよな? あれ、どうなんだ?
……あんまりわからんが、顔見知りになっておいて損はないだろう。うん。
「ほう、羊角の……わかった、是非挨拶させてもらおう」
「とっても気のいいお婆ちゃんと、可愛い小っちゃな女の子なので、すぐ仲良くなれると思いますよ! あー、でも、小っちゃい子はちょっと人見知りなところがあるので、そこだけ気にしてもらえると」
そんなことを話しながら、俺達は辺境の街アルフィーロ近くに存在している扉に向かい、我が家へと帰った。
◇ ◇ ◇
「お、おぉ……! この子が、私の孫……!」
リューの親父さんが、リウを抱き上げる。
「だぁ、あう」
「はは……リウ、だったか。あぁ、確かにウォーウルフの血を引いているな。それに、娘の面影もある」
「あう、あぁ?」
蕩けた顔で、リウをあやす親父さん。
「……今まで見たことないような顔してるっすねぇ、父様」
「ふふ、でもあなたが生まれた時も、こんな顔をしていたわよ?」
「へぇ? そうだったんすか。あの厳格な父様が」
「お、おい、余計なことを言うな」
「あら、ごめんなさい。でもあなた、今の顔を鏡で見た方が良いわよ」
「……孫娘が可愛いから仕方ないのだ」
「そうね、仕方ないわね」
「仕方ないっすねぇ」
視線を逸らす親父さんに、ニヤニヤとするリューとニコニコとするお袋さん。
仲が良さそうな家族達の語らいである。
リウは、初めて会った祖父母相手でも、特に泣いたりもせず、抱き上げられても一切ぐずらなかった。
賢い子――と思ったが、もしかすると、これは獣人だからなのかもしれない。
獣人は、非常に鼻が良い。そのことはリューと一緒に過ごしていて、よく知っている。
だから、リューの両親の匂いに、リューと同じものを感じて家族だと理解したのだろう。
「こ、これが赤ちゃん……赤ちゃんですよ、師匠!」
「ふふ、あぁ、そうさね。これが赤子さ」
「す、すごい小さいです!」
「そりゃあ、赤子だからね」
「こ、これで生命活動を行えているというのが、私には信じられないです……生命とは、すごいですね!」
「そうさ。命とは、ただそれだけで凄いのさ」
リュー一家の横で、サクヤを囲んで話しているのは、レイラの妹エミューと、師匠のエルドガリア女史。
どうやらエミューは、赤子というのを見たのが初めてらしく、興味津々ながらもどこかおっかなびっくり、といった様子である。
「それにしても、凄まじい力を持つ子だねぇ……流石、魔王と覇龍の子、ということかい。なんと独特な魔力をしていることか」
「それは……わかるです。この子の雰囲気、今まで見たことがないです。これだけのものを観測したのは、羊角の一族の中でも他にいないかもしれません」
二人の言葉に、イルーナが反応する。
「すごいねぇ、やっぱり羊角の人達だったら、そういうのわかるんだ。精霊王せんせーとかもそう言ってたけど、わたしにはわかんないや」
「シィもわかんない! リウもサクヤも、ただただかわいー!」
「……それは真理。赤ちゃんは可愛い」
「はい! 赤ちゃん可愛いヤッター委員会所属の身として、シィとエンの意見には全面的に同意したいと思います! 赤ちゃん可愛いヤッター!」
「かわいいヤッター!」
「……可愛いヤッター。エミューも言って」
「えっ? ……か、可愛いヤッター?」
「素晴らしい、ここに今、エミューが赤ちゃん可愛いヤッター委員会に所属したことを宣言します!」
「おー!」
「……おー」
拍手するシィとエンに、ウチの子らに付いて行けず戸惑うエミュー。
その委員会、まだ消滅せずに残ってたのか。
「……ネルさん、ウチの子らが変なこと覚えちゃってるんですが」
「リウとサクヤは最高に可愛いから、いいことだね!」
ぐ、と親指を立てる勇者様である。
――なんて、子供らがワイワイとやっている様子を見て、エルドガリア女史とレフィが微笑ましそうに笑う。
「あははは、アンタのとこの子達は元気だねぇ。子供の姿を見れば、その家のことがある程度わかるってもんだ。相変わらず、仲良くやっているようで何よりだよ」
「カカ、騒がしくてすまんの。家族が増えてからは、その騒がしさもひとしおでな」
「あ、そうそう、聞いてくださいよ、父様、母様! リウとサクヤの他に、フェンリル様方の子供が産まれて、もー、その子もすごい可愛いんすよ! リウの妹で、サクヤの姉で、三人とも仲が良いんす!」
「! フェンリル様の御子! それも、素晴らしい慶事だな!」
「あらあら、それじゃあこの子達は三人姉弟なのね」
「ほう、フェンリルの子供……それは、アタシも興味あるねぇ」
「ん、せっかくだからリル達も呼んでくるか。ちょっと待っててくれ」
俺は、一旦部屋を後にした。




