奥地へ《3》
とりあえず一息吐いた俺達は、今日の探索はここまでにし、解散。
リルは森に帰り、俺とエンは風呂に入ってゆっくり疲れを癒した後、レフィに今日の出来事を報告する。
「ふむ……逃げ帰ってはきたようじゃが、怪我せんで帰って来れたようで、何よりじゃ」
「あぁ。索敵範囲も攻撃範囲も威力もヤバいヤツに見つかってな。久しぶりに、死ぬかと思ったわ」
「……ビーム放ってきた、ビーム。かっこよかった」
「ビームは確かにかっこよかったな。当たったら俺、蒸発してたかもしらんが」
「ふむ、何に遭遇したんじゃ?」
「ゴーレムだ。西エリアの奥地に、何か遺跡っぽいのがあってな。レフィ、何か知らないか?」
「……遺跡?」
「あぁ、遺跡だ。年月が経って風化し過ぎてて、もう全然何が何だかわからんような状態だったが」
マジで、ほぼ自然だったからな。
辛うじて、人工物っぽい形を残していたが。
すると彼女は、顎に手をやり、考え始める。
「……あの森に、そのようなものがあるとは知らなんだ。儂が知っておるのは、魔境の森が、儂らの生まれる遥か昔からずっと魔境の森である、ということだけじゃの。……以前に話したことがあると思うが、『神が没した地』、という話は聞いたことがあるがの」
そう言えば、大分前にそんな話をしたな。
魔境の森は、神が没した地である、と。
「まあ、確かに考えてみると、少々気になる点もある。そのような、儂らとは特に関係のない、何の変哲もない森の名が、何故昔から儂らに伝わっておるのか、という点じゃ」
「……そうだな。確かにお前らからすれば、魔境の森の魔物も『他よりちょっと強い雑魚』で済むもんな」
まごうことなき、最強種族。
そしてウチの嫁さんは、その中でさらに最強。
んん、いいね。
「カカ、ま、ぺーぺーの龍じゃと多少苦労することもあるかもしれぬが、古代龍ならば、何も問題ないのう。……となるとやはり、何故ここの名が龍族において広まっておったのか、気になるところじゃの。現に儂も、何となくこの場所のことを知っておったから、最初ここに来た訳じゃし」
なるほど。
たまたま、なのかもしれないが、確かに気になる点だ。
龍族には何か、伝わっていたのだろうか?
「……よっしゃあ、楽しくなってきた。ここからだな。しばらくは俺、西エリアを探索することにするわ」
「……ん。いっぱい冒険してくる」
「うむ、頑張ってこい。ただし、無事に帰って来るんじゃぞ」
◇ ◇ ◇
それから俺達は、数日を掛けて、阿修羅ゴーレムに関する情報収集を行っていった。
まず、俺とのレベル差が大き過ぎるのか、分析スキルは一切通らなかった。
なのでとりあえず、ヤツの攻撃範囲がどこからどこまでかの特定からだ。
これは意外とすぐにわかり、というのも、一定範囲より向こう側に、魔物が一切存在していなかったため、恐らく近付いた者はヤツが全部ぶっ殺し続けていたのだろう。
それで、魔物どもも学習し、一定範囲から向こう側にはいかなくなったのだと思われる。
……それの意味するところは、つまり西エリアの魔物どもであってさえも、ヤツは避ける、ということになる訳だが。
そして、空側がヤバい、というのもわかった。
開けているせいか、視界が広いらしく、地上部よりも明らかに遠くまで見えていたのだ。
一つ幸いだったのは、ヤツがやはり、ゴーレムである、という点だ。
つまり、通常の生命体ではないため、設定された以上のことはしない、ということである。
ヤツの攻撃範囲から一歩でも外に出れば、それ以上は追撃して来ないし、というかあの定位置からはほとんど動かない。
まあその分、攻撃性能がヤバいんすけどね。
一度、DPカタログで『イービルアイ』と、今まで使ったことのなかった小型戦闘用ゴーレム『ハウンド』という、四足歩行型のヤツを数十出し、多方向から一斉に突撃させたのだが……一つ残らずビームで破壊された。
乱射されたビームの幾本かが俺達のところまで飛んで来て、流れ弾食らいそうになって冷や汗掻いた。
それだけ派手にやってたせいで、魔物どもが寄ってきて、慌てて逃げ出すハメになったわ。マジで怖かった。
あと、ゴリッゴリにDPが無駄になって、ちょっと泣きそうである。
ケチって結果が出なかったら意味がないので、相当量DPをつぎ込んで数を用意し、実際ヤツの攻撃性能を見ることは出来たのだが、まさか一つも戻って来ないとは。
多分これ、今月の俺は、もうDP使えんな……。
あ、我が家の大人組が、ダンジョンに関連する機能が一部使える関係で、現在DPはお小遣い制であり、使える量が決まっている。
勿論、俺が自由に使っていいDPは他の大人組とは比べものにならないくらいの量があるし、本当に必要な際はどれだけ使っても許されるのだが……以前まあ結構な無駄遣いをした時に怒られ、こういうことになった。
お小遣い制の魔王。
甚だ威厳が乏しいな。
――散っていったDPよ、お前らを無駄にはせんぞ。
その一斉突撃で、わかったことがある。
俺のゴーレム軍団を破壊した順番だが、近付いた者から順に、ではなかった。
見えたものから順に、である。
木々や草で隠れ、見えなかったものは、たとえ近くにあっても攻撃が後回しにされていたのだ。
つまりヤツは、目視で敵を捕捉している可能性が高い、ということである。
「……よし、決めた。坑道戦術だな」
「クゥ?」
『……穴掘り?』
「あぁ。ヤツの足元まで穴掘って、ありったけ爆弾と罠用意して、落としてやろう」
本来ならば、一人と一匹と一振りでは相当に時間が掛かるであろう工事だが、俺にはダンジョンの力がある。
数日の探索で、この辺りもすでに俺のダンジョン領域として組み込んであるので、改変は自由自在である。
ふははは、ついに俺は、西エリアへの進出を果たしたぞ!
……あ、あとで嫁さんらに、DPの使い道、無駄遣いした訳じゃないと、しっかり説明しないとな。
最近アイツら、なんか絆が深まったというか、すごい結託してるから、俺の肩身の狭さが倍増してるのよ。




