閑話:ハロウィンお化け屋敷
短めだけど閑話だから許して。
すぐに次、投稿するんで……。
その異様な入り口を前に、ネルとリューは、固まっていた。
もう見るからに怪しげで、恐ろし気な、真っ暗な入り口。
「……あの、おにーさん。これは?」
「ご主人……これは?」
「違う。今の俺はおにーさんやご主人ではない。怪人フランケンシュタイン魔王だ!」
「怪人フランケンシュタイン魔王さん。僕は、何でもかんでも魔王って付けるのは、どうかと思うんだけれど」
「すごく語呂が悪いっすね。怪人フランケンシュタイン魔王」
「語呂の悪さなど関係ない。何故なら俺は、怪人フランケンシュタイン魔王なのだから。……やっぱり面倒だから怪人でいいや。フランケンさんでもいいぞ」
「そうですか、怪人さん。それで、これは何ですか?」
「何すか、これは」
「はい、えー、お化け屋敷です」
「……お化け屋敷」
「うーん、そう来たっすか」
そう、今年のハロウィンはお化け屋敷なのだ。
レイス娘達の本領発揮である!
「僕、我が家でやるお祭りごとの中で、唯一今日のだけは、身構えちゃうんだけど……」
「ネルは反応が可愛くて、レイスの子達に気に入られてるっすからねぇ」
そうね。
レイス娘達が一番好きなのは、ネルだろうね。
脅かし甲斐があるから。
「フフフ、感謝したまえよ? 本当なら一人ずつ中に入ってもらうつもりだったが、そうするとネル――いや、猫娘ネルが動けなくなりそうだったからな! 魔女リューとペアにすることにしたのだ……」
「何でよりによってペアがリューなのさ。レフィ……もダメだね。レイラをペアにしてくれたら、とっても心強いのに」
「おっと、言うっすね、ネル。何ならウチ、一人で先に入ってもいいっすけど」
「あ、ウソウソごめん冗談だから一緒にいてほしい、いやホントにお願いリュー一人にしないで一緒にいて」
「うわ、わ、わかったっす、わかったっすから。相変わらず、ネルは怖がりっすねぇ」
縋りついてくるネルに、若干引き気味で苦笑を溢すリュー。
「だってレイスの子達、脅かすことに関しては、ガチなんだもん! そりゃ怖いよ!」
「……まあ確かに、あの子達のビックリさせ能力は、ホントにすごいっすからね。しかもそこに、ご主人が手を貸してるとなると……うーん、覚悟が必要になりそうっすねぇ」
「……何で、そんな怖いことを、入る前の今言うのさ」
「いや、ネルが怖がってるところ見るの、ウチも好きなんで」
「う、裏切り者ぉ……!」
「フフフ、いいんすか、そんなこと言って? 今のネルは、ウチの胸三寸で、どうにでもなるんすよ?」
「……ず、随分強気だけど、リューこそいいのかな? 君だって怖いんでしょ? 一人で、レイスの子達とおにーさんが作ったお化け屋敷、入っていけるのかな?」
「ウチもまあ、怖いのは怖いっすけど、でもお化けの正体が何なのかっていうのはわかってるっすからね! まあネルよりはマシっすよ!」
「クッ……否定出来ないのが悔しい……!」
そんなことを話す二人に、俺は、ニッコリと笑みを浮かべる。
「何すか、怪人さん。その顔は」
「……随分と、邪悪な顔してるね」
「二人とも、俺が遊びで心掛けていることは?」
「……遊びは全力で」
「……全力でやるからこそ、楽しめる」
「よくわかってるじゃないか」
すると二人は、互いに顔を見合わせる。
「……ネル。調子に乗って、悪かったっす。だから、その、一緒にいてほしいっす」
「……うん、気にしないで。僕の方こそ、お願い。離れないで、隣にいて」
「……ここからウチらは、一蓮托生っすよ」
お化け屋敷の中に入る前の段階から、ひっしとくっ付き合い、腕を組む二人。お前らホント可愛いな。
そして、ウチの嫁さんらはおっかなびっくりの様子で、お化け屋敷の中へと入っていき――途端に中から聞こえる、綺麗な悲鳴。
それは留まることなく、断続的に聞こえ続け、我が魔王城に木魂していく。
うむ、楽しんでくれているようで、何よりだ。
そして俺達は、我が家の幽霊達のための祝祭を愉快に過ごすのだ……。
――ハッピーハロウィン!