閑話:夫婦というもの
良い夫婦の日、なるものがあると知ったので。
あ、ガチの短い閑話です。
――ある日のこと。
その日、珍しくキッチンには、俺とレフィだけが立っていた。
別に何があった訳でもないのだが……何となくのタイミングで、そういうことになっていた。
「レフィ」
「うむ」
俺の一言に、レフィはポンとこちらが求めていた調味料を渡してくる。
「ユキ」
「おう」
彼女が渡してきたボウルを受け取り、フライパンに入れて焼く。
「レフィ」
「任せよ」
手が離せない俺の横で、レフィが必要な調理をしていく。
「ユキ」
「うい」
俺の手元付近に置いてあった調味料の一つを、彼女に渡す。
それから互いに、無言で料理を続けていき――と、そこで俺達は、ネル、リュー、レイラの三人が、揃ってキッチンの出入り口の向こうから、こちらを見ていることに気が付く。
「……? 何やってんだ、お前ら?」
「何じゃお主ら? まだ料理は出来ておらんぞ」
「いや……真の夫婦とは何たるかを、見せてもらったかなって。……うん、僕らも良いお嫁さんになるために、頑張らなきゃだね!」
「そうっすね、ウチらが目指すべき領域を、しっかりと見せてもらった思いっす……それとなく互いを見ているから、何を要求しているのかが、一言でわかるんすね」
「なかなか、難しそうですねー……少し確認すれば同じことは出来るかもしれませんが、あの二人、完全なツーカーで反応してましたからねー。あの領域に至るには、もっとユキさんを観察しないと、ですかー」
「レフィの方を観察するのも、大事だと思うよ! レフィはおにーさんの求めるものを、あれだけしっかりわかってる訳だからね。きっとそこに、おにーさんの要求を理解するヒントもあると思う」
「あとで、嫁会議で情報共有してもらわないと、っすね!」
「……お前ら、気が散るから、どっか行ってろ」
「そうじゃそうじゃ、あまり見ておると、お主らの分だけ別で用意して、たんまり唐辛子盛るぞ」
「あ、僕、辛いの結構好きだから、それでもいいよ」
「え!? い、いや、ウチは辛いの得意じゃないんで、勘弁してほしいっす。レ、レイラ、どうにかならないっすか?」
「大丈夫ですよー、そうなった場合は、私がしっかり味を中和しますからー」
「レイラが手を加えるのは反則じゃ!」
するとレフィ以外の嫁さんらは、楽しそうに笑って、ワイワイと話しながら去って行った。
「…………」
「…………」
俺とレフィは、一度顔を見合わせ、だが気恥ずかしさからすぐに顔を逸らしたのだった。
超やり辛くなったじゃねぇか、アイツらめ……。




