六 式神
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2017/06/26 一部修正
「ぎんかー!」
「はーい!なんですかー?」
広い訓練場に僕と銀華の声が響く。
……どう考えても広くしすぎだな、ここ。
体育館2×2×2個分の広さは流石にでかすぎる。まぁ遠距離攻撃の練習に使えるからそうしたんだけど、逆に遠距離攻撃を練習するときは短すぎるように感じる。
僕はアサルトライフルで特攻するのも芋砂するのも大好きだからね。逆にスナイパーライフル担いで突撃するのも大好きなんだけど。
「ほら、頼まれてた武器。刀だよ。銘は神刀・無瞑。ちょっと軽く振ってみて」
「無瞑、ですか。ムメイ、(金色さんが考えたにしてはいい名ですね)」
銀華が無瞑を抜く。
すると「すらっ」という音が響いた、気がした。
「…………うわぁ、綺麗な刃……!」
美女が刀を見てうっとりしてる光景は色々とやばいな。
……脇差二本腰に差してる僕が言えることじゃないけど。
突然、銀華は無瞑を構え、
「行きますっ!!せやぁっ!!!!」
神力を乗せた袈裟斬を放った。
金属質な音が響く。
……4mくらい離れていた壁から銀華の足元の床まで切り傷が付いた。
僕は軽く振れ、と言ったのになんでわざわざ神力を乗せて全力でふりかぶったんだ……
「凄い……!」
「『凄い……!』じゃねぇよ!僕の話聞いてた?
……はぁ、壁直さないと……もう、なんで張っといた結界壊すほど力込めんの?」
「す、すみません。ちょっとテンション上がっちゃって。
後で私が直しときます」
「……それならいいか。で、どうよ?無瞑は」
「素晴らしいです!こんなにいい武器をありがとうございます!」
「ん。どういたしまして」
わっはっは褒めるなよ照れるじゃないか。
こんなに喜んでもらえると刀鍛冶冥利に尽きるね。
しかしあの結界斬るとか……鉄なんか余裕で斬れそうだな。
もっと性能のいい結界作って張っとこう。
それと……僕も早く二刀流に馴れないとね。
~約700年経過~
「ふふふ、金色さん、これで王手です!居食い!」ぱちっ
「残念でしたー。獅子もらい!」ぱちっ
「なっ、そんなとこに角いました?」
「注意不足だぞー、銀華。あ、ついでに成らせる」
僕たちがやっているのは中将棋というゲームで、長くてもあと十五手で僕の勝ちになるはずだ。展開が早い?知らんがな。
「くっ、だったら!」ぱちっ
「ふーん、そうくる?でもこれで王手だ!」ぱちっ
「え?ま、まだどこかに逃げ場所があるはず……」
「あのー今いいですか?」
「考え中です!誰だか知りませんが邪魔しないでくださ……あれ?」
「……誰?」
盤を囲むように僕たちの両脇に知らない少年少女がいた。
とっさに白猫と黒鷲を構えようとして腰から消えている事に気づいた。
こいつら何者だ?
「わっ私は主様の刀の白猫ですっ!」
「俺は黒鷲だ!よろしくな、主さ……よ、よろしくお願いします、主様。」
は?僕の刀?
「どうゆうこと?」
「俺たちは作られてから長い間、主様に大事にされ続けられたから付喪神になれたん……なれました。」
黒鷲が答えてくれた。
付喪神って百年でなるもんじゃないの?
それに使い続けるのが条件なんだったら家の道具とかはそうならないんだ?
引っ越ししてからずっと使ってるのも中にはあるのに。
「たぶんこの家が神域になっているからじゃないでしょうか。そのせいで普通の道具は付喪神にならない。白猫さんと黒鷲さんは神力だけではなくそれぞれ霊力や妖力を持っていたからこそ付喪神化したと考えれば…………」
銀華が僕を見て詳しく解説してくれた。そんなに顔に出てたかな?
「そうだったんですか。それなら姉さんが人型になろうとしないのも納得ですね」
「ん?姉さんって何?」
「無暝姉さんと私と黒は三姉妹弟ですから!」
同時に作ったからかな?無暝が長女で白猫と黒鷲が双子って感じなのかな。
というか付喪神化と人型化は違うよ……。
まぁそれより……
「二人はこれからどうしたい?……ここから出てくの?
……二人が望むならそれでもいいけど……」
「いえ、とんでもないです!私たちを主様の式神にしてほしいんです!」
「式神?いいの?僕としてはそのほうがいいけど。黒鷲も?」
「もちろんだ、じゃなかったです」
二人とも既に決めてたのか即答だった。目からは強い決意が見てとれる。
僕も式をゲットできるのは嬉しいし、“式神に関する知識”を僕に創って、と。
…………!
んーこれは……どうなんだろ……。色々と人権無くなるような……
「分かった。本当にいいんだね?」
二人が頷く。銀華はこちらの邪魔にならないよう盤面を移動させている。
だけど、式にするのはやめたほうがいいかもしれない……
でも……言っても聞かなさそうな目をしてるし、どうしようか……
とりあえず式じゃない、もっと手軽な契約をして、折りを見て式の契約を上書きしよう、そうしよう。
「我が名、博麗之金色。白猫と黒鷲を我が式と────」
術を紡いでいく。即席で創った札を使っているからか制御が難しい。
それに式の契約術式に偽装しなきゃいけない。
「……よし、これでOKだよ」
「ありがとうございます!これからよろしくお願いします!」
「よろしく!」
「こちらこそよろしくね、白猫、黒鷲。あと無理に口調変えなくていいよ」
「ありがと主様!あと俺のことは黒と呼んでくれ!」
「もう、黒ったら……私は白と呼んで下さい!」
「分かった」
二人暮しが四人暮しになって毎日がもっと楽しくなりそうだ。
「金色さん、投了です……」
……まだ諦めて無かったのか……
その後、白と黒がそれぞれ猫と鷲の姿になってみせて銀華がモフモフ好きだと発覚しました。
『芋砂』
FPSゲームにおける定点スナイパーの蔑称。芋虫スナイパーの略。戦況を読まず動かないため嫌われる。金色は隠れて伏射する行為だと勘違いしている模様。芋砂を例にあげてスナイパー全体を馬鹿にする人もいるけどそういう人はA砂の驚異を知らないんだろうな。
『突撃』
ア○スラーン戦記に登場するパルス王国の言葉。ルビ通り突撃という意味。