表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蓮華ちゃんの事件簿  作者: 琴宮類
5/5

おや、次の標的でしょうか。(対放火魔編)

 こんにちは、蓮華です。

 国家認定犯罪者ハンター、に多分近づいてる最中です。


 先日は凶悪犯を捕まえたというのにあり得ない程関係各所に怒られてしまいました。

 ま、だからといってめげる蓮華ちゃんではないのですよ。

 誰も口が出せないほど実績をあげればいいのです。


 てなわけで今回の私の標的は。


 最近巷を騒がせている放火事件、その犯人を捕まえましょうかね。


 すでに連続で6件おきています。警察も中々検挙にいたりません。

 

 放火という犯罪は財産的人的被害がかなり大きい凶悪犯罪。ですが加害者と被害者の接点がない場合が多い。つまりは無差別って事です。さらに証拠も燃えてしまうので現行犯か職務質問などで事前に捕まえるしかない。


 学校が終わったらさっそくサヨリさんの所に寄って情報を得ましょう。



 放課後、私はサヨリさんのいるバーに行きました。

 お店は夜からなので今はサヨリさんだけ。


「こんにちはー」


 カランコロンと入り口の鐘を鳴らして入ります。


「・・・・・・おう、蓮華か」


 サヨリさんはタブレット端末と睨めっこ、声だけは返してくれました。

 本職は情報屋ですからね、いつも忙しそうです。


「例のやつ、なにか新しい情報入りました?」


「うんにゃ、相変わらずなにもなし」


 私はまず最初にいつもこれを聞きます。

 少女連続失踪事件。日に日に数が増していきます。ですが、手がかりはまるでなし。神隠しにあったかのように忽然と姿を消していきます。

 消えた少女は、年齢、身長に体重が近い。意図して選んでると思われます。 

 果たして、この犯人の目的はなんなんのでしょう。


 警察の見解はこうみたいです。

 30代から40代の男性、複数犯の可能性もあり。車を所持。過去に少女に対する前科もある。

 組織的な犯罪も視野に入れてますね。家出の線も消してない。


 結局憶測段階で進展はまるでないって事でしょう。


 条件にあう少女はまだまだこの町に溢れています。

 早く誰かが真相をつきとめないと、数が増えていくばかりかと。


 しかし、サヨリさんの耳にすらなにも入ってこないなら現時点ではお手上げですね。

 当初の目的にもどってまずは放火犯です。


「サヨリさん、最近の放火事件、その資料を売って下さい」


「あぁ? なんだ、まだハンターごっこ続けるのか、この前こっぴどく怒られたってのに懲りないねぇ」


 む、呆れた顔をされましたよ。私がどんな性格かサヨリさんならよく知ってるでしょうに。


「ま、お前があんな事でやめるわけもないか。それは私が一番よく知ってるしな」


 そうでしょう。そうでしょう。なら早く情報ください。


「放火犯ね。これなら50万てとこか」


「は~い、すぐに振り込みますね」


 これで、マスコミ、警察などが掴んでる情報をゲットです。

 これを統合して私独自に犯人に近づいて行きましょう。


 放火の動機ですが、これは色んなパターンがあります。

 性的興奮、英雄志向、復讐、鬱憤晴らし。他には隠蔽などもありますがこれは除外しましょう。保険金などの利益型も排除。テロ、脅迫もないですね。

 厄介なのが子供が犯人だった場合。これだとさらに好奇心、クライシス、バンダリズム、逃避、病理と動機がかなり分類されます。

 情報を元にどんどん省いていきましょうか。


 犯行はすべて民家。被害者もでてます。三件目の放火で逃げ遅れた住人三人が焼け死んでますね。これでも犯行が続いてるすると子供の犯行は考えづらい。基本的に放火は弱者の犯行。ここまで大事になったにも関わらず間隔を置かずに次の犯行をするでしょうか。


 放火現場を印したマップを確認します。

 近所に集中してますね。これだと周辺住民は夜も眠れないほど不安でしょう。

 この犯人、許せませんね。

 

 消火活動中の写真、動画も全部見ます。

 よく野次馬に混じるって言いますからね、そこも注意深く見ておきますか。


「・・・・・・ん」


 ここで私は一つのことに気がつきました。

 なるほど、もしそうならこんないい条件はありませんね。


 目星はつけました。裏を取ってみましょう。



 それから数日後、また放火事件が起きました。

 夜10時を過ぎていましたが、私はすぐに動けるようにしてたので現場に急行。着いた時にはすでに野次馬がちらほら。住人はまだ起きていたようで全員無事に逃げ出したみたいです。燃える自宅をただ呆然と眺めていました。なにを思っているのか私には想像も出来ません。財産も、思い出さえもどんどん消えていく。


 程なく消防団が駆けつけ消火活動が始まりました。

 ここにいてもすごい熱風が肌に当たります。消防の方の命をかけての活動を見ていると頼もしく尊敬が絶えません。


 さて、帰りましょう。これで大体分かりました。

 後はさらに深く探ってみましょう。 

 


 さらに数日後の夜9時。

 闇夜にまぎれる怪しい人影。

 その人物は民家の塀を跳び越え、服から出したペットボトルを取り出しました。その中身を壁に振りかけ、ライターを手にしました。


まさに火をつける瞬間。


「は~い、そこまででーす」


 男の体が飛び跳ねました。後ろから声をかけられたからでしょう。


「一応現行犯でいいですね。貴方を確保します」


 慌てて男が私の方振り向くと、まだ灯油が残っていたのでしょう。灯したライターの火がペットボトルに燃え移ったのです。それはすぐに服にまで広がりました。

 

「あら、声をかけるタイミングが悪かったみたいですね」


「ああああああつつうっつうあががが!!!!」


 男はそれどころではないらしく、激しく暴れ出します。火はどんどん大きくなり男の体を包みこみます。


「おっと、家に火が移るじゃないですかぁ」


 私は暴れる男に向かって飛び蹴りをかましました。


 吹っ飛ぶ男は、そのままフラフラになりながらも庭の方に走り出します。

 水を求めてるのでしょう。私はゆっくり歩きながら追いかけます。


「たあ、あたすけぇえ、ああああうるるつついいい」


 玄関近くに水道がありました、男は無我夢中でそこへ向かいます。

 それを。


「とぅっ!」


 もう一度跳び蹴り。


「だから、家に燃え移っちゃうじゃないですかぁ」


「あつああああいあいあぃぃ」


 必死に立ち上がろうとする男、ですがついに膝をつきました。

 地面を転がればいいものを、よっぽどパニックになってたんですね。

 腕も折れ曲がっていきます。熱作用により、筋肉内の蛋白質が凝固して筋肉が収縮してるんですね。


「私が貴方に目をつけたのは、毎回いち早く現場に到着して消火活動してたからです。動機は英雄志向タイプでしたか。現場も自宅に近い、どんどん近くなってました。一番乗りするためですね。前回の放火で確信したので今回尾行させて頂きました。そしたらビンゴだったようです」


毎回特等席で見ていたのでしょう。


「今日はいつもよりもっと近いですね。ってもう聞こえてませんか」


 あぁ、火って見てると吸い込まれそうな感覚になりますね。

 なんだかとても落ち着きます。

 男の体の炎はさらに激しさを増していきます。予備のペットボトルでも持ってたのでしょう。


 こうなると面倒ですね。今回は手柄を諦めますか。ここや付近の住民が騒ぎ出す前に姿を消しましょう。

 一応匿名で通報しておけばいいでしょう。



 後日。


 焼死体で発見された男が犯人だと断定されました。

 結局私の名前は売れませんでしたが、これ以上被害が増えなかった事で良しとしましょう。


 さて、次はどうしましょうかね。

 学校も終わって、私はいつものようにサヨリさんの店に足を向けていました。


 相変わらず失踪事件の方はなにも情報はなし。今日も同じ答えが返ってくるのでしょうね。

しかし、この犯人、一体少女を集めてなにをしているのか。

 私の考えも警察の見解と近いです。迅速に連れ去るには屈強な男性、それも複数、さらに車は欲しいでしょう。


 考え事をしていたからでしょうか。私としたことが注意散漫でした。

 前から歩いてきた人の肩にぶつかってしまいました。

 

「あ、ごめんなさい。考え事をしてたもので・・・・・・」


 顔を上げると、その人はなんとも可愛らしい少女でした。

 着ている制服は地元でも格式が高いミッション系の女学園。私も当初入るか迷った学校ですね。でも息苦しそうでやめたのです。


「大丈夫だよぉ。うふふ、気をつけてねぇ」


 その子はニコニコと笑顔で許してくださいました。

 丁寧にお辞儀をして再びすれ違います。


「・・・・・・惜しいなぁ」


 ん、なにか呟きましたかね。よく聞き取れませんでした。


 ここで体に異常が出ていることに気づきます。

 寒くもないのに、なぜか鳥肌が立ってますね。


 何気なく私は振り向きました。


 でも、そこに先ほどの少女の姿はすでになく。


「ま、どうでもいいでしょう。早くサヨリさんの所に行かなきゃです」


 バーとしてお店を始めるまでそんなに時間がありません。

 それまで次の標的を決めなければ。



そして、その日もまた新たな失踪者が出たのでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ