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魔王になったので、ダンジョン造って人外娘とほのぼのする  作者: 流優
ダンジョンの日常 vier!!!!
460/613

リルの変化《1》

 原稿終了!

 遅れてすまんな!


「んふ~」


「……何ですか、リュー」


 ニコニコと嬉しそうな表情を浮かべ、だが何も言いはしない同僚に、レイラは気恥ずかしさから顔を背けつつ、そう問い掛ける。


「別に、何でもないっすよ~。ただ、なんか嬉しいなーって。一人で何となく嬉しくなってるだけっす」


「……そうですかー。あなたの気分が良いようで、何よりですー」


「いやぁ、こんなに晴れやかなのは、いつぶりっすかね! 昨日、洗濯物が綺麗に畳めて、自分の上達を感じた時ぶりっすか!」


「結構最近な上に、ささやかですねー」


「チッチッ、甘いっすよ、レイラ! 最近なのは確かっすけど、ウチにとっては、割と真面目に嬉しかったんすから!」


「そうですかー。その調子で家事が上手くなってくれると、私も友人……いえ、その、家族として嬉しいですよー」


 言葉を詰まらせ、若干照れながらそう言うレイラに、耐えられなくなったリューは、思わず羊角の少女に抱き着く。


「~~! もー、何でそんな可愛いんすか、レイラは! ネルじゃないっすけど、そんなのもう、ウチだって抱き付きたくなるっすよ!」


「ちょ、ちょっと、暑いですよ、リュー」


「今ウチ、感情が迸っちゃったっすから! 今のウチは、誰にも止められないっすよ!」


「もう、ユキさんじゃないんですからー」


「ウチらはみんな、大なり小なりご主人には影響を受けてるっすからね!」


 そんな冗談を一通り言い合った後、ふとリューは表情を変え、どことなく感じ入った様子で口を開く。


「でも、レイラ……ウチ、本当に嬉しくて。だから……良かったっすね、レイラ」


 滲む涙を拭いながら、優しげに笑うリューに、レイラはグッと胸が熱くなる。


 ここずっと、胸が熱くなりっぱなしだ。

 いつから自分は、こんな感情的になってしまったのか。


 思わず、レイラはリューの両手を取る。


「……リュー。私は、可愛げのない女ですー。ここに来るまで、知識の探求が第一で、他者を思いやるということを知らなかった、どうしようもない女ですー。それでも……こうして、あなた達と共にいられるのが、幸せでー……」


 羊角の少女と獣耳の少女は、二人とも目尻に涙を溜めながら、見詰め合う。


「……改めて。これからも、よろしくお願いしますねー、リュー」


「はいっす!」


 ――と、話が一段落したところで、レイラはふと、フリフリと嬉しそうに揺れるリューの尻尾と、ピョンと動く耳に視線を向ける。


「……そう言えば、家族である以上は、リューのその耳と尻尾は、私のものという認識でいいんですよねー?」


「わひゃぁっ、な、何すか、急に!?」


 突然、スッと撫でるように尻尾を触ってくるレイラに、リューは驚いて身体を逃がす。


「この家では、家族の身体部位は、他の家族のものでもあるという家訓があるじゃないですかー。だからこれも、私のものとして、これからいっぱい触らせてもらおうかな、とー」


「うひっ、ちょ、ちょっと……! くっ、れ、レイラがまさか、こういう手で出て来るとは……強くなったっすね、レイラ……!」


「うふふ、私も、あなたと同じだけ、この家にいますからねー」


 二人のじゃれ合いは、まだまだ続く――。



   *   *   *



 ニヤニヤと鬱陶しい笑みを浮かべ、しきりに俺の顔を覗き込もうとするレフィから、顔を背けながら歩く。


「どうした、ユキ? お主の愛しい愛しい妻が、こうして顔を見ようとしておるのに。何故逃げる? ほれ、儂に、お主の綺麗な目を見せてくれ」


「愛しい愛しい妻だからさ。愛しいからこそ、緊張して、正面から顔を見られないんだ。妻ならわかってくれるだろ?」


「何じゃ、そんなことか。今更そのようなこと、気にせんで良いんじゃぞ? 儂はお主の全てを愛しておるからの。お主のダメなところも、照れ屋なところも、全て肯定してやろう」


「うるせぇ! わかりやすくニヤニヤしやがって……! 言葉を飾らずに言ってやろう、鬱陶しいわアホ!」


「おぉ、酷いことを言う旦那じゃ。しかし、これも惚れた弱みか。どんな暴言を吐かれようと、儂はお主を嫌うことは出来そうにない……この立場の差が、家庭内暴力を生み出す元になるんじゃろうな……」


「何言ってんだお前は!」


 およよ、とわざとらしく泣き真似をするレフィに、秒でツッコむ俺。


 お前に対する暴力とか、この世で最も意味のないことの一つだろう。


 というか、コイツなら普通に逆襲してくるだろうし。

 そして、最終的にボコボコにされるのは俺なのである。


「わかっておらぬな。たとえ、身体には何もなくとも、心には『暴力を受けた』という傷が残るもの。そこを間違えてはならんぞ」


「お前精神ゴリラだろ」


「……ふむ。儂はごりらというものは知らぬが、どういう意図の言葉かは伝わってきたの」


「いだだだだっ、ま、待て! ゴリラというのは、繊細で花のよう、という意味なんだ! レフィさん、繊細で花のようで、可憐だなーって思いまして!」


「そうか。で、ごりらの本当の意味は?」


「ゴリラは筋肉ムキムキでマッチョの動物だ」


「うむ、正直によく言うたの。そのことに免じて、この腕を破壊するだけで許してやろう」


「ぐぎぎぎっ、い、いいだろう、やるがいいさ! 不当な暴力には屈せん、我らは信念を持って、圧政者と戦うのみよ!」


「誰が圧政者じゃ、誰が」


 と、レフィにアームロックを掛けられていると、目的地にたどり着く。


 それは、リルの寝床だ。


「ふぅ、いてて……よう、リル。と、リル奥さん。おはようございます」


「「クゥ」」


 待ってくれていたらしい二匹のフェンリルが、挨拶を返すように、一声鳴く。


 うむ、モフモフとサラサラで、最強の空間だな。


 あ、サラサラは、リル奥さんの毛並みだ。

 彼女はモフモフというより、サラサラの毛並みなのだ。


 フェンリルの個体差だな。

 結構違っていて、一目で見分けがつくので、面白い。


 リル奥さんの方が身体が小さいのだが、リルが『身体変化』のスキルで奥さんと同じ大きさになっても、見分けるのは簡単だろう。


「リル妻、ちょっと前ぶりじゃ。お主は相変わらず、サラサラで良い毛並みじゃのう」


「クゥウ」


「カカ、うむ、儂らは毎日湯を浴びておるからな。お主も入りに来ると良い」


「クゥ?」


「うむ、勿論構わん。女ならば、身綺麗にしたいと思うのは当たり前じゃ。その方が、リルも喜ぶじゃろうしな」


「クゥ」


「気にするな。儂らはまだ知り合うて日が浅いが、お主はリルの妻じゃ。遠慮などするな」


 そう、何やら女の会話を交わし始めるレフィとリル奥さん。


 俺がいない間に、顔合わせをしたとは聞いていたのだが、結構親しげな様子だ。

 互いに、仲良くやろうという意思があるからだろう。


 ――今日は、リルの様子を見に、魔境の森へと出て来ていた。


 どうやら、俺達が出ていた間にリルに変化があったらしいので、それを見に来たのだ。


 レフィが付いて来たのは、リル奥さんに会いに来たようだ。

 お隣さんで、しかも親戚みたいなものなので、時々話に来るつもりだと言っていた。 


 ……どうでもいいが、我が家のお隣さん、人外ばかりだな。


 魔境の森に住む土着の龍族と、狼と。

 今更ながら、すげー環境に住んでいるもんである。俺ら。


「んで……ん、確かに、毛並みが前よりさらに良くなったか? 何かお前に、変化があったって聞いてきたんだが……」


 彼女らの横で、俺は我がペットへと声を掛ける。


 久しぶり――という程でもないが、十数日ぶりのリルは、モフモフの毛並みがもっと輝いていた。

 毎日共にいるのだ、そこを見間違えることはない。


 元々最高のモフモフだったが、今のモフモフはさらに一段階上の、超モフモフって感じだ。


 もう、モフッモフやぞ、モフッモフ。語尾に「~モフ」って付くくらい。

 いや、そんな喋り方されたら、多分ウザくて殴るが。


「クゥ」


 俺の言葉に、リルは「いえ、実は……もっと大きな変化がありまして」と答える。


「へぇ……? 何があったんだ?」


「……クゥ」


 すると、「……見てもらった方が、早いですね」と鳴き――リルは、俺に見せる。


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こちらもどうか、よろしくお願いいたします……! 『元勇者はのんびり過ごしたい~地球の路地裏で魔王拾った~』



書籍化してます。イラストがマジで素晴らし過ぎる……。 3rwj1gsn1yx0h0md2kerjmuxbkxz_17kt_eg_le_48te.jpg
― 新着の感想 ―
[一言] アームド響ならぬアームドリル(アームド・リルであって、アーム…ドリルではありません、念のためw)
[一言] 圧制者…信念…マッチョ…うっ頭が
[良い点] リルが筋肉モリモリマッチョマンの変態になるのかなぁ?(すっとぼけ)
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