リューとの時間
あと二話は嫁さんとの時間にしようか。
「にへへぇ」
にこにこと笑みを浮かべ、わかりやすく尻尾を揺らしているリュー。
コイツの尻尾はよく動くので、感情がわかりやすい。
ご機嫌な時はすぐにわかるし、何かやらかした時もすぐわかる。
リュー自身は、感情が丸わかりになるのがちょっと恥ずかしいらしく、「くっ、この尻尾……!」と葛藤している様子を数回見たことがあるが、あなたの尻尾は本当にとても良いものなので、そのままで良いです。そのままでいてください。
「おう、ご機嫌だな、リュー」
「そりゃあ、ご機嫌にもなるっすよ! 今日は、ウチがご主人を独占しても良い、ご主人独占デーっすからね。えー、本日を記念して、今後今日のことを『ご主人独占記念日』と呼んでいきたいと思うっす」
「ふむ、いいだろう。旦那として、甘んじて独占されようではないか。さあ、リューよ。旦那にしてほしいことを言ってみたまえ」
「それじゃあ、遠慮なく! えっとえっと……うーん……」
「うーん?」
「……よく考えてみると、日頃からご主人にはいっぱい色々してもらってますし、改めて何かしてほしいこと、って考えてみても、特に思いつかないっすねぇ」
俺を見ながら首を捻り、そう言うリュー。何やねん。
「何でもいいぞ。尻尾を触ってほしいとか、耳を触ってほしいとか、両方同時に触ってほしいとか」
「ご主人、それらはウチの要望じゃなく、ご主人の要望っす」
「尻尾と耳を触らせてください」
「おっと、正直に来たっすね」
苦笑を溢すリュー。
「しょうがないっすねぇ。ウチはご主人のデキたお嫁さんなので、甘んじてその要望を受けいれてあげるっすよ。……というか、大分今更っすね。いっつも別に、許可取らずに普通に触ってくるじゃないっすか」
「そう言えばそうだった。お前の耳と尻尾はすでに俺のものだった。自分のものに許可はいらんかったな。妻のものは俺のもの、俺のものは俺のもの! フハハハ、我は強欲の権化たる魔王! さあ、我が妻よ。観念して、我にそれらを差し出すのだ」
「はいはい。どうぞ、妻の耳と尻尾っすよ」
そう言ってリューは、胡坐で座る俺の膝の上に座る。
俺に、背中を預ける格好である。
背丈の関係から、ちょうど口元に彼女の耳がくる感じだ。
「うむ! ――うむ、素晴らしい! まずこの尻尾! フサフサで、ツヤツヤで、最高の触り心地である。よく手入れされていて、美しい。枕にしたい。そして、耳! コリコリで、サラサラで、こちらも最高の触り心地である。……味も良い!」
良い位置にあるので、あむ、と口で甘噛みすると、ビクッと身体を跳ねさせるリュー。
「ひゃぁっ! ちょ、ちょっとご主人、あむってするのはダメっす! こ、こう、ビクッてしちゃうっすから」
「我慢したまえ、我が妻よ! これは俺のものなのだからな!」
「も、もー……全く、ご主人がその謎の理屈を言い続けたせいで、もう我が家じゃそれ、当たり前のようにまかり通るようになっちゃってるっすからね。特にネルとか。その理屈を通して、あの子もウチの耳と尻尾、いっぱい触ってくるんすよ。レフィのもレイラのもよく触ってるし」
うん、その光景は俺も見るな。
「アイツは、このダンジョンにおいて、俺の次に魔王に相応しい人材だからなぁ。こう、自由さ具合が。魔王に相応しい勇者とは何ぞや、って感じだが」
実は我がダンジョンにおいて、自由人筆頭はネルである。
いや、勿論アイツはかなりしっかりしているし、非常に頼りになる嫁さんではあるのだが、かなり欲望に忠実だったりもするのだ。
本人曰く、「僕はみんなといる時間が、ちょっと少ないから! だから、家にいる間はいっぱいスキンシップを取らないとね!」とのこと。
まあ、アイツに甘えたがりの気質があることは間違いない。
言葉通り、家にいられる時間が短いから、ちょっと寂しいのかもな。
「フフ……ネルは、良くも悪くも、ご主人にすごく影響されてる子っすからねぇ。……じゃあ、ウチもネルを見習って、欲望に忠実にいきたいと思うっす! 具体的にはご主人、後ろからギュってしてください!」
両手を万歳させ、抱き着かれやすい姿勢になるリュー。
「ふむ、いいだろう! 耳と尻尾を差し出したその献身に応えるため、我が妻が求めるだけギュっとしてやろうではないか」
そう言って俺は、彼女を後ろから抱き締める。
柔らかく、温かいリューの身体。
大好きな嫁さんの匂い。
「お前の身体、あったかいなー」
「そうっすか? ……そうかもしれないっすねぇ。ウチ、みんなよりも体毛が多いっすから。でもウチ、冷え性なんすよ。手先がすぐ冷たくなっちゃって」
「お? あ、ホントだ。冷たいな。……よし、ならば、あなたの旦那であるこの私が、めいっぱい温めてあげるとしましょう」
俺は、彼女の手を取る。
手のひらを重ね、キュッと指を絡めると、リューもまた握り返してくる。
「えへへ、ありがとうっす。……やっぱり今日は良い日っす。とってもとっても、良い日っす」
「お前が求めるなら、明日も明後日も、ずっと良い日にしてやるさ」
リューは、俺の肩に後頭部を預け、下からこちらを見上げる。
二人、顔を見合わせ、笑った。
新作もぉ……どうか、よろしくお願いいたします(小声)。
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