皆への報告
投稿遅くなって申し訳ねぇ!
――俺が、レフィの妊娠を知った後。
「えっ……に、妊娠!?」
レフィの報告に、素っ頓狂な声を漏らす、リュー。
「なるほどー……何だかずっと、とても嬉しそうな顔をなさっていると思ったら、ご懐妊なさっていたのですかー。おめでとうございますー!」
「うわー……! こ、子供か……! そっか、僕達ももう、そういうことを考える頃合いになってきたんだね。……そ、その、僕はまだ、外で仕事があるからアレなんだけども……」
レフィの妊娠が発覚したのは、つい数日前だったそうだが、羊角の一族の里に残っていたリューやレイラ、幼女達の皆には、どうやらそのことは告げていなかったらしい。
これに関しては、どうしても最初に、俺に話したかったのだそうだ。
その気持ちが嬉しくて、もう何度彼女を抱き締めたことだろうか。
――あの後、皆のところに戻ってワイワイと晩飯を食べ、それから風呂に行く、というタイミングで一旦幼女組に先に向かってもらい、大人達には話をするべく、こうして部屋に残ってもらっていた。
イルーナ達には、また折を見て話すことになるだろう。
「そ、その、出産はいつ頃になりそうなんすか?」
「それに関しては、正直まだ何とも言えんの。龍族として言うならば二年程は掛かるはずなんじゃが、今の儂は肉体構造的にはヒト種の雌とあまり変わらん。故に、妊娠期間とてどちらを基に考えれば良いのかわからんのじゃ。それに関しては、今後様子を見ていくしかなかろうな」
「む、そうっすね……考えてみれば、レフィは元々龍族で、人化の術、だったっすか? それを使ってヒト種の姿を取っているんだったっすね」
「うむ、在り方としては大分異様と言えるじゃろう。色々と出産の知識を学ぶつもりではあるが、儂に関して言うとあまり当てはまらん可能性が高い」
「そうですねー……というか、今更ですがレフィの生態が物凄く気になるところですねー。レフィのみならず、ダンジョンのあの子達にも言えることなのですがー」
「まあ、ウチの子らが、大分謎生態をしているってのは間違いないな」
笑って俺はそう言う。
今後、彼女らがどんな成長の仕方をするのか、今から楽しみだ。
「なら、これからはレフィの体調を気にして生活しないとっすね! あ、けど、そ、その……ご主人、ウチもいつでも、子供を持つ覚悟は決まってるっすからね!」
「……あぁ。ありがとう」
彼女の言葉に、心の底から嬉しく思っていると、次に悩ましいような声音でネルが口を開く。
「う~、僕も、子供がほしいのはあるけれど……おにーさん、ごめんね。まだ僕は、仕事があるから……」
「いや、そんな顔しないでくれ。そんなの、全然待つさ。最初から決めてたことだ」
ポンポンと彼女の頭を撫でてそう言うと、レフィがコクリと頷いて言葉を続ける。
「うむ、お主は儂らよりも気を遣う性格じゃから言うておくが、そういう面で気後れしてはならんぞ。お主にはお主のぺーすがあり、焦って儂らと合わせようとせんで良い。忘れてはならぬ。儂らは家族であり、共に暮らしておるが、お主の個人の部分は大切にせねばならん」
「そうっすよ! ネルはただでさえ大変で、ウチらの中でも気遣い屋さんなのに、そういうところまで気にして気負っちゃダメっすからね!」
「……ありがとう、二人とも」
ネルはジワリと目の端に涙を浮かべると、キュッとレフィとリューの肩に腕を回して抱き着き、逆に二人は、笑って彼女の背中に腕を回し、あやすように撫でる。
「フフ、では私はメイドとして、皆さんをこれからも陰ながらお支えさせていただきましょうかー。医学は多少齧っていますが、この里にいる間に妊娠、出産に関する知識を幅広く一通り学んでおきますねー」
「カカ、レイラがおれば、百人力じゃな。じゃが、これからは儂らも、各々が百人力とならねば」
「協力していけば、きっと何とかなるっす! 今までもこのみんなで、何とかしてきたっすからね!」
「……ん、そうだね。これからはもっと、互いに協力していかないとね。嫁会議の量も増やそっか」
「うむ、それが良かろう。おっとユキ、儂らが嫁会議をしておる間は、お主は入れてやらんからな。一人寂しく待つが良い」
「了解了解、わかってるって」
わざとらしくシッシッ、といった動作をする彼女に俺は肩を竦め、そして皆が笑った。
――それから、話が一段落したところで、俺は彼女らへと問う。
「そんで……明日の予定は、何か決まってたりするのか?」
すると、まずレイラが口を開く。
「あ、魔王様、私の師匠が、少し話をしたいと言っておりましてー。出来れば、共に大学へと向かっていただきたいのですがー……」
「お、了解。それじゃあ……」
「うむ、では儂らはネルを連れて、適当にレイラの里を巡るとしよう。そちらの用事が終わったら、合流でどうじゃ?」
「オッケー、そうしよう。その間、幼女達は頼むな」
* * *
そして、翌日。
俺はレイラと共に、この里の中心に位置する建物――『魔法大学』へと向かって歩いていた。
里の政を行う施設ではなく、学び舎が中心にあるというのも、何と言うか、彼女らの種族がどういうものかを表しているようで、なかなか面白いものである。
魔法大学は、彼女らの叡智の全てが集められた場所であるため、外向けに造ってある建物と違って基本的に里の者か、里に認められた本当に一部の者しか入ってはいけない決まりになっているそうだが……。
「……レイラ、俺、そこに入っていいのか?」
「師匠のお呼びですからねー。私の師匠は大学の中では『導師』に位置する最高位の学者の称号を持つ一人であり、しかも里の最高権力者の一人ですからねー。問題ないですよー」
「へぇ……あの人、そんなにすごい人だったんだな。ちなみにレイラは、この里の学者のランクとしては、どれくらいの位置にいるんだ?」
「私も導師ですねー」
「いや、お前も十分すげーじゃねーか」
「フフ、ありがとうございますー」
クスリと笑うレイラ。
そうして二人で大学まで辿り着くと、その門の前に小柄な人影が立っていることにすぐに気が付く。
「来たですね、魔王! お久しぶりです!」
「お、エミューか」
俺達を出迎えたのは、レイラの妹分、エミュー。
「エミュー、ウチの子達を案内してくれて、いっぱい遊んでくれたって聞いたぞ。ありがとうな」
「フフン、もっと感謝するといいです! ……まあ、あの子達と一緒にいるのは、私もとっても楽しかったですし、研究者としての血も騒ぎましたし……だから、この後も一緒にいてもいいです?」
ちょっと不安そうに聞いてくる彼女に、俺は笑って頷く。
「ハハハ、あぁ、勿論だ。こっちこそ、里にいる間はもっと一緒に遊んでくれると嬉しいよ。よろしくな!」
「フフ、エミュー、良かったですねー」
「やったぁ! えへへ、いっぱい楽しんでもらうんで、任せてほしいです! ――とと、まずはお仕事です! クソババア師匠が呼んでるんで、こっちに来てほしいです!」