九 介入
無理やり感ぱない……気にしないでやってください……
2017/06/26 一部修正
この世界において【能力】は限りなく“文字通り”の効果を発揮する。
例えば……そうだね、【時間を操る能力】ならタイム・トラベルし放題!
だけど、おそらくあのメイド長はそんなことできないだろうね。会ったことが無いのでそうとも言い切れないけど。
理由は二つ。能力を使いこなせないないだろうことと“器”が足りないだろうからだ。
一つ目はただ単に馴れの問題で、修行でなんとかなる。だけど二つ目はどうにもならない。修行しても“器”はたいして大きくならないから。
“器”は魂の許容量のことだ。
この“器”が足りないと能力を十全に発揮できず、無理をすれば倒れ、最悪死に至る。
実際、銀華が数千年前に一週間寝込んだ。何をしたのかは教えてもらえなかったけど。真面目な銀華のことだ、たぶん無茶な訓練でもしてたんだろう。
要するに身の丈に会わない能力は身を滅ぼすということで、だからこそ、その“程度の”能力と呼ぶのだと僕は考えている。
んで、【程度の能力】は魂と密接に絡み合っている。
故に能力が“種族”に対応したものになることも多い。
例としては神族は【~を司る程度の能力】が多い……と思う。銀華がいい例だ。まだ銀華しか会ったことないけど!
他にも“魔法使い”は【魔法を使う程度の能力】を持っていることが殆どだけど、【魔法を使う程度の能力】を持っていなくても魔力があれば魔法は使える。
ろくろ首が首を伸ばせるのと同じだ。
そのように【程度の能力】がなくても“種族としての特徴”として能力のようなことができる場合も多数存在している。
さっき言ったろくろ首もそうだけど、東方好きが分かりやすいもので言えば吸血鬼の霧化や蝙蝠化なんかもそうだ。
炎を出したりするのも魔法だろうし。
前置きが長くなっちゃった。
何が言いたいのかと言うと、僕の種族は“創造神”なので、【あらゆるものを創造する程度の能力】を失っても少しは“もの”を創れるだろう、ということ。銀華に能力を譲っても問題は無い。
といっても、銀華にとっては七割酒の注がれた盃に鍋一杯分の酒を追加で注ぎ込まれるような物で、“器”が足りず使いこなせないだろう。当たり前のことだ。
それだけ。普通の能力ならば。
だけどこの能力はあの駄神様から貰ったもので何が起こるか分からなかった。
そのため考えうる限りの事は対策しておいた。
……しておいた、筈なんだけど…………
どうしてこうなった!?
僕がいるのは、まるでハ○ー・ポッ○ーの最終巻にでも出てきそうな真っ白な空間。
駄神様が転生の間、とか言ってたところだ。
前に来たときは遠近感が狂いそうな上に足下がおぼつかなくてかなり困惑したけど……虚無を体験したせいか特になにも感じない。
あれに勝る不安を与えてくるものなんてそうそう無いだろう。
「名無しく……いや……金色ちゃん、久しぶりだね。」
突然後ろに現れた何者か駄神様が少し怒気の含んだ声で話しかけてきた。
名前を知ってる事と突然現れた事には別に驚かないけど、なんで怒ってんの?
「君、自分が何をしようとしてたかわかってんの?」
え?能力譲んの駄目だった系?
「はぁ……わかってないって顔してるね」
~~~神様説明中~~~
Oh……マジカヨ…………
駄神様によると、僕の術は不完全であり、あのままだと魂が引き裂かれて世界は壊れていただろうとのこと。
顔がひきつるのがわかる。
「能力譲んのは良かったの?」
「別にいいけど君にあげた【あらゆるものを創造する程度の能力】は君用にチューニングしてあるから銀華ちゃんが使いこなすのは難しいと思うよ?」
ふーん、じゃあ【陰と陽を反転させる程度の能力】もそうなの?
「……金色ちゃん、俺はもう君の考えは読めない、というか読みたくないから声に出してくれ」
「どうして?」
「前と違って君は“虚無”を抱えているからな。俺はもう二度とアレを見たくない」
……なるほど。
虚無の記憶を持ってる僕の頭を覗くという事は虚無を見る事と同義だしね。
確かにアレに好き好んで関わる奴なんて、頭おかしいのか頭狂ってるののどっちかだけだろう。
「まあ俺の中の“虚無”は金色ちゃんの何百倍もあるけどな」
……それは……凄いな…………
特典2のおかげで僕は大してダメージ受けなかったのに、その何百倍とか……
僕だったら間違いなくおかしくなってる。
「理解した?
まぁそういう訳だから戻ったら読心対策した方がいいよ?
相手がぶっ壊れるから。
……君の世界の“元”にはそれができるキャラもいることだし。
で、なに言いたかったんだ?」
「えーと……あ、そうそう。
【陰と陽を反転させる程度の能力】も僕用にチューニングしてあるの?」
「いや、その能力は君が元々持っていた“才能”を君の世界のルールに沿うように変化させたものだね。
他人に譲渡しても大丈夫。相手が耐えられるかは別だけど」
「へー。そんな才能、前世で持ってたんだ……」
「伊達に“転生者候補”になってなかった、ということだね」
あー、そう言えばそんなこと言ってた気がする……
もうかなり昔のことだし、記憶が曖昧だよ。
「……じゃなくて、俺は雑談する為に君を連れてきたんじゃない!!」
うわっ!びっくりするなあ、急に叫ばないでよ!!
「俺がしたのはあくまで能力譲渡の補佐だけだからな。
魂を繋ぎ止め、安定させなくちゃいけない。
……と、いう訳でこれ引いて」
前にも見たことがある、オレンジ色の箱を渡してきた。
一体全体どういう訳だよ……じゃあこれで。
「……やけに聞き分けいいね」
そりゃぁ僕には駄神様には逆らいようがないし。
実力差がありすぎる。
「……えーと、化狐か……」
「は?狐?どういうこと??」
「だから、君の魂を繋ぎ止めて、安定させなくちゃいけないの!ここまではおk?」
おk。
「で、君の種族である創造神に、妖怪の特性を付加する。」
どうしてそうなったし。
「そもそも神族と妖怪の違いなんてケガレが絡んでるかどうかじゃん?たいして変わんないって。
大体神様が人間の姿でいなきゃならない決まりなんてないんだし。」
“ケガレ”とは魂が活動するだけで生まれ、“歪み”から大量発生することもある、一言でいえば邪のオーラ……みたいなものだ。
駄神様の言うとおり、確かに神族と妖怪は似ていて、神の力の源である“信仰”に“ケガレ”が混ざると妖怪の魂になる。
よくファンタジーに出てくる神獣と魔物の違い……みたいな?……違う気もする。
「それに“歪み”の元凶である“虚無”をずっと抱えてたんだし、たぶん大丈夫でしょ!」
結局、どうして妖怪の特性を付加、なんてことになったかは教えてくれないのか……
「で、くじの結果、化狐に決定しました!どんどんパフパフ~!
……個人的にはもう少しゲテモノの方がよかったんだけど……」
おい。
「まあ少し妖怪っぽくなるだけで実質今までと何も変わらないから。
君が死ねば世界は滅びる。……あ、でも能力増えたりしてるかもよ?」
まじか。これ以上強くなってどうするねん。
「金色ちゃーん、会話してよー。さっきから俺一人で喋ってるんだけど……」
「あ、ごめん。つい」
「ひどいなー……。
あ、じゃあこうしよう。」
「なんか嫌な予感がする……」
「今回の罰として原作知識消すから!
じゃあね!金色、俺を楽しませてくれよ!」
「え?今なんて言っ──────
◇◇◇◇◇◇◇◇
金色がいなくなった白い空間で、彼はダルそうにため息をもらした。
さっきまでのテンションが嘘だったかのような切り替え。
彼にとって金色の人生は娯楽だ。
視聴者自分があまり干渉するべきではない、と彼は考えている。
なので今回のようにつまらない終わり方をしたとしても、普段の彼なら何もせずに眺めていただろう。
金色は彼にかなり、それはもう気に入られていたようだ。
少なくとも彼が二度とかかわりたくないと思っていた虚無に自分から触れる程度には。
“創造神”という種族が他人を呼び捨てにする、ということがなによりその証拠だ。
(こんどちょっかいでもだしてみようかな?)
彼は気だるそうな表情を少し和らげ。
楽しそうな表情を浮かべた。
『あのメイド長』
グーグル翻訳で「十六夜」といれると「Sakuya」と出るほどの有名人。見たい人は「十六夜 英語」で検索!(グーグル翻訳に入力した場合、修正されたため「Sixteen nights」と出ます)
『ハ○ー・ポッ○ーの最終巻』
呪いの子が発売されたためもう最終巻ではない。
『それができるキャラ』
古明地さんとこの姉のほう。
『オレンジ色の箱』
前回(「二 能力」参照)と同じく、中身は駄神様の部下が一晩で書いてくれました。今回は400種。そこに駄神様が入れた100種のゲテモノを含めた計500種。