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魔王になったので、ダンジョン造って人外娘とほのぼのする  作者: 流優
魔戦祭

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決起会


「――よし。やれることはやったか」


 ローガルド帝国訓練場にて、競技に出場する近衛騎士達との練習を行っていた俺は、一つ息を吐いて、そう溢す。


 魔戦祭は、二つ競技を行うが、その内『バトル・フェスタ』に出場する、ローガルド帝国第一近衛騎士団の者達。


 皆、製造が間に合った専用の防具を身に着け、汗を垂らし息を切らしながらも、充実した良い表情をしている。


 初の競技であるため、まだまだ至らない部分はあるのだろうが……時間いっぱい、色々忙しい中で、皆よく練習してよく頑張ってくれた。


「えぇ……とりあえず、仕上がった、とは言えそうです。やれることは、やったかと」


 色々共に仕事を熟し、意思疎通もやりやすくなった第一近衛騎士団副団長、ヘルガー=ランドロスもまた、汗を拭いながら、満足そうに頷く。


「この短期間で、流石、精鋭だな。大したもんだ。日中仕事もして、疲れてるだろうに」


「はは、我らと同じだけ動いて、ケロリとしていらっしゃる陛下がおりますから。あまり、泣き言を言う訳にもいきませぬ」


「自分で言うのもアレだが、俺は比較対象として相応しくないだろうぜ。その気になれば三日くらいは不眠不休で動き続けられるだろうし」


 今の俺ならな。やんないけど、そんなダルいこと。


 と、俺達の練習が終わったことを察して、手伝いに来てくれていたレイラとネルが、こちらに声を掛ける。


「皆さん、お時間、もうそろそろですよー」


「おにーさん、ご飯の準備遅らせることも出来るけど、どう?」


「おっ、わかった。いや、そのまま普通に準備頼むわ。――お前ら、ここらで切り上げて、予定通り飯にするぞ!」


『おぉ!』


 近衛騎士達の、野太い歓声。


 そうして俺達は、練習を切り上げると、片付けやら準備やらに取り掛かる。


 彼らには、色々手伝ってもらった。

 だから、感謝を示しがてら、こういう交流も必要だろうと考え、彼らの家族を呼んで共に飯を食うことにしたのだ。


 もうすぐそこに迫っている魔戦祭に向けての、決起会のようなものだ。


 飯の準備は、近衛騎士達の奥さんなどの家族が手伝いに来てくれており、先程までネル達と談笑していた。


 随分と楽しそうにやっていたのを見ているが、ただこれはウチの二人が、如才なく対応してくれた結果でもあるだろう。


 一応皇帝の妻という立場がある訳だが、二人とも愛想良いし、こういう対応に慣れてるからな。

 レフィとリューだと……レフィは意外と何でも出来るだろうが、リューは緊張して何か失敗しそうだ。


 いや、アイツも実はお嬢様だし、意外といけるか? どうだろうな。


「どちらも、陛下の奥方様でしたな。しかも、あちらの人間の方のお嬢さんは、大国アーリシア王国の勇者……いやはや、ロマンスの香りがしますな!」


「まー、色々あったことは事実だな。……あぁ、そう言えば、俺の本拠地の話はしたことなかったっけか。俺の家はアーリシア王国の向こうにある魔境の森ってところなんだが、その関係であそこの国とはそれなりに付き合いがあるんだ」


「ほう、なるほど、そういう理由が……いえ、少々お待ちを。魔境の森? あの、原初の大自然が残ると言われる、秘境の地に?」


「おう、そこ。家族で住んでるんだ」


 こういう反応も、何だか久しぶりだな。


 今更だが、この国で俺の素性って、どんな風に伝わっているのだろうか。


「……な、なるほど。環境の過酷さが、陛下のお力の秘密、ということですか」


「それはあるかもな。最初は何度も死にかけたし、酷い目に遭ったぞ。どうにか今まで生き延びることが出来たおかげで、今の強さまで成長出来た、というのはあるだろうし」


 俺が魔境の森という環境に育てられたことは、間違いないだろう。


「……陛下と、配下のあの魔物達と共にいても、倒せない相手、と?」


「そんなのいっぱいいるぞ。俺達なんてまだまだ弱い方だ。上には上がいるのがこの世界だ」


 西エリアで、戦うことは出来るようになった。ある程度勝てるようにもなった。


 が、俺より強い生物も数多くいる。

 ペット軍団総出で戦って、勝てるかどうか、というレベルの相手もいる。


 俺の強さなど、その程度のものだ。


「……よく、そのような場所で過ごすことが出来ますな」


「はは、まあそう思うよな。俺もそっちの立場だったら、そう思う。ただ、今はもうあそこでの過ごし方も慣れたし、ダンジョンの力で安全地帯の確保は出来てるから、不自由なく暮らせてはいるぞ」


 元レフィの縄張りで、かつ現在も俺達の本拠に程近いため、レフィの気配を感じて極端に魔物の少ない北エリアを除き、東エリア、南エリアにはもう、俺達よりも強い魔物はいない。


 で、肝心の西エリアの魔物は、そもそも引きこもりなので、魔素が非常に濃いあそこから滅多に出て来ない。


 森での過ごし方を確立した今は、油断したら死ぬだろうが、余裕こかなきゃ普通に暮らせるようにはなったと言えるだろう。


「話を戻すが、妻に関しては、あと二人いるんだが、身重だから流石に連れて来なかった。競技会当日には連れて来るから、その時挨拶させるよ」


「四人も……うーむ、剛毅ですな」


「こっちも、やっぱり色々あってさ。気付いたらこんな感じだ」


 その俺達の会話に、他の騎士団員達が参加する。


「我々は一人の妻でもう、大変なものだと言うのに。流石ですよ、陛下」


「この気苦労を考えると、一人で十分だと思ってしまいますね」


「いやはや、上手く付き合っていくコツでも聞きたいところですな」


「俺は特に何にもしてないさ。俺は色々ダメダメだが、それをウチのが補ってくれてるんだ。まー、上手く付き合うコツをあえて言うならば、妻には逆らわないことだ。特にウチなんか、四人いて軍団を形成してるから、それはもう恐ろし――おっと、何でもない」


「ははは、確かに。騎士学校時代に恐れられた鬼教官と、現在の妻。どちらが恐ろしいかと言えば……口にはしないでおきましょう」


「そうだな、それがいい」


「おにーさん、今の発言バッチリ聞いてたからね」


「酷いですねー。私達は、ただ旦那様のために尽くしているだけだというのに。ねぇ、皆さんー」


 ネルとレイラの言葉の後に、それぞれの近衛騎士の奥さん方が「そうですそうです!」「あなた、覚えてなさいね」「帰ったら、ねぇ?」と自分達の旦那に笑顔の凄みを見せている。


 うむ、やはり、奥さんに尻に敷かれている者が多いようだ。

 君達は同志だ。仲良くしよう。


 そんな雑談をしている内に、飯の用意が終わり、ヘルガーが俺へと言った。


「では、乾杯致しましょうか。陛下、音頭と、魔戦祭に向けて一言、お願いできますでしょうか」


「ん、わかった。――諸君、とうとうだ」


 それぞれ、手に乾杯用のグラスを持ち、俺の言葉を聞く近衛兵達。


「色々あって、ここんところは大変だったが……全ては、この魔戦祭を無事に終わらせるため。開催さえ出来れば、満足だ――なんてこたぁ思ってねぇだろうな?」


 煽るように笑みを浮かべ、言葉を続ける。


「無事に開催して、そして開催国として、優勝する。それでこそ、この国の覇を見せられる。この国の強さを、見せ付けられる。勝て、テメェら。他ならぬその手で、ローガルド帝国の精強さを、見せ付けてやれッ!」


『オォッ!』


 男達の、熱の籠った声を聞き、俺は言った。


「勝利にッ!」


『勝利にッ!』


 俺達は、グラスを掲げた。

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こちらもどうか、よろしくお願いいたします……! 『元勇者はのんびり過ごしたい~地球の路地裏で魔王拾った~』



書籍化してます。イラストがマジで素晴らし過ぎる……。 3rwj1gsn1yx0h0md2kerjmuxbkxz_17kt_eg_le_48te.jpg
― 新着の感想 ―
[良い点] ブロージット!!(ガシャーン)
[一言] 締める時は本当に格好いいよなあ
[一言] >ロマンスの香り 確かこの魔王と勇者の初対面はレイス三人娘に驚かされダンジョンの隅で膝を抱えて泣いている時でしたね
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