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魔王になったので、ダンジョン造って人外娘とほのぼのする  作者: 流優
ダンジョンの日常 vier!!!!
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成長と、持つもの


 夜。


 飯も食い終わり、何もない時間。


「ふぅ、お風呂出たよー! 二人はまだ入ってるけど」


 風呂から出てきたイルーナが皆にそう声をかけ、そろそろ風呂に入ろうとしていたらしいネルとリューが返事をし、二人が部屋から出て行った。


「シィとエンはまた長風呂か?」


 我が家の幼女組は三人一緒に入ることが多いのだが、出てくる時はまばらだ。


 特に、幼女組だとシィが風呂好きだからな。


 我が家の長風呂代表はネルとシィなのだが、この二人は、一時間くらいずーっと入ってることもままあるのだ。


 エンもなかなか長風呂だが、まあ二人程ではないだろうな。


「うん、シィはいつもみたいにでろーんってなってて、エンちゃんはなんか、お風呂で試したい魔法があるとか。もー、あんなに入ってたら、わたし、ぽやぽやになっちゃうよ!」


「ハハ、そうだな。俺も多分のぼせるわ。――と、ほら、イルーナ。ちゃんと髪乾かさないと、傷んじゃうぞ」


「んー、おにいちゃん、髪やってー」


「……しょうがないな」


 俺がそう言うと、彼女は嬉しそうに笑い、真・玉座の間にある方の洗面所からドライヤーを持ってくる。


 そして、俺にそれを渡すと、ボフンと前に座った。


 俺はドライヤーを点け、彼女の綺麗な金髪に手を触れ、乾かし始める。


「……それにしてもイルーナ、お前、やっぱり大きくなったな」


「えー? なあに、急にー?」


 機嫌良さそうな様子で、そう聞いてくるイルーナ。


「いや……頭の位置が、やっぱり昔と変わったなって思ってさ」


 こうして改めて見ると、よくわかる。


 背が伸びた。

 まだまだ子供だが、昔より、確実に身体が大きくなっている。


 あれだけ小さく、ただ幼女でしかなかったイルーナだが、少しずつ少女へと成長しているのが感じられるのだ。


 こうやって甘えてくることはあっても、実は最近は、抱き着いてきたりすることが減っていたのだが……身体の成長に合わせて、精神的にもやはり、成長して来ているのだろう。


「えへへぇ、わたしも、おにいちゃん達に子供が出来て、しっかりお姉さんになる訳だからね! だから、甘えてばかりもいられないの!」


「今のこれはいいのか?」


「たまにならいーの!」


 そんなことを言うイルーナに、俺は笑う。


「俺と嫁さんらの子供が生まれたら、みんなのお姉さんとして、頼むぜ、イルーナ」


「うん! あのね、読んであげたい絵本がいっぱいあってね、一緒にしてあげたい遊びもいっぱいあるの。シィとエンもね、張り切ってるんだよ! レイちゃん、ルイちゃん、ローちゃんも。楽しいことと、嬉しいことを、いっぱいいっぱい教えてあげるんだって」


 ニコニコの笑顔で、やってあげたいこと、教えてあげたいことを語っていくイルーナ。


 かくれんぼや鬼ごっこ、おままごとや探検。

 文字やお絵描き、少し難しいお勉強。

 バーベキューに、お花見にお月見。


 それから、四季折々で出来る遊びや、四季折々の美味しいもの。


「だから、元気に生まれてきてくれるといいね、おにいちゃん!」


「……あぁ、そうだな」


 ただ、それだけしか返すことが出来なかった俺は、ポンポンとイルーナの頭を撫でる。


「さ、終わったぞ」


「うん、ありがと、おにいちゃん!」


 そう言って彼女は、とてとてと歩いてドライヤーをしまいに行く。


 一人になった俺は、近くにあった玉座に、腰掛ける。


 ――ありがとう、と言うべきは、俺なのだ。


 俺を、情けなくとも『親』にしてくれたのは、この子なのだ。


 この子のおかげで、俺は、多少なりとも自分に自信を持てるようになった。


 レフィ達と、一つ先に進むことが出来たのである。


「…………」


「――どうした、ユキ?」


 すると、レフィが俺に声をかけてくる。


「いや……俺が持っているものを、改めて確認しただけだ」


「……ふむ」


 よじよじと俺の身体に上り、膝上に座ってくるレフィ。

 

 そして、背中を俺に預けてくる。


「ユキ」


「おう」


「お主の持つものは、ちゃんと儂らも持つからの」


 何も言っていないのにもかかわらず。


 俺の心の内を正確に理解し、そう言ってくるレフィ。


「――あぁ」


 本当に、ここは。


 今章終了。

 次回は、久しぶりの魔境の森回。


 12巻発売しました。よろしくね!

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こちらもどうか、よろしくお願いいたします……! 『元勇者はのんびり過ごしたい~地球の路地裏で魔王拾った~』



書籍化してます。イラストがマジで素晴らし過ぎる……。 3rwj1gsn1yx0h0md2kerjmuxbkxz_17kt_eg_le_48te.jpg
― 新着の感想 ―
[一言] イルーナは十年以内の お嫁さんへのクラスチェンジを狙っています。 問題無いっか! (笑) シィとエンも ・・・ ?
[良い点] 「んー、おにいちゃん、髪やってー」 く、不意打ちはヤメテ心が持たぬ イルーナマジ天使!
[良い点] 心がかよっているシーンみて癒やされる〜 [一言] まったり最高!
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