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東方金色伝 ~ GREAT GOLD ONE  作者: 黄緑
壱ノ章
7/23

七 兎鍋


 いつから失踪したと錯覚していた?お久しぶりですね。

 『この連載小説は未完結のまま約3ヶ月以上の間、更新されていません。』って表示がでたので更新します。申し訳ございませんでした!



 今回の語り手は金色ではありません。


2017/06/26 一部修正



◇午前五時◇


 銀華さんが起きてきて、おはようの挨拶を私達と交わすと足早に訓練場に向かう。


 相変わらず真面目な方だ。

 彼女が朝の鍛練を欠かしたことなんて能力を使いすぎて倒れた時以外見たことがない。

 黒にも彼女を見習ってほしい。切実に。


 彼女が去った後、黒とやっていた中将棋を再開させた。

 黒は弱いから程よく手加減しないと拗ねてめんどくさい。


 私達姉弟がわざわざ早起きをして将棋をしていると思う人もいるかもしれないがそうではない。

 私達はこの家にいる限り、睡眠を必要としないのだ。


 主様が“スキマ”と呼んでいる不気味な空間に建てられた(浮いているともいう)この巨大な家には主様と銀華さんの神力や霊力、妖力、魔力が隅々まで満ちているので、主様の眷族たる私と黒は周りの空気から力を吸収できるからだ。


 逆に言えばこの家から出れば一気に力を失い人の姿を保てるのは短時間……せいぜい一時間だし、猫の姿でも三時間だろう。霊力を使ったり戦闘行為をすればさらに縮まる。


 私の【能率を操る程度の能力】を使って力のロスを限りなく少なくしてもその三倍くらい。とてつもなく疲れるのであまりやりたくはないが。

 ……まぁ外に出るのなんて今のところ、年に四回の星空観測回で月に転移するだけだし気にする必要もあまりないけれど。



◇午前六時◇


 壁に掛けられた時計が六時を示した一分後、主様がリビングに入ってこられた。


 主様は色々なことを娯楽として楽しまれている。

 睡眠もその一つで、長い間続けられたせいか、ピッタリ六時に起きてこられ、ピッタリ十時にお休みになられる。

 その間は揺すっても呼び掛けても起こせなかった、と銀華さんが昔言っていた。

 黒が軽く殺気を当てても起きなかったのだから習慣というものの凄さがよく分かる。


 主様は「おはよう、白、黒」と挨拶されると盤面をチラッと見やり、黒にアドバイスされた。……羨ましい。

 ここからは本気で戦ることにしよう。手加減無しだ。


 主様がキッチンに朝食を作りに行かれたのを確認した後、容赦なく黒の駒を獲りまくってやった。



◇午前七時◇


 銀華さんが特訓から戻ってくると同時に主様が茶碗を運んで来られた。

 相変わらずのタイミングの良さ。

 やっぱり習慣というものは凄い。


 私が盤をどかして、布巾で机をふいている間に黒がキッチンから箸などを運んできた。

 ……主様が盤面をご覧になって「容赦なっ!」と呟かれた気がしたが気のせいだろう。


 朝食は白米と味噌汁のシンプルなメニューでありながら、いつも通りの素晴らしい美味しさ。幸福だ。



◇午前八時◇


 四人で訓練場に移動する。

 この時間(八時~十一時)は主様も参加され、私達に訓練をつけてくださる。


 まずは銀華さんvs主様の体術のみの格闘戦。終始主様が圧倒される。

 次に私と黒、姉様を使って勝負。この場合、主様は銀華さんよりそこそこ強いというくらいで圧倒はできない。

 といっても外から見れば演舞をしているかのような競り合いなのだが。


 銀華さんは刀術と霊術を主に使うが主様は刀術・霊術・妖術・魔法・“夢想”という退魔術・ほかにも様々な武器を使われる。まさに武芸百般、いやそれ以上だ。

 その差だろうけれど……それでも主様の方が強い。

 やっぱり主様は強くて凄い。


 そのあと主様vs私達三人(+姉様)でやって何とか引き分ける事ができた。

 手加減されてこれ。私は主様に追いつくことはできないだろう。



◇十四時◇


 昼食を食べた後は自由行動だ。

 皆その日その日でやることが違うし、何をするかは本当に自由。

 なんせ一言掛ければ月に行くことさえOKなのだ。

 といっても先ほどまでの修行も私たちが主様にお願いしてやっていただいているのだが。希望すれば一日中ぼーっとすることも可能だ。


 主様は魔法の研究や新しい“夢想式退魔術”の開発、図書室に入れる新しい魔導書の執筆、私達とゲームをしたり、自分は参加されずにスケッチブックに絵を描かれていたり。

 主様だけでこれなのだから今日は何をするかはほとんどその日に決めることになる。


 この日、銀華さんは自主鍛練、私は黒と中将棋の続き、主様は私達をスケッチされていた。

 平和だなぁ。



◇十六時◇


 私と黒は今、訓練場にいる。

 理由は中将棋でボロ負けした黒が「実戦なら負けねぇぞ、姉ちゃん!」とか言ってきたからだ。

 自由時間はまだあるし、何より私は黒より弱い。私は強くなりたいのだ。

 主様は絵の仕上げをするため自室に、銀華さんは図書館にいるようだ。


 黒と相対し、神霊力で打刀サイズの私を創り、構える。黒も神妖力で同じことをする。


 私の戦闘力はたいしたことがなく、黒に大分劣る。

 能力の相性が悪いというのもあるが、それを抜きにしても地力が違い過ぎる。


 私の能力は【能率を操る程度の能力】。

 言い換えれば効率を操る能力だ。

 無駄な体の動きや入れる力を削減できる。


 黒の能力は【敵を察知する程度の能力】。

 自分に害となるあらゆる現象がなんとなく分かるらしい。

 もちろん攻撃も“害”に含まれているためほとんどの攻撃を捌かれてしまう。


 私が勝てることといえば将棋のような卓上遊戯や、術式など。

 ……これに関しては黒に絶対負けない自信はあるけれど。

 でもカードゲーム、特にババ抜きだと黒は負けないのよね。

 あ、黒が出した刀(術式)に綻びを見つけた。……すごく教えてあげたい。


 ……銀華さんが強いのは日々の鍛練と圧倒的強者(主様)に毎日挑み続けた結果。

 主様に追いつくのは無理でも……せめて黒になら……私にも……



◇十九時◇


 夕飯の時間だ。

 いつものように黒が箸を並べていると、主様が宙に鍋を浮かばせながらリビングにいらっしゃった。


 おそらく気分(なんとなくの思いつき)で即席の魔法を使ったのだろうが……とてつもなく高度な魔法で芸術すら感じられる。

 なんせ、無重力空間(スキマ)に存在するこの家で地面と完全に平行移動しているのだ。

 私もいつかあんな術を使えるようになりたいなぁ……。

 いや、私には主様には……



 いただきますをしてから皿にとりわけ、食べる。

 美味しい。特にこの柔らかい肉が良い。さっきまで感じていたネガティブな感情が雪がれていくのがわかる。

 はじめて食べた味だが……銀華さんも同じ事を思った様で、「美味しいですね。この脂が少ないお肉は何ですか?」と主様に聞かれた。


 確かに脂が少なくていかにも主様が好まれそうなかん「これ?兎肉だよ?」


 …………え?


「兎……ですか?」


「うん、そうだよ?」


 兎ってあの、主様が昔描かれた絵にいたあの動物ですよね?

 耳が長くて白い、あの銀華さんがものすごく、それはもうこれ以上ないくらい気に入っていた…………


 銀華さんの方を恐る恐る見てみると、――途中で同じことを考えていたらしい黒と目があった――驚き、後悔、悲しみと表情が変わっていっていた。


「え?銀華どうしたの?兎嫌いだった?」


 まさか……銀華さんが兎(ラヴ)なのを主様は知っていらっしゃらなかったのか?


「主様……銀華さんが兎好きなの知らなかったのか?」


 黒を軽く叩く。まったくもう……その言葉使いは止めなさいと何度いったら解るの?


 どうやら主様は本当に知らなかった様で、固まってしまった銀華さんに必死で謝っていた。


 残すのはもったいないし、残りは早めに食べてしまおう。

 って黒もう食べ始めてる!負けるか!



◇二十一時◇


 風呂でもまだ固まっていた銀華さんを励ましながらリビングに行くと、主様がものすごい速さで絵を描かれていらっしゃった。


 私達に気づいた黒が言うには、お詫びとして兎に囲まれている銀華さんの絵をかいているのだとか。


 主様の腕なら、まるで空間を切り取ったかのような、それでいて実際より魅力が引き立てられている絵になるだろう。

 図書館にある数億冊のスケッチブックがそれを約束している。


 それで銀華さんが元に戻ってくれるといいのだが。


◇二十二時◇


 絵が完成し、画材を片付けている途中で午後十時になったらしく、主様が突然倒れ……る前に黒が支えた。

 黒はそのまま主様を背負うと、彼女の部屋に運んでいった。


 今まで何回かあったことなので黒も慣れたものだ。


 ……銀華さんはまだ戻って来ていなかった。




 白い兎にうずもれて、私が見たことの無いような満面の笑みを浮かべた銀華さんがかかれた絵。


 色は紙の白、線に使われた黒、そして銀のみ。


 もともとかなり美人な銀華さんを際立たせる兎たち。


 背景は無いものの、二時間ちょっとで描かれたなんて信じられないような完成度。


 これを見て、銀華さんは帰ってきた。

 銀華さんはその絵を宝物にしたそうだ。


 主様は満足できなかったのかより完成度の高い似た絵を描かれていらっしゃった。


 この日は私が兎を食べた最初で最後の日だった。



 突然の日常&説明回。

 しかも前回でてきたばかりのキャラで。

 さらに前回からかなりの月日が流れているという。

 自分の文章力のなさが恨めしい。


『年に四回の星空観測回』

 詳しくは外伝で解説する予定。


『兎肉』

 癖が無く、鶏肉に近い味がするらしい。金色は普段の料理で使わないような食材を食卓に並べるのがマイブームだった。ただ、虫系は一切使わなかった。


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