表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
435/613

ドワーフの里へ《2》

 精霊王に関してですが、精霊王が来た時にネルもいたのは書籍版の世界線で、WEB版ではその時すでに国に帰っちゃってます。


 実はちょこちょこ、そういう違いがあったり。

 内容の直しの関係でね、「こっちの方が都合が良いか」って思った時は微妙に変えてるのよ。


「――もー、本当に気を付けてほしいっすよ。最初に話を聞いた時、手足から力が抜けるくらい心配したんすから」


 宛がわれた部屋でのんびりしながら、嫁さん達と言葉を交わす。


「悪い悪い。俺、自分に降りかかる危険はさ、大体全部『危機察知』スキルで判断してるんだが、料理の毒性にまで反応する訳じゃないっぽくてよ。俺自身の警戒心が薄れてたってのは、否めない事実だな」


 何度も思っているが、あの『人間至上主義者』の件で、そこは、本当に反省した。

 場合によっては死んでいた可能性もあるのだから。


「確かに、料理に毒が仕込まれてるなんて、普通に暮らしてたらそんな警戒はしないだろうけどね。でも、僕みたいな役人でも何でもない一般兵士でも、毒を見分ける訓練は一通り受けてるし……おにーさんの立場なら、その知識は持っていた方が良いだろうね」


 とりあえず言っておくが、お前は決して一般兵士ではないからな。


 ……そうか、勇者って、そんなことも教わるのか。


「そう言えばおにーさん、『分析』のスキル持ってたよね? それで料理を見たら、毒入りかどうか判別できるんじゃないかな」


「……やったことはないが、確かに出来そうだな」


 なるほど、そういう運用も出来るか。

 料理に使うって発想はなかったな。


「あとは、ネルにご主人も訓練してもらったらいいんじゃないっすか? ご主人、正直ちょっと抜けてるところもあるっすから。スキルを使うのをうっかり忘れて、ってこともありそうですし。ウチも人のことは言えないっすけど」


 リューの言葉を否定出来ないのが悲しいところである。


「ん、いいよ、じゃあ僕が毒の訓練をしてあげる! しっかり知識を教えてあげるよ」


「お、おう。わかった、頼むよ。毒の訓練とか、もう字面が大分嫌な感じだが」


「大丈夫大丈夫、おにーさんエリクサーたんまり持ってるでしょ? だったら、致死性の毒とか口にしてもすぐに治療出来るから、もう誰よりもはっきりと味を覚えられるよ! ドワーフの里や獣人族の里とかにも、多分毒性のある草花はあるだろうから、僕の知ってるのをすぐにでも教えてあげる」


「……お、お手柔らかにお願いします」


「……た、焚き付けたのはウチっすけど、なんかこう、そこはかとない不安があるのは何故なんすかね。ご主人、ネルの訓練でも生き残ってくださいね? いや、ホントに」


 何だかやる気満々な様子のネルを前に、思わずリューと共に戦々恐々としていたその時、ガチャリと部屋の扉が開き。一人で船内の探険に出掛けていたエンが戻ってくる。


 ちなみに、今の各々の服装なのだが、俺とエンはいつも通りの恰好であるものの、ネルはよく着ている軽鎧は身に付けておらず、ラフな短パンとシャツだ。聖剣も身に付けていない。

 リューもまた、いつものメイド服ではなくネルとほぼ同じ恰好である。


 リューは何でも着るが、ネルはスカートだけは滅多に履かない。

 特にダンジョンの外に出る時は、必ずズボン系の動きやすいものだけだ。


 どうも、スカートのような動きにくいものを履くと微妙にソワソワするというか、落ち着かなくなってしまうのだそうだ。

 やはり彼女は、生粋の戦闘員であるということなのだろう。


 あと、リューとレイラのメイド服に関してなのだが、最初は雇った形だったのに対し、今は普通に家族だと思っているので、従者みたいな恰好はしなくて良いと伝えてあるのだが……二人とも「いや、実はこれ、結構気に入っちゃってるんすよ。楽っすし」、「はい、とても楽ですねー」などと言っており、未だダンジョンではメイド服を着続けている。


 ……ま、まあ、お前らがそれでいいんだったら、いいんだがな。


「おかえり、エン――って、どうしたんだ? その肉」


 もきゅもきゅと、ベーコンっぽい肉を美味しそうに食べている彼女に問い掛けると、ゴクリと小さな喉を鳴らして口の中のものを飲み込み、答える。


「……探険してたら、間違って厨房に入っちゃって、そこのおじちゃんがくれた」


「あー、エン、『立ち入り禁止』って書いてあるところは、入っちゃダメだからな? 前回はクルーの人らが好意的だったから、色々見せてくれただけで」


「……ん。だから、ごめんなさいって言ったら、『おう、まだ飯の時間じゃあねぇが、これで我慢してくれや』って、このお肉くれた」


 ふむ、エンの愛され体質が出たのか。

 ウチの子、大体どこでも人気だからな。


 それにしても、海の方もそうだが、こういう船の船員って気の良いヤツが多いように思う。


 海や空なんかの、ヒトでは決して敵わない大いなるものを、常に相手にして生きているという環境が、そうさせるのだろうか? 


「はは、そっか。良かったな。お礼はちゃんと言ったか?」


「……ん。言った。あと、船員の人が言ってた。そろそろ日の入りで、船尾から綺麗な景色が見えるって。みんなで、見に行こう?」


「お、いいな! せっかくだし、行こうかお前ら。リューも、その様子だと酔いはないだろ?」


「はいっす、以前はもうすぐにダウンしちゃったっすけど、今回は全然気持ち悪くないっすね。ご主人の酔い止めの効果っすかね?」


 おう、DP産の、恐らく前世仕様のものだからな。

 まあ、お前が慣れたのもあるだろうが。


「でもリュー、本当に辛くなったらちゃんと言うんだよ? 我慢だけはしちゃダメだからね?」


「フフ、大丈夫っす。そうなったらしっかり伝えるっすから。心配してくれてありがとうっす」


 そうして部屋を出た俺達は、狭い通路を進んでいき、すぐに観光用に造られている船尾へと辿り着く。


 他のお客さんも数人いたが、結構広い造りなので、周囲はあんまり気にせず端の方の一角を陣取る。


 ――ガラス張りの船尾からは、綺麗な西日が覗いていた。


 眼下に広がる草原と、どこまでも続く丘陵。

 遥か遠くに見える人里は、ローガルド帝国の街並みだろうか。もう結構飛んだんだな。


 紅色に染めあげられ、端から夜が世界を覆っていく。


 いつ見ても良いものだ。

 この、世界がまるで、別のものへと変貌していくかのような瞬間は。


「うわぁ、綺麗っすねぇ……」


「ん、いつ見ても――あ?」


「? どうかした、おにーさん?」


 不思議そうにコチラを見るネル。


 ……俺の『危機察知』スキルの範囲内に、反応は何もない。

 目視することで、どんどんと埋まっていく『マップ』に映るものも、ない。


 だが、その時俺は、確かにチリッと、名状の出来ない感覚に引っ掛かったものがあった。


 俺は、自らの感覚に従い、紅色に染まった世界に目を凝らし続け――やがて、山脈の合間に、ソイツを発見する。


「……オイオイ、マジか」


 口から漏れる、掠れた声。


 即座に俺は行動を開始し、さっきまでの部屋――エンの本体(・・・・・)を置きっぱなしにしてある部屋へと戻る。


 俺の様子を察知した瞬間、隣にいたエンは擬人化を解き、すでに俺達の前からは消えている。


「ご、ご主人、どうしたんすか?」


「……おにーさん、僕の聖剣もお願い」


 後ろから付いて来る、少し不安そうな顔のリューと、すでに戦闘時の顔に切り替わっているネル。


 俺は、アイテムボックスから聖剣『デュランダル』を取り出してネルへと渡し、次にダンジョン帰還装置であるネックレスもまた取り出し、二人に渡す。


「敵かどうかはまだわからんが、ちょっとマズいのがこっちに向かって飛んで来てやがる。お前ら、一応いつでもダンジョンに逃げられるようにしておけ。……ここらは、安全が確保された空域だっつー話だったんだがな」


 ……この距離、すでに向こうの攻撃範囲内に飛行船が入っていると思うが、特にアクションはない。


 敵ではない、と思いたいところだが……油断したら、死んだことも気付かずに大気の塵になるだろうな。


 ――遠くに見えたのは、雄大に空を飛ぶ生物。


 デカく、圧倒的な威圧感を放ち、こちらへと向かって飛ぶその姿。

 我こそが空の支配者であると言わんばかりの、あの威圧感は、亜龍やそこらの魔物が出せるものではない。


 間違いない。



 龍族(・・)、それもレフィと同じ(・・・・・・)古代龍(・・・)である。


 すっごいどうでもいいんだけど、書籍版のネルの恰好、あれスカートではないんだ、実は。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらもどうか、よろしくお願いいたします……! 『元勇者はのんびり過ごしたい~地球の路地裏で魔王拾った~』



書籍化してます。イラストがマジで素晴らし過ぎる……。 3rwj1gsn1yx0h0md2kerjmuxbkxz_17kt_eg_le_48te.jpg
― 新着の感想 ―
[良い点] 前書きの説明、この作品はそんな感じなんですね。 書籍になった時に多少の修正がある程度なのは嬉しいです。 書籍になったら全然ストーリーが変わってしまって混乱する作品もあるので、私は修正&加筆…
[気になる点] 一気読み中です、毒についてだけど…  この作品の魔王って〝器が不定形〟じゃん? 私が思うに〝毒〟と言うのは言い方によれば〝器の性質に化学反応を起こし、過剰に変質させられる物質〟だと思…
[一言] なぜ急にスカートの話題が……何かあったのかな。 まあ、それはさておき竜だ!竜が来たぞ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ