好みの紅茶
「いつの間にかたくましい身体になっちゃって」
そう呟いたら、紅茶を淹れてくれていたルシアの手元が大きく乱れた。
魔法を使えば、部屋でお湯を沸かすのも簡単だ。
自分で入れることもあるが、ルシアの方が上手だ。
「世の中の何処に、覗きを悪びれずそんなことを口にする淑女がいるんですか」
「ここに? それにドア閉める時に、一応謝ったじゃない 気が動転してたから、メイド長にぶつかったわけで」
「その割には、ずいぶん身体つきを見る余裕があったんですね」
目の前に紅茶をおいてくれる。 砂糖一つ、ミルクはたっぷり、黙ってても熱すぎない温度に加減してくれている。
「見えたのは一瞬だったけど、この間ぎゅーってしてくれた感触とか、ベッドで横になった時とかまあ総合的に?」
ルシアが膝から、崩れ落ちた。
今窓から侵入者入ってきたら、私を守る前にやられそうだ。
「だから、そんな淑女らしからぬことばかりあなたは!」
「ルシアだって、私の個性だって言ってくれたじゃない!それにあなたじゃなくて、エマ!」
この間、約束させた名前呼びは、ルシアはあんまり守ってくれない。
カフスボタンは付けてくれているけども。
ため息まじりに、ルシアが口を開く。
「それでエマ、何か用があって僕の部屋に来たんじゃないの?」
「あ、うん ナディア姉様のお店に行きたくて」
ナディア姉様は学校を出てから、父から出資してもらいお店を開いている。
薬、香水、呪い道具なんかのお店だ。




