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魔王になったので、ダンジョン造って人外娘とほのぼのする  作者: 流優
同盟

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剣聖

 前回のあらすじ:エルフの里に到着。先代勇者に剣を教えてもらうことになり……。


 エルフの里に到着した、その翌日。


 昨日の昼に長く寝てしまったせいで眠気が皆無だったので、里の復旧作業に手を貸して一夜を過ごした後。


「ふむ……ユキさん、あなたが剣を手にしてから、どれくらいになりますか?」


 俺は兵士達用の訓練場にて、先代勇者の老執事に(しご)かれていた。


「ハァ、ハァ……二年、経たないくらい、だ」


 老執事の質問に、俺は息絶え絶えで答える。


 おかしい……俺と同じくらい激しく動いていたはずなのに、何でこのじーさん、こんなケロッとしてやがるんだ。


 身体の使い方だけで、こうも差が出るのだろうか?


「ほう、その短期間でそのレベルにまで……流石ですね」


「いや……ウチの子のおかげだ。今それを痛い程実感した」


 現在俺は、エンではなく以前に自身で作った訓練用の木製大剣を使用しているのだが……如何に俺が、戦闘でエンに助けられているのか、ということをよく理解した。


 意志ある剣であるエンは、最初にその形を得た時から戦闘時は俺の補助をしてくれていたが、俺の剣術はもはや、それありきで成り立っているらしい。


 彼女を使っている時の動きを思い出して何とか身体を動かしてはいるものの、剣技に限って言えば圧倒的格上であるこの老執事と剣を交えたことで、俺の剣の戦闘センスの無さを普段どれだけエンが補ってくれているのか、心底から実感した。


 老執事はコクリと頷き、言葉を続ける。


「えぇ、確かにユキさんは、少し武器に頼りがちなようですな。と言っても、あなたは元々、魔法の方が得意なのでしょう?」


「……まあ、そうだな。昔は剣の方が主体だったが、今は魔法を基本として、トドメにエンを使用する感じだ」


「幾つか見せてもらった限りでは、魔法使いとして一流レベルであることは間違いないようですし、戦闘能力は十分過ぎる程あるように見受けられますが……それでも、剣術を伸ばしたいのですね」


「あぁ。ウチの子をもっと上手く使ってやれるようになりたいんだ」


「フフ……わかりました。ではまず、ここまでの手合わせで感じられた、あなたの特徴からお話しましょう。――ユキさんはどうやら、魔物を相手にする際の剣を基本としていらっしゃるようですね。虚実を織り交ぜた攻撃の重要性も理解されているようですが、恐らくそれには魔法等を用いているのでしょう」


 正解だ。


 俺の戦闘は、全てが魔境の森での戦闘経験に基づいている。


 魔境の森での戦闘とは、罠を張って魔物を嵌める、魔法を使って攪乱し攻撃する、ペットどもに不意を突かせてからトドメを刺す、といった方法が主となり、剣技を用いてフェイントを掛けたり、なんてことはあまりやらない。


 雑魚は身体能力のごり押しでぶっ殺すが、ほとんどが格上ばかりであるあの森で戦い方を学んだ俺は、やはり基本的に一対一での戦闘が得意ではないのだ。


 ダンジョンの外で、ペットなしで戦うことも増えてきた以上、それは良くないだろう。


「何よりも、攻撃がわかりやすいために反撃を受けやすいという点があり、防御面が弱くなってしまっていますね。一番の問題はそこでしょう」


「そうだな……今、ボコボコにされたもんな」


 ちなみに現在、この訓練場にはエルフ、魔族、人間の兵士達もいるのだが、皆近くで俺達の訓練を見学している。


 どうやら、超絶レアである剣聖の技を見られるとあって、ワクワクしているようだ。


 そんな衆人環視の中、ボコられる俺。悲しいぜ……。


 肩を竦める俺に、先代勇者のじーさんはニコッと笑って説明を続ける。


「ですが、別にそれは悪いことではありません。単に得意分野が違うというだけの話。ですのでユキさんは、従来の戦闘方法に反しないよう、一撃の重さを増やす方向の訓練を行いましょうか」


「……? 今の話の流れだったら、防御を覚えろって言われるんだと思ったんだが」


「短所を補う方向での成長は、結局のところ器用貧乏にしかなりません。無論程度はありますが、それならば強みを更に伸ばした方が良いでしょう。私の知る限りでも、強者と呼ばれる者は皆、何かしら突き抜けた能力を有していることが多いですから」


 ……まあ、言いたいことはわかるが。


「あなたの強みは、ただのヒト種では決して辿り着けないレベルに達している、その圧倒的な肉体の強さです。魔王の強靭な肉体を以て、一切無駄のない力をエンさんに乗せ、たとえ格上が相手であろうと一撃で全てを両断する。そこに至れば、防御はもはや必要ありません。あなたが目指すべき道は、それでしょう」


 ……なるほど、俺が目指すべきは、究極の脳筋戦法、と。

 確かに、大太刀というものを愛用している以上、結局小細工を覚えるよりも、一撃で敵を粉砕する術を学ぶ方が俺の剣術には合っているのだろう。


「……やっぱり、誰かに見てもらえると為になるな。俺、剣は全部我流だったから、本当に助かるよ」


 流石は、剣聖といったところか。

 しかも、年の功か説明がすごいわかりやすい。


 ネルは何度かこのじーさんに剣を教えてもらった、なんて言っていたが……アイツが剣の扱いが上手い理由もわかろうものだな。


「フフ、お役に立てたようならば何よりです。――さ、続きと行きましょう。あまり時間もありませんからね」



   *   *   *



 ――それから、太陽が頂点に昇ろうかという頃。


「お、やっておるのう」


 からからと笑いながら訓練場にやって来たのは、レフィ。


 その片手はエンに繋がれ、そしてエンの反対の手はネルと繋がれている。


「何だ、お前ら……見学にでも来たのか」


 地面に転がされたままそう言うと、レフィはニヤニヤしながら答える。


「うむ、その通りじゃ。お主がぼろぼろにされている様でも笑ってやろうと思うてな」


「い、いや、違うからね? もうちょっとでお昼ご飯みたいだから、呼びに来たんだ。おにーさんも、お腹空いてるだろうしって」


「……ご飯、一緒に食べよ?」


 む……そうか、もうそんな時間か。


 ついさっき、朝になってちょっとウトウトし始めたエンを仮眠させたと思ったのだが、熱中している間に結構な時間が経っていたようだ。


 と、寝転がる俺をパシパシと叩きながら、レフィが老執事へと声を掛ける。


「存分にやってくれているようじゃな。此奴は能力値の割に不器用での、出来る限りで扱いてやってくれ」


「フフ……えぇ、任されました。――失礼ですが、あなたがユキさんの妻の一人である、覇龍レフィシオスさんですね?」


「うむ、如何にも。儂がレフィシオスじゃ。お主はー……」


「僕の剣の師匠の、レミーロさんだよ。とってもお世話になってて、色んな面で助けてもらってるんだ」


 レフィの止まった言葉の後に、ネルが剣聖のじーさんを紹介する。


「そうか……ネルが世話になっておるようじゃ。感謝するぞ」

 

「いえいえ。どちらかと言えば、我々の方が彼女には世話になっていますから。礼を申しあげるべきは、こちらですよ」


 ニコニコしながらそう言い、老執事はふと表情を真面目なものに変える。


「……レフィシオスさん。不躾ながら、一つ、お願いがあります」


「ふむ? 何じゃ?」


 怪訝そうにするレフィに、老執事は頭を下げて言った。


「私と――手合わせ(・・・・)をしていただけないでしょうか」


「えっ……正気か、じーさん?」


 レフィと手合わせなんて、普通に死ぬぞ。

 俺ですらやんないのに。


 ……まあ、俺の場合は、単純に俺がレフィとそういうことをしたくないってのもあるんだが。


 思わずそう問い掛けるも、無謀であるということは本人もよくわかっているのか、彼は言葉を続ける。


「と言っても、あなた程の方と戦おうものなら、たとえただの手合わせでも死んでしまうでしょう。ですので、気当てのみお願い出来ないでしょうか」


「お主には儂の旦那を鍛えてもらっておるからな、それくらいは構わんぞ。ただ、他の兵どもは引かせた方が良いじゃろう。殺してしまいかねん」


「感謝いたします、レフィシオスさん。――皆さん! 今から少し、危険なことを行います! 見学される場合は、距離をお取りになるよう!」


 レミーロの言葉を聞き、周囲で俺達を見学していた兵士達は、大人しく離れていく。


 彼らが距離を取ったのを見て、じーさんは肩幅に足を開き、両腕を下に垂らし、自然体の構えを取る。


「それでは、お願いいたします」


「うむ。では、行くぞ」


 ――瞬間、レフィから放たれる、特大の威圧感。


 同時、遠巻きにこちらを眺めていた兵士達がバタバタと倒れ始め、気絶まではしなかった者も、腰を抜かしてへたり込む。


 ――この世界では、殺気というものは確たるものとして存在する。


 魔法はイメージを魔力に乗せて具現化させている訳だが、殺気とはそれと同じように、殺意を魔力に乗せて周囲へと放っている訳だ。


 きっとレフィがその気になれば、全く手を下さずともこの場にいる全員を殺すことが可能だろう。


「フー、フー……!!」


 そして、最もレフィの圧を受けているであろう老執事はというと、冷や汗をダラダラと流し、荒く呼吸を繰り返しながらも、決して倒れず、決して戦意を喪失せず、構えを解かない。


 魔境の森の魔物ですら、尻尾を巻いて逃げ出す圧力を受けてなお、毅然とその場に立っている。


「――ふむ、こんなもので良いじゃろう」


 それから一分程経った後、レフィは放っていた威圧感を一瞬で掻き消した。


「大したものじゃな、お主。人間で儂の気当てにそこまで耐えられるとは。誇って良いぞ」


「いえ……まだまだです。現にユキさん達は、今のでも動じておりませんでしたから」


 ケロッとした様子の俺達を見て、苦笑を溢す老執事。


「……まあ、俺達は家族だからな。例外みたいなもんだろ」


 例えば身内が誰かにキレていたとして、「あぁ、怒っているな……どうしたんだろう」と思いはすれど、別に怖いと感じはしないだろう。


 ましてや、今はわざとやっているとわかっているのだ。

 別に何も感じないのが普通じゃないだろうか。


 俺の隣にいるネルとエンも、ケロッとしているしな。


「それにしても、無茶なことするなぁ、じーさん。死んでてもおかしくないぞ、今の」


 ちょっと呆れの混じった俺の言葉に、彼は汗を軽く拭いながら答える。


「ここのところ、強者との戦いが少なく、少々身体が(なま)ってきておりまして……ヒトは死の危険を感じなければ、その能力を十全に引き出すことは難しいですから、ここらで一旦その調整をしておきたかったのですよ。とても良い経験になりました」


 ……確かに、死の危険を感じたら生存本能は高まるだろうが。


 レフィ程の脅威なんて、それこそこの世に何個も存在しない訳だし、訓練として考えてみれば最上級の類ではあるかもしれない。


 キチガイ染みた所業であることは間違いないだろうがな。


「さ、それより飯じゃ、飯。レミーロと言うたな、お主も共にどうじゃ」


「ありがたい申し出ですが、私は兵士達の後片付けをしてからにしますので、お気になさらず。それではユキさん、また後程」


「あぁ、頼むよ」


 色々忙しいだろうに、わざわざ今日一日は俺のために時間を取ってくれているのだ。


 早いところ食って、また稽古を付けてもらうとしよう。


 今作品の書籍版6巻、コミック2巻が発売しました! どうぞよろしく。


 いや、そんなことより、このお知らせを聞いてほしい!

 なんとコミックの1話に、声優さんに声を当てていただきました! レフィとユキが喋っていて、マジで感動です! マジで! ホントに!

 URLを乗せてしまうと規約違反になっちゃうので、各々で探していただくしかないのですが、Youtubeで『魔王になったので、ダンジョン造って人外娘とほのぼのする』と入れていただければ出て来ると思いますので、是非見てくだせぇ!


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こちらもどうか、よろしくお願いいたします……! 『元勇者はのんびり過ごしたい~地球の路地裏で魔王拾った~』



書籍化してます。イラストがマジで素晴らし過ぎる……。 3rwj1gsn1yx0h0md2kerjmuxbkxz_17kt_eg_le_48te.jpg
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