閑話:クリスマススペシャル2021
「えへへぇ、何と言うか、こうやってクリスマスの飾りつけをしている時が、一番楽しいような気もするよ!」
「確かになー。こうやって準備してる時のワクワクは、なかなか良いもんだよな」
クリスマスツリーを飾りつけしながら、そう話す俺とイルーナ。
――そう、クリスマスだ。
世間一般的には存在しないが、しかし我が家にだけは存在している行事である。
別に俺はキリスト教徒ではないが、うむ、このイベントは大々的に普及しても良いかもしれない。
こう……魔王の休日的な感じで。ローガルド帝国で提案してみようか。
「ねー。こういうイベントごとは、やっぱり大人になっても楽しいからね!」
と、そう言うのは、休日になり我が家に帰って来ていたネル。
最近は、こうしてすぐに帰って来られるようになっていて、旦那として嬉しい限りである。
「な。俺も、もう毎日やりたい気分だわ。お前の言う通り、こういうのは大人になっても、楽しみが色褪せないからな」
子供の頃は、子供として無邪気に楽しみ、大人になった今は、ウチの子らを楽しませる、という目的が第一にあれど、やはりその空気が楽しいのだ。
いつもより少し美味い酒を飲み、いつもより少し手の込んだ料理を食べ。
色んなことを話して笑いながら、いつもより少し遅くまで、夜を共に過ごすのだ。
大人になった今では、プレゼントやら何やらではなく、何よりもその語らいが楽しいのである。
気心の知れた、何の気も使わなくて良い家族との語らいが。
と、俺は俺でクリスマスを楽しみにしていると、イルーナが首を横に振る。
「えー、ダメだよ、おにいちゃん! イベントっていうのはね、時々やるから、楽しさが際立つの! 毎日やったら……毎日やったら……それはそれで、やっぱりワクワクしちゃう!」
想像して、やっぱり楽しそうだと思ったのか、「うーん」と唸りながらそう言うイルーナに、俺とネルは笑う。
一応、そういうのがやれるくらいには、ウチは財力があるからな。
……いや、財力つーのも、ちょっと変か。金は別にないし。
うーん……まあとにかく、求めれば得られる環境にある。
実際、余裕があるのにわざわざ悪い食材を使う理由もないので、日々食ってる食材も、外じゃ高級食材に分類されるであろうものばかりだしな。
DPで出したもの然り、そうでないにしても、魔境の森由来の食材だし。
以前は一度、DPが枯渇し掛けたこともあったが、魔境の森を広げ、幽霊船ダンジョンを得て、そしてローガルド帝国も得たことで、今では相当な余裕があるのだ。
一つ問題があるとすれば、我が家の食のレベルが自慢出来るくらいに高いせいで、外食する気には一切ならないっていう点だな。
レイラという超絶万能なメイド……あー、いや、よ、嫁さんがいるから、料理の美味さも最強だし。
……なんか、レイラを嫁さんと考えるの、まだちょっと気恥ずかしさがあるんだよな。
まあ、慣れていないから、なんだろうが。
「んふふー、ねんまつは、いいネ~! クリスマスがあって、しょーがつもあって! たのしみいっぱい、はらひらら~!」
「……はらひらら~」
ツリーの飾りつけのキラキラを持ちながら、くるくると回って踊るシィとエン。可愛い。
子供って、ああいうキラキラ、ホントに好きだよな。
特に、我が家の幼女組の中で、最も欲望に忠実というか、とにかく正直であるシィは、キラキラが大好きである。
何が楽しいのかわからんが、ずっと眺めたり、投げたり、転がしたり、もう夢中だ。
そんな彼女にとって、クリスマスの飾りというキラキラの塊は、ホントに好きの対象であるらしく、二十四時間ずーっとニコニコである。
限界突破ニコニコである。
「あ! 私もはらひらら~ってするー!」
「おいでー! レイスのこたちも、はらひらら~!」
「……はらひらら~」
「はらひららー!」
そんな幼女らに、大人組は笑い、そしてこの空気を楽しみながら、準備を進めていくのだ。
――さあ、クリスマスがやって来る。
今日もう一本行くやで。