閑話:ダンジョンの夏休み《3》
ちょい短めになっちまった。もう一話早めに投稿します。
……せ、世間一般的には、まだ夏だと思うので。
「よし、レイラ、手伝ってくれ」
「はい、畏まりましたー」
少し早めに遊ぶのを切り上げた俺は、浜辺でレイラと一緒にバーベキューの準備を進めていた。
まだ日が落ち始めてもいないのだが、これだけ泳いで遊んで騒いだ以上、幼女組も大人組も絶対夜が眠くなっちまうからな。
それを見越しての早めの準備である。
他の皆も手伝おうかと言ってくれたのだが、今日は突然遊びに出て来てしまったため、本当に何の準備も出来ていないので、まだ遊んでていいと好きにしてもらっている。
今は、レフィエンジンを搭載した特大バナナボートに乗って、ちょっと遠くまで遊びに行っているようだ。
浜辺から離れれば離れる程、海の魔物が増えていくのだが、レフィもネルもいる以上、問題はないだろう。
俺は、原初魔法の土でレンガを作り出すと、それを積み上げてコンロを作っていく。
バーベキューコンロは、金網とレンガさえあれば意外と簡単に自作可能で手間が掛からない上に、非常に雰囲気が出るのでオススメである。
こういう遊びに来てのバーベキューで、雰囲気が出るか出ないか、というのは、結構大切だ。
骨組みを残しておけば、また再利用できるしな。
俺の隣では、用意した簡易テーブルの上で肉や野菜、エンとレイス娘達が採ってきた魚と貝を食べられるように、レイラが調理している。
俺もこっちが終わったら、彼女の方を手伝うとしよう。
「――なあ、レイラ」
ふと俺は、金網の下に敷いた木炭に原初魔法の火で着火しながら、レイラへと言葉を掛けた。
彼女は今、水着の上にパーカーを羽織っており、それがよく似合っている。
パーカーの下から覗くスラリと長い脚が、艶めかしい。
……あんまり見てると、変態っぽいからやめておこう。
「はい、何でしょうー?」
「その……悪いな、いっつもいっつもこういう手伝いをさせちまって。レイラには、こうやって遊びに来た時でも、飯の準備とか着替えの準備とかさせちまってるだろ?」
元々レイラは、メイドとして雇った身である。
だが、今はもう、俺にとって家族のような存在だ。
非常に頼りになるのでつい頼ってしまうし、というかもうレイラがいなかったら我が家は回らないが、彼女だけに多くの家事をさせている現状に、少し思うところがあるのだ。
まあ、他の大人組と違って、彼女は嫁という立場ではないので、勝手に家族だなんて言うと気持ち悪いものがあるだろうが……。
「あら、魔王様。私はこの生活が気に入っていますよー? 今日も、楽しかったですしー」
だが、微妙に心外そうな様子で、そう答えるレイラ。
「そうなのか?」
「はい、私は『知』というものを何よりも愛していますがー……お世話する、ということも好きなのですよー」
彼女は内面の感情が窺える綺麗な笑みを浮かべ、言葉を続ける。
「私のお掃除した部屋で皆が快適に過ごし、私の作った料理を皆が美味しそうに食べ、そして合間合間に好きな研究が好きなだけ出来る。それが、とても幸福なのですー。……魔王様はお気づきではないかもしれませんが、これだけ自由に好きなことが出来る場所は、世界広しと言えど少ないのですよー?」
「……そうか。俺達はウチにレイラがいてくれて、幸せだよ。心底そう思うぜ」
「私も、皆と、そして魔王様とここにいられて、毎日がとても楽しくて、幸せですよー。私をここに置いていただいて、本当に、ありがとうございますー」
そう言って彼女は、思わずクラッと来てしまいそうな、艶やかで美しい微笑みを浮かべた。
「……俺、嫁さんがいなかったら、速攻でレイラに求婚しそうだ」
「私もお嫁さんにしていただけるのですかー? うふふ、嬉しいですねー」
片手を頬に当て、ニコッと笑いながら、そんな冗談なのか本気なのかわからないようなことを言ってくれるレイラに思わずグッと来ていた時。
俺は、木陰からこっそりと俺達のことを見ている影に気が付く。
「……何を見ているんだ、君達は」
そこにいたのは、いつの間にこちらへ戻って来ていたのか、ネルとリューだった。
「い、いやぁ……なんか、いい雰囲気を作ってたっすから、ちょっと入り辛くて」
「べ、別に、覗こうと思ってた訳じゃないんだけど……あはは」
言い訳がましくそんなことを言う二人。
どうやら、幼女達はレフィに任せ、こっちの手伝いをするために戻って来ていたらしい。
「それより、ご主人! ちょっとこっちに」
「あん?」
ちょいちょいと手招きするリューの方に行くと、彼女はニヤニヤしながらこそっと俺に耳打ちをする。
「ご主人、今なら多分、愛を囁けばイチコロっすよ! ウチらがチャンスを作るんで、このままレイラを落としちゃってくださいっす!」
「…………」
「あいだっ!? な、何でチョップされたんすか!?」
「バカなこと言ってないで、晩飯の準備を手伝え。そろそろ腹ペコ怪獣どもが帰ってくるからな」
「ちぇっ、はーいっす」
リューはちょっと不貞腐れた様子で、先にレイラの手伝いへと入っていたネルの下へと向かって行った。
……全く。




