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蓮華ちゃんの事件簿  作者: 琴宮類
4/5

おや、デビュー戦です。(対首刈りジョーソン編)

いよいよ、私こと蓮華のデビュー戦です。

 

 相手は首刈りジョーソン。

今の所、この者による犯行は4件だと思われます。被害者は4人の女性。いずれもこの町の住人です。

 遺体は全て、ここから離れた山中で発見されました。位置はバラバラでしたが、切り取られた首とその胴体は全て近くで発見されてます。

 凶器は傷口からみてノコギリのような物と推測。

 生活反応から生きたまま切ってますね。

残忍な犯行です。

 


「これはうかうかしてられませんよ」


 とりあえず武器です、ただでさえか弱い女の子な私です。相手は凶悪な犯罪者、太刀打ちできるように色々揃えましょう。


 私は、色々ネットを見ながら見繕っていきます。


「む、これいいですね」


 刃物を検索中気になる物がありました。刃の峰部分に蝶が施されております。柄もリボンがついてて可愛いです。少々お値段はしますがこれにしましょう。

 

 他には・・・・・・目に付いた物を片っ端からポチリましょう。


「そして、外せないものが一つ」


 これは直接自分の目で見てきましょう。

 ネットでできる注文を終え、私は外へとくりだしました。


 町中のビルの二階。目当ての店舗はそこにありました。


「わぁー」


 店内に入ると、目に入った光景に思わず声を上げてしまいました。

 ここはガンショップ。勿論、エアガンのです。

 壁には一面、銃が飾られております。アサルトライフルといった長物がズラリでした。

ショーケースにもいっぱいです。ハンドガンが綺麗にディスプレイされてます。


「いらっしゃい、お嬢ちゃん、なにかお探しかな?」


 ここの店長さんですかね、スキンヘッドでマッチョなおじ様が私に声をかけてきました。その風貌はまるで戦場帰りの傭兵かなにかです。


「えっと、シグっていうのが欲しいのですが・・・・・・」


 以前雑誌で一目惚れしたやつです。


「シグか。シグにも色々あるが、どれにする?」


 おじ様は、いくつかガラスケースから取り出して私の前に並べてくれました。


「ふむふむ、結構種類があるのですね。どれがお勧めでしょう?」


 素人の私には見た目的にもほとんど同じに見えます。


「う~ん、226なんかどうだい? お嬢ちゃんには239っても合ってそうだが」


「なるほどぉ、ではそうですね、そのP226でお願いします」


 本物なら全然中身が違うのでしょうけど、今は撃てればいいのです。

 いずれ実銃を持つ時はしっかり考えましょう。


「これ、当たります?」


「ん? サバゲーでもやるのかい。ハンドガンだしな、ピンポイントとなると、大分近づかないと駄目だろうな」


「そうですか、それは困りました」


「とりあえず当てたいのか? それなら・・・・・・」


 その後、おじ様と話し込み、もう一つ別の銃も購入しました。



 下準備はこんなものでしょう。

 いよいよ犯人を見つける段階に移ります。


 現時点の情報は多くありません。

 相手はまだ犯罪者クラブの会員ではない。正確には犯罪者クラブの方が接触を図ろうとしているが正しいでしょう。恩恵を受けられたら厄介です。早めに行動しないと。

 サヨリさんから得たのは警察が掴んでるものをほぼ同等。加えて犯罪者クラブの情報も横から引っ張ってきましたがそれも僅か。

 ここからは、私独自に考えて行きましょう。


 まず遺体ですが衣服は身につけておりました。靴はありませんでしたが、靴下に汚れは見られず殺された時には履いていたのでしょう。となると屋外。でも、それだと人目につく可能性がある。犯人はゆっくり切断を楽しんでます。なら倉庫か小屋などを使用できる人物か。

 車は必須でしょう。被害者3人の共通点は年齢が20代という事だけ。顔見知りの犯行ではありませんね。そのほかは過去の似たような事件と比べます。


 私の考えを纏めると、犯人は単独。被害者と歳も近い二十代~三十代の男性。犯行は計画的、自己顕示欲があり知的レベルもそこそこ高いと思われます。一人暮らしで小屋や倉庫を使用できる者、車を所有。肝心な犯行現場ですが、被害者達は会社帰りで拉致されたと考えられます。そこを接触地点とすると、その近辺、中でも最初の被害者から。そして一番最後に見つかった死体遺棄現場、ここからが一番近いはず。

 遺体が何体か発見された場合、古い事件より新しい事件の遺体の方が犯人の自宅に近いのです。他に見つかってない遺体がない場合ですけどね。


「これでサヨリさんに照合してみましょう」


 町の外れは閑散としてますからね、結構絞り込めると思います。



 数日後。その日は満月でした。

 私は照合結果からある一軒の家の前に来ておりました。

 闇夜に紛れ、塀を飛び越え中へ入ります。


 一軒家、自営業をしており倉庫があります。ガレージもありそちらも怪しい。

 両親ともすでに他界しており、20代後半の一人息子が後を継いでます。Nシステムを調べてもらったところこの男の所有する車が山に向かったのも分かりました。いずれも死体が発見される数日前です。

 これはと思い、私は一人、準備を整え突入しました。

 警察だと、やれ任意だ礼状だとすぐには動けないでしょう。縛りがないのが私の強みです。


 敷地に入ると、隅の倉庫に明かりが見えます。自宅兼事務所は真っ暗です。私はそっと倉庫の裏手に回り込みました。


「・・・・・・うぅ・・・・・・う・・・・・・ああ」


 明かりが漏れる扉のガラス面から中を覗き込みます。


 息をのみます。それはまさに犯行の真っ最中だったから。


 椅子を使って固定されている女性、背もたれの下から頭を出されひれ伏すような体勢を取らされていました。目隠しをされ、手は椅子の脚に縛られて身動きが取れません。

 男はその女性の首にノコギリを当てていました。

 ギコギコと、すでに腕を前後に。


 もう少し早く来るべきでした。

 絞り出された苦悶の声はしだいに小さく、今はもう無いに等しい。


 私はそれでも急ぎ扉を左右に開け放ちました。鍵が掛かってたら警察を呼んでたんでしょうが。


「そこまでです。貴方が首刈りジョーダンさんですね!?」


 突然私が登場したにもかかわらず男はまるで慌てません。顔だけはこちらに向けたものの腕の動きは止めませんでした。

 

 少し痩せた長身の男性は私を見てうっすら笑みをこぼしました。


「あ、もうちょっとで終わるんで少し待っててもらえます?」


「む、わかりました」


 男のいうとおり、首はもう皮一枚といったとこでしょうか、床には血だまり、胴体からプラリと垂れ下がってます。

 その数秒後。

 頭が離れました。床に落ちると小さく転がり顔がこちら側を見る形に。

 目を覆っていた布が涙で濡れています。口も大きく開けられている。

 

「お待たせしました。で、貴方はどちら様です?」


 血塗られたノコギリを手に、体をおこした男が私と向き合います。

 視線は私を見てるようで周囲に動きました。私が一人なのを確認してるのでしょうか。


「犯罪者ハンター(仮)の蓮華と申します。貴方を捕まえにきました」 


 にっこりと自己紹介。


「あぁ、そうなんですね。僕もそろそろ潮時かなっては思ってたんですよ・・・・・・」


 そう言いながらもゆっくり私に近づいてきます。

 不思議ですね、なぜかわかります。この男は危険人物なのに恐怖を感じない。

 

「・・・・・・だから、これで最後にします、君の首で・・・・・・」


ノコギリをかまえる男。でも、私の心臓は高鳴りません。

 あぁ、そうか。私は自分で分かってるんです。 

 私の方が、この男より、と。


 距離を詰める男に、私は背中から先日購入した銃を取り出し構えました。

 

「ふはは、なんです、その玩具は?」


 馬鹿にされました。

 取り出したのは、シグちゃんではありません。P90っていうサブマシンガンです。店長のおじ様が言ったました。当たらなかったら当てるまで。下手な鉄砲も数打ちゃ当たるです。


 構わず私は男に向けてトリガーを引きます。フルオート、弾は連射され男に撃ち込まれていきます。

 通常なら怯むくらいでしょう。

 でも、私は独自に改造しました。おじ様に聞いたのではありません、構造を知りちょっと考えればわかりますもの、どうやったら強化させるなんて。あそこを変え、弾も通常のものとは異なります。


「あああああああががあがあ」


 弾の数だけ悲鳴を上げます。予想以上の威力に両腕で顔を覆い身を丸くしました。手の甲に狙いを定めあちらの武器を落とします。

 止めません、そのまま今度は私から距離を詰めます。

 


 そろそろでしょうか。装填数が底につきそうになると、撃ちながらも腰からゴス包丁を引き抜きます。足下にあったノコギリを蹴り上げ男から遠ざけました。


 あまりの衝撃に倒れ込んだ男の首元にナイフを突きつけます。


「レコーダーで音声はとってます。編集すれば貴方から襲ってきたってわかるでしょう。だから、ここで殺しても大丈夫ですよね?」


 勿論本気ではありません、威嚇のつもりでした。

 ですが、男は痛みでそれ所ではなかったみたいです。顔面にあの距離からですからね、かなりの激痛でしょう。

 さっと、バンドで両手を、そして足も拘束します。


「よし、ミッションコンプリートですっ!」

 

 初めてでしたがうまくいきました。

後は、警察を呼び引き渡しましょう。

 そこで名を名乗るのです。


 き、君は何者だ!? そう聞いてくるでしょう。

 そこで、私は声高々に言うのです。

 私は蓮華、犯罪者ハンターになる者ですっ、と。

 うふふ、警察関係者も驚くでしょう、こんなか弱い女の子が、凶悪犯を捕まえたのですから。

 想像すると今からとても楽しみです。



 数日後。サヨリさんのお店。


「えぐっ・・・・・・うう・・・・・・ぼ、褒められるどごろがぁ、うぐ、めじゃぐちゃ・・・・・・怒られまじたぁぁ」


 顔を伏せ私は大泣きしてます。サヨリさんはそんな私の頭を優しく撫でてくれました。


「お~よしよし。まぁ、当然だわな。不法侵入、違法改造、銃刀法違反、過剰防衛、エトセトラ。厳重注意で済んだのが奇跡だわ」


「えぐ・・・・・・代わる代わる色んな人に・・・・・・何時間も、ううぐ、えぐ、お説教を・・・・・・えぐぐ」


 精神的なダメージでこの国の実刑くらいの罰は貰いましたよ。なんで、私は良いことをしたはずなのに。


「あの包丁はファッションで、銃も飛距離を伸ばしただけで、叫び声が聞こえたから様子を見に入ったって、突然襲ってきたから対抗したって、そう嘘ついたのに、なんで・・・・・・」

  

「他にもお前色々装備してたろ、しかも、犯罪者ハンターって名乗ったじゃないか。そりゃばれるわ。お前は本当勉強はできるけど馬鹿な奴の典型だな」


 うぐぐ、未熟なのは認めます。でも、私があそこで犯人を止めなかったら今だに野放しだったじゃないですか。被害者が増えていたかもしれないのに。


「そうですっ、誰がなにを言おうと私は正しい事をしたのですっ! 私はめげません、これからどんどん捕まえてあの人達を見返してやるのです!」


 けろりと気分を入れ替え、やる気を戻します。


「おー、まぁ頑張れ。お前自身が犯罪者にならんようにな」


 次はもう少し軽めの事件を解決しましょう。

 最初からうまくいくとは限りませんもの。積み重ねが大事です。


 私の決意とは別に。

 少女失踪事件、その数は日に日に増えておりました。

 まだまだ未熟な蓮華ちゃんなのでありました。

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