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大変お世話になりました

 残念、1日遅れました。


 もう10月も終盤ですが、自分が住んでる所は昼間はまだまだ暑いです。

 朝晩はそれなりに冷えるので、今年もしっかり喉が痛いです。

 皆様ご自愛ください。

 あれから一週間。

 毎日三半規管を鍛えています。

 初めの2~3日はずっとグロッキーだったけど、だいぶ鍛えられたらしく、休憩の数も目に見えて減った。かなりスパルタな鍛え方だけど。

 その分、進み方も速くなって、当初の予定より4日ほど遅いけれど、想定の範囲内だそうだ。

 確かに電車や飛行機みたいに時間通りにはいかないよね、一番早い乗り物が馬の時代だと。

 それでもわたしのせいで遅くなったのは間違いないので、初日の夜に騎士団の人達にはお詫びした。

 あかりはわたしに似ず、乗り物酔いは一切無いようで、馬車の窓から外を見て楽しんでいる。

 この子はこういうところではかなり空気を読むのか手がかからない。ありがたや~。

 服も、着替えがないという話から、アウルさんのご実家や近所の人達からもう着ないからと何着かいただいてしまった。足首まで隠れる長いワンピース。

 わたし身長ない(チビ)だから、こういう服はあんまり似合わないんだけど、この国はこういうデザインしかないから、気にしなくていいのが良かった。着たくても似合わないと言われ続けてきたから、ちょっとラッキー。

 小さい、かわいいってあれもこれもといっぱい服をもってきてくれて、まぁ、子供用でちょっと恥ずかしかったけど、コスプレみたいで楽しい。

 最初に着てた服は洗濯して通園バッグに入れてある。


「いかがですか? 馬車には慣れましたか?」

「はい、けっこう慣れたと思います。…お尻は痛いんですが」


 今日も隊長さんとわたしとあかりで馬車に乗って王都に向かう途中。


「明日には王城に入ります。もう少しの辛抱ですので」

「はい、ガンバります。」


 お尻、と聞いた隊長さんの眉頭が一瞬クイと上がった。

 そういえば、中世ヨーロッパの時代って、いろいろハシタナイって言われて女性の言動がかなり制限されてた時代だっけ?

 今までの街並みとか見ててもそれに近い世界なのかもしれない。

 女がお尻だのなんだの言うのはこの人も受け入れられないのかもな。

 ヤバい、常識が分からない。

 お偉いさん達に会う前に聞いてたほうが良いよね。


「あ…ごめんなさい、はしたないですね。たぶん、わたしの常識と皆さんの常識が違うと思うんですが、いろいろ教えていただいても良いですか? 王様とか相手に、変なこと仕出かさないようにしたいので」

「いえ…、でもそうですね。簡単になりますが、お話ししましょう」


 隊長さんは、かいつまんで教えてくれた。

 王様が許すまで話しちゃいけないとか、所謂性的なことはもちろん、体の女性的な部分を口に出さないとか、肌をむやみに晒さないとか、王城に着いたら騎士団の人達ともあまり話さないようにとか、とりあえず顔を顰められるようなことを覚えておけば、今回の登城は乗り切れると思われる。

 …服いただいてて良かった。最初に着てたTシャツ短パンとレギンス、スニーカーだとかなり奔放なんじゃない?


「明日は私と一緒に行動していただきますので、それほど所作を気にしなくてもよろしいですよ。見ている限り、マリーさんはそれなりの教育を受けているように思われます」


 教育…躾とかそっちの意味だろうな、この場合。

 短大までは出ても特別社交マナーを習ったりはなかったけど、大丈夫かな? 貴族の常識は分かりませんのことよ…っ!


「貴族などの身分制度などはわたしの国には無くて、さっぱりなのでフォローをいただけると助かります」


 知らない場所で王様の反感かって放り出されても生きていけないからかなり切実なお願いを、隊長さんはしっかり首を縦に振ってくれた。


「お城の中では荷物はどうしたら良いですか? 一応、絶対無くせないものとあかりの服とかは手元にあるんですけど…」


 アウルさんのご実家からは、わたしの服だけじゃなくて、あかりの服とオムツまで用意してもらった。 当たり前だけど布オムツで使い方が分からないわたしに丁寧に説明もしてくれた。

 肝っ玉母さんって言葉がよく合う、素敵な人だった。

 何もお礼が出来てないのが申し訳ない。ホント足を向けて寝られない。


「荷物は部屋に置いていてください。城内の客室が用意されているでしょうから」

「それは、聖女だった場合ですよね。何度も言いますが、わたしは自分達が聖女だなんて思えないです。特別な力も能力もないですから。聖女ではなかったと確定したあと、わたしとあかりがどうなるのか教えてください」

「…王宮先見師の言葉通り貴女方が現れました。私は貴女方が聖女様であると思ってますからそのようなことは考えなくても結構ですが、もし貴女方が聖女様ではなくてもそのまま街に放り出すような真似はいたしません。家や職のお世話はさせていただきます」

「元の世界には戻れないんですか?」

「どうでしょう? そういう話は聞きませんでしたが」

「そうですか」


 やっぱり神隠しとか、次元の切れ目とかそういうのに足突っ込んじゃったのかなぁ。

 ごめんね、あかり。

 でも、不自由させないようにガンバるからね!


「今日の宿は、王都から馬車で2時間ほどの町、マールです。少し早いですが、明日は早朝に出発しますので早めに休んでください」

「分かりました。あかり、お馬さんは明日でバイバイだって。泣かないでバイバイ出来るかな?」


 馬車の窓にへばりついてたあかりを横に座らせて言うと、あかりは不満げな声を出した。

 わたしが思ってたよりも、あかりは馬車が気に入ったらしい。

 思わず笑ってしまったわたしに、あかりは抱きついてきて大きなあくびをした。

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