表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王になったので、ダンジョン造って人外娘とほのぼのする  作者: 流優
ダンジョンの日常 vier!!!!
467/613

レイラとの時間

 初心に帰って、しばらく一話完結型で進めていこうかな。


「…………」


「…………」


 隣から聞こえる、ページをめくる音。

 俺もまた、読んでいる本の、ページを進める。


 肩をくっ付け、俺の隣に座っているのは――レイラ。


 お互い、何も言うことはない。

 ただ、手元の本を読むだけである。


 レイラと二人だけになる時は、こういうことが多い。


 彼女との時間は、それでいいのだと、俺は思っている。


 レフィとは、くだらないことでギャアギャア言い合って。

 リューとは、茶番で一緒にふざけ合って。

 ネルとは、リルに乗って森で狩りをして。


 そして、レイラとの時間は、ただ共にいて、静かに過ごすのである。


 それが、俺達にとっては、最も心地の良い過ごし方だと思うのだ。


 ちなみに、俺が読んでいるのは、こちらの世界の童話集のような本である。


 内容としては、幾つかの神話が物語形式で載っている本であり、ネルが仕事から帰ってくる際に「おにーさん、いいのあったよー! これならウチの子らも読むだろうし」とお土産として買ってきてくれたものだ。


 童話集なので読みやすく、普通に面白い。

 大人になってから読む絵本とか、意外と面白かったりするが、そんな感じだ。


 隣のレイラが読んでいるのは、もっと難しい、俺にはよくわからん技術書的なものだ。

 そっちもネルが買ってきたくれたようだが、レイラの方は、結構な頻度で本を買ってきてもらっているようだ。


 俺も外出した時に買ってきたりすることはあるが、最新の魔術研究などのことは、俺よりネルの方が詳しいので、レイラが所望するものはネルの方がよくわかるのである。


 あと、レイラと同じくらいに我が家で本を読むのは、ネルだけだからな。

 なので話が合うらしく、二人で著者やら何やらの雑談をしている様子を何度か見ている。


 本棚もここには置かれているのだが、ほぼ全てがレイラとネルの蔵書で、使用者も二人が主である。


 あと、イルーナもそこの本をよく読むな。

 エンは時折で、シィは全くである。


 シィに本を近付けると、ニコニコと笑顔で後ろに下がり、逃げていくのだ。


 シィよ、勉強も、もうちょっと頑張ろう。な。 


 つまり、我が家で賢い組の三人が、やっぱり本もよく読むという訳だ。


 エンも賢い組ではあるのだが……あの子はあまり、勉強には興味がないっぽいからな。


 いや、興味がないと言うと、語弊があるか。

 イルーナ達と一緒にレイラ塾の授業を受けはするし、シィみたく拒否感を示したりしないし、実験とかやると普通に興味津々だったりはするが、彼女が熱中するのは、そういうのよりも将棋とかチェスとかの、頭脳を働かせるものなのだ。


 やっぱり、刀だからな。

 戦術や戦略とか、そういう関連のものに興味があるようだ。

 

「……本か」


「? どうしましたかー?」


「いや……城の方に、図書室でも作ってみようかと思ってな。けど、図書室を作るっていう程、ウチに本ないなって」


「図書室、ですかー。あると嬉しいですが、ちょっと高いですからねー、本は」


「そうなんだよなぁ」


 この世界は、意外と製本技術が進んでいる。


 が、前世の現代には程遠いので、やはり相応に本は高いのだ。


 そして俺は、金を持っていない。

 稼ごうと思えば簡単に稼げるし、ⅮPで出してもいいが……図書室を作って埋めるだけ、となると、相当掛かると思うのだ。


 本の少ない図書室なんて虚し過ぎるだけだしなぁ。


「ですが、たくさんの本が置いてあって、好きなだけ読めるなら……とても素敵ですねー」


「……そうか」


 嬉しそうに微笑み、そう言うレイラさん。


 ……君がそういう顔するなら、本気で考えてみますかね。


「……そう言えば、ローガルド帝国の城になら多分、図書室とかもあるよな。俺、皇帝だし、本パクッてきてもいいよな!」


 前皇帝シェンドラならぬシェンの国だ。

 研究書とか、外では見られない禁断の書とか、そういうものも置いてあるんじゃなかろうか。


 そして、こっちの図書室に『禁書』の棚とか作って、幼女達に「大きくなるまで読んじゃダメ」と言うのだ。


 彼女らが大きくなった時に読んで、「これは……伝説の書!」とか言ってほしい。

 ロマンである。


 皇帝としての特権を、こういう時に使わないとな!


「んー、ですがユキさん、国の本は国の財産なんですよー? あなたは皇帝になったかもしれませんが、個人の財産と国の財産は違うものですからー。あまり無茶を言ってはダメですよー」


「……そうか。そうだな」


 超正論に窘められ、何も言えなくなってしまうと、彼女はポンと俺の膝に手を置き、ニコッと笑う。


「フフ、読みたいものがあったら、私がユキさんにお願いして、ローガルド帝国の方に連れて行ってもらいますからー。だから、大丈夫ですよー」


「……そうか」


 それからまた、二人で無言で本を読む時間が続く。


「――そうだ、レイラ。これ、読んでくれよ」


「私が、ですかー?」


「あぁ。レイラの綺麗な声で聴きたい。童話だしな、音読してもらうにはピッタリだ」


「わかりました、では――」


 そうして、レイラは俺が読んでいた童話集の、読み聞かせを始める。


 スッと頭に入ってくる、聴き心地の良い、リラックスの出来る声。


 並んで、触れたレイラの肌から感じる体温。


 心から安心が出来る、あまりにも心地の良い環境に、俺の目蓋は少しずつ、少しずつ閉じていき――。




 読み聞かせをしていたレイラは、トン、と身体にもたれかかる重みで、その時気が付く。


 いつの間にかユキは、目を閉じ、寝息を立てていた。


 その穏やかであどけない寝顔に、レイラはクスリと笑みを浮かべ、ゆっくりと彼の頭を自身の膝の上に横たえる。


「――おやすみなさい、私の旦那様」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらもどうか、よろしくお願いいたします……! 『元勇者はのんびり過ごしたい~地球の路地裏で魔王拾った~』



書籍化してます。イラストがマジで素晴らし過ぎる……。 3rwj1gsn1yx0h0md2kerjmuxbkxz_17kt_eg_le_48te.jpg
― 新着の感想 ―
[一言] ぐぁぁぁぁぁああ!! くっ…俺の好みどストライクな感じの話やないか! (  '-' )ノ)`-' )ぺし
[良い点] てぇてぇなぁ。 [一言] パクってこずとも、司書なり本好き本オタクな新キャラ(おさげメガネっ子)作って、写本仕事させるとかね。 給金はべらぼうに良いけど蔵書数多すぎて(@_@)フヒー的なw…
[良い点] おおぉ!レイラさんとは静か穏やかな癒しですね!それも中々素敵です〜 ちなみにユキさんが金足りないは有り得ない感じ、稼げる手段を自覚していないだけだと思う。 そして「くだらないことでギャアギ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ