知らぬ間の進展《1》
更新遅くなりました!帰って来たほのぼの。
魔界からの帰還の方法を、少しだけ変更しました。
――身体が分子単位で解体され、そして再び再構成されていくような、不思議な感覚。
俺が持っていたダンジョン帰還装置はネルに使ってしまったので、エンにあげたものを借り、彼女には武器に戻ってもらってから、起動。
瞬間、目の前が数秒だけ何も見えなくなるが、少しすると視界が回復し、辺りの様子を鮮明に伝えて来る。
気が付いた時にはすでに、俺は魔界ではなくいつものダンジョン、その真・玉座の間に立っていた。
「おーい、ただい――」
「ただいま帰りましたー。……あら」
――鮮明となった俺の視界がまず最初に捉えたのは、半裸の勇者だった。
かぁっと頬を真っ赤に染め、まるで時間が停止したかのように動きを止めて、突如現れた俺達のことを凝視している。
……恐らくは、着替え中だったのだろう。
下にリューのものと思しきパジャマを着て、上は何も身につけておらず、胸だけを片腕で隠している。
ダンジョンの明かりの下に晒される、彼女の日焼けしたきめ細やかな肌。
「…………」
「…………」
――何か、言わなければ。
この気まずい空気を打開するため、何か気の利いたことを言わなければ。
俺は、思考停止に陥った脳みそを懸命に働かせ、しばし金魚みたくパクパクと口を開けたり閉じたりしてから、状況を打破するための言葉を、どうにか紡ぐ。
「――意外と育ってんのな!」
「~~ッッ!!滅べ魔王!!」
どこを、ということを言わずとも理解したネルは、怒りに震える拳で、俺の顔面を殴り飛ばした。
俺は、「げふぅっ――」という間抜け声を漏らし、勇者の本気の鉄拳に吹き飛び、ダンジョンの壁にぶつかって停止した。
……喋る言葉を、間違えた、か……。
* * *
「――さて、ユキ。貴様、何故正座をさせられておるか、わかるか?」
頬を赤く腫らし、玉座の間の床に正座させられている俺の前に仁王立ちをし、腕を組んでこちらを見下ろすレフィ。
その彼女の隣には、レフィの真似をして腕を組み、仁王立ちをするイルーナ。
そしてさらにその隣に、未だ顔を赤らめたまま、ちょっと睨むような視線をこちらに送って来る、勇者の少女、ネル。
……何かここんところ、こうして正座して、反省ばっかさせられている気がする。
「……えー……その……そこにいる、わたくしのことを睨んでいる少女のことに関してでしょうか」
「ほう、自覚があるようで何よりじゃ。それじゃあ、何故この勇者に関して、お主が正座をさせられておるか、わかるか?」
「……わたくしめが、勇者殿のお裸を拝見してしまったからでしょうか」
「うっ……お、おにーさんはもう!!どうしてそんな、デリカシーが無いのかな!!事故だったのだとしても――」
「いいや、違う」
「もうちょっと他に言うことが――え?違うの?」
予想外のレフィの否定に、思わず「えっ」という顔で、銀髪少女の方を見る勇者。
「全く、また女をダンジョンに連れ込みおって!エンやレイラに聞いた限りじゃと、向こうでもお主、女に言い寄られてデレデレしておったようじゃしなぁ?ほんにお主は、女に甘過ぎなんじゃ!!」
「あ、そ、そこね。そうだよおにーさん!あんまりデレデレしないで……え、待って、その物言いだと、もしかして僕もおにーさんを誘惑した女の人の一人になってる?」
レフィの物言いに、再び「えっ」という顔で彼女の方を見る勇者。
……やっぱコイツ、面白いな。
「何を笑っておるのじゃ、ユキ!本当に反省しておるのか?」
「はい、反省しています。すみませんでした。……ですが一つ言わせていただくと、別に俺、そんな女性の方に甘い顔をした覚えはないんですが」
「ハッ、ぬけぬけと言いよるわ!――エン!」
「……ん」
と、レフィの後ろから、一歩前にズイと出る、エン。どことなく、俺を責めるような顔をしている。
基本的に表情の乏しいエンだが、最近ちょっと、何を考えているのかわかるようになってきた。
「……主、猫の獣人と、胸の大きい魔族に言い寄られて、デレデレしてた」
……胸の大きい魔族、というのは、魔界に行く途中で出会った、超薄着の肉感的なおねーさん、ルイーヌのことか。
「ほら見ろ、こうして証言も挙がっているのじゃ!言い逃れが出来ると思っておるのか!?」
「あがっているのだー!」
レフィに同調して、拳を振り上げるイルーナ。可愛い。
「ま、待て、それはエンの些か主観的な物の視方だ。猫獣人は物珍しかっただけだし、その胸の大きい魔族に関しては、別に、デレデレなんてしてないし?」
デレデレしそうになる前に、エンにインターセプトされたからな!
全く、スラムダ〇クのゴリもビックリな守備力だったぜ。
「……む。主、嘘は駄目」
「嘘なんて。いやいやいや。嘘なんて吐かんさ。俺は、このダンジョンの皆のことの方が好きだし、何より嫁さん一筋だ!他の女に目移りなんてする訳ないだろう?」
「ぬ、そ、そうか……」
「えへへ、おにーちゃんが好きって!」
「……ん」
「い、いや皆!ちょっと!誤魔化されてるよ!」
若干頬を赤らめて照れるレフィに、身体をくねくねとさせて嬉しそうにする幼女組の二人を見て、ネルが慌ててツッコむ。
くっ……そこに気が付くとは、流石勇者、といったところか。
「む……ゴホン、とにかく!お主はもう少し、女に対し毅然とした態度を取るべきじゃ!」
「へい、嫁さん。気を付けます」
「それと、お主は儂の、お、夫である存在じゃ!であるからには、あまり外に行って、阿呆なことはするでない!覇龍の夫として相応しい、堂々とした男であれ!」
「ウッス、嫁さん。精進します」
「……ふむ、まあ、わかったなら良い。ゆめゆめ、儂の言ったことを忘れるでないぞ。――よし、なら、この辺りでネルを嫁にすることに関しては、許してやろう」
「了解っす。許してもらえて何より――」
…………………………………………………………………………………………………んっ?




