観光
エミューは、魔界王都で出会ったレイラの妹ですね。
――羊角の一族の里に着いた翌日。
ユキとネルが、飛行船で王都へと向かったのを見届けた後、里に残った彼女らは、一日の予定を話し合っていた。
「さて……魔王様とネルは数日いらっしゃいませんが、どこに行きましょうかー?」
「レイラお姉さま、やっぱり観光客用の施設に案内するのがいいと思うです! あそこは、いっぱい面白いところがあるですから!」
そう声をあげるのは、ダンジョンの住人達と共にいた、レイラの妹分である幼女エミュー。
レイラとエミューは昨夜の内に再会し、存分に語らった後であった。
「へぇ、エミューちゃん、そこはそんなに面白いとこなの?」
「たのしいとこー?」
「……わくわく」
「そうです! わくわくがいっぱいなのです! みんなもきっと、気に入るです!」
ダンジョンの幼女組とエミューが、親しい様子で言葉を交わす。
彼女らは、出会ってからまだ一時間も経っていないような間柄だったが、子供らしく爆速で、すでに仲良くなっていた。
「うむ、ならばそこを回るとしよう。ユキとネルはおらんが、どうせあの二人は、後ででーとがてら回るじゃろうからな」
「あはは、間違いないっすねぇ。ご主人、そういうところ抜かりないっすから。ウチらはウチらで、楽しむとするっす」
彼女らの言葉に、レイラはコクリと頷く。
「わかりました、では……まずは、標本類の保存施設に行くとしましょうー」
* * *
そうして彼女らが向かったのは、里の内部にある一つの大きな建物。
レイラとエミューから里の話を聞きつつ、その中へと入り――と、すぐにソレが彼女らの視界に映る。
「! うわぁ、すっごい! おっきな骨だ!」
「おお~、たべられちゃいそウ!」
「……ん。絶対強い」
そこにあったのは、何かの魔物のものらしい、巨大な骨の一式だった。
置かれているのはそれだけではなく、数多の標本があることが入り口から見ただけでもよくわかり、さらにその生物が実際にいた環境を模しているらしく、山のようなセットや森のようなセット、川の流れまでもが建物内部に再現されていた。
そう、そこは、ユキならば『博物館』と呼んだであろう施設であった。
「へへん、ここは羊角の一族が、観光客から金を巻き上げるために用意した施設なのです! 何十年も掛けて更新され続けてるですよ!」
「エミュー、巻き上げる、では言葉が悪いですよー?」
「うっ……気持ち良くお金を落としてもらうための施設なのです!」
「はい、よく出来ましたー」
「いや、どちらも同じようなもんじゃと思うが……」
「……今までは、レイラがとりわけそうなのかと思ってたっすけど、あれっすね。羊角の一族全体が、割と強かな感じなんすね」
「女ばかりの一族ですからねー、それはもう、強かに行きませんとー」
思わず苦笑を溢すレフィとリューに、ニコニコと笑みを溢すレイラ。
「ねーねー、それより早く中に行こうよ!」
「わかったわかった、イルーナ。レイラ、入館料は幾らなんじゃ? 魔界の貨幣を、ユキからそれなりに渡されておるから、足りるとは思うが……」
「いえ、私とエミューがいるので、お金は大丈夫ですよー。幾つか関わった研究物がありましてー」
「お姉さまは、いっぱい綺麗な標本を造って納入しているので、永久にタダなのです! エミューも、それを幾つか手伝ったです!」
「へぇ~! すごいんだね!」
「このなかに、レイラおねえちゃンとエミューがつくったのが、あるんだね? みたーい!」
「……見たーい」
「そうか、それなら助かるの。うむ、お主らの造ったものは確かに気になるな」
「レイラ、そんなことも出来るんすねぇ……ウチ、レイラの専門は魔術とかの、もっと理論系のものかと思ってたっす」
「えぇ、机上での研究が専門ではありますが……何と言うか、少し興味を抱いた時期に、手を出したことがありましてー」
「なるほど、いつものっすね」
そんな会話を交わしながら、彼女らは館内を進み始めた。
「ここにあるのは、現在では絶滅したと思われる魔物の骨や、希少な生物の標本が多く、研究が一段落しているものが置かれているのですよー」
「ほう、よくアンデッド化させずにおれるものじゃな?」
「ここには結界が張られてまして、負の魔力は一切湧かないようになっているんですよー」
「……確かに、アンデッド化のことを考えるとちょっと怖いっすね。――って、あれ? この魔物、ウチで食べたことなかったっすか?」
「あ、おにいちゃんが、エンちゃんとペット達と狩ってきた魔物さんだね!」
「おいしかったね~」
「……ん。美味だった」
彼女らの会話に、エミューは固まる。
「か、狩って食べた……? この魔物、幻と呼ばれる種で、しかも戦災級の強さはあるはずですよ……?」
「あぁ、魔境の森には棲息していましたねー。……こうして故郷に帰ってきて実感しましたが、やはりあそこはおかしいですよー」
「まあ、それは間違いないの。――っと、お。この魔物、二百年前くらいに一度戦ったことがあるの。懐かしいものじゃ」
「……その魔物は大災害級なので、そんな戦えるような魔物じゃないはずですけど、レフィお姉さまは、あの覇龍さまなんでしたね」
高い観察眼を持った羊角の一族であるため、すでにレフィの正体を知っているエミューが、遠い目でそう言う。
ちなみに、若干怖がりながらも好奇心を隠さず、レフィに話し掛けた羊角の一族の者は、実はすでに結構な数がいた。
「フフ、エミュー、この人達を相手にしていると、大概のことじゃ驚かなくなりますよー」
「お主は、元からあんまり物怖じしない性格じゃと思うがのう……」
そう、ワイワイと話しながら、彼女らは観光を楽しむ――。
感想の数を見て、2000を超えてて普通に驚愕した。
2000って……相当すごくないか? いっちゃん嬉しいかもしれん。
いや、これ、前にも同じようなこと言ったか? もう覚えてないな。
まあとにかく、いつもいつも、本当にありがとう!




