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ちょっとご両親にご挨拶を

ギリギリ…今日に間に合いました。

「それでは、後で参ります」


 隊長さんはそれだけ言うと、迎えにきた案内役の村の人と村長さんの家に行ってしまった。


「では自分が、今日休む所にご案内します」


 隊長さんから後を任された騎士さんに促され、ゆっくり歩き出す。荷物は全部持ってもらって申し訳ないけどありがたい。

 アウルさんというらしい騎士さんは、赤褐色の短髪に焦げ茶色の目のまだ幼げな顔立ちの人。

 もしかしたら20歳になってないかもしれない。

 体もガチムチな他の人達と比べたら細い。でも細マッチョって言うほど細くはない。

 なんとなく取っつきやすいタイプ?


「よろしくお願いします」


 この国では遠征の為の宿泊施設が、いろんな街や村に建てられていて、それぞれの代表者に管理を委託しているそうで、管理費用込みの委託料も国から支払われているらしい。

 今日はその施設に泊まるそうだ。

 当たり前かもしれないけど、空気がおいしい。

 深呼吸を繰り返すと、具合が悪かったのも消えていく。

 それにしてもすれ違う村の人がみんな笑顔で挨拶してくる。

 騎士ってもっと遠巻きにされるイメージだったけど。下手なことすると公務執行妨害で逮捕! みたいな。

 でも、全然そんな感じはなくて、どっちかと言うと地域密着型のお巡りさんみたい。


「具合はいかがですか? 辛いならば、今日はこのままお休みいただいても良いと、隊長からは言付けを預かってますが」


 えっ? 隊長さんそんなことさっきは一言も言ってなかったけど…また後でって言ってたし。また気を使わせちゃったかな?


「いいえ、今深呼吸してだいぶ良くなりました。もう少し休んだら問題ないと思います」


 お世話になってる身で一人だけずっとダラダラするのもちょっと。

 あかりが起きたら、どっちにしてもゆっくりなんてできないしね。


「そうですか。ならば、しばらくゆっくりお過ごしください。どちらか行きたい所があればご案内しますので、また申し付けください」

「えっ? そんな、お仕事もあるのに…ダメですよ!」


 王都行きはそちらの都合でも、誰もいない草原で助けてもらったのはこっちだ。

 聖女様(目的の人)とは決まってないからお客さんじゃなくて居候だし。


「今の自分の仕事は聖女様のお世話をすることですから。それにこの村は自分の生まれ育った村なんです。聖女様のお陰でみんなに自分の仕事を見てもらえて、とても嬉しいんです」


 その聖女様ってのやめてほしい…。まだそうとは決まってないし。

 第一召喚される聖女様なんて高校生くらいのヲトメでしょ。元ヲトメのアラサーでは有り得ないわ~。

 この村に泊まることになったのはわたしが時間かけさせたからですよねー。

 まあ喜んでる人を見れたから良かったのかな…? 自分的な救いって意味では。


「その聖女様っていうの止めてもらっていいですか? まだ調べてないし、わたし的には絶対違うので。マリーって呼んでください、騎士さん」

「すみません、マリー様。自分もアウルとお呼びください。ご一緒してるのは皆騎士なので」


 〈様〉もいらない…。

 隊長さんもゴネてゴネてやっと〈さん〉付けだったし。

 小説で呼んでるときは細かいこと気にすんなよって思ってたけど、実際やられるとなんとなく背中がむず痒い。

 あれかな。ファミレスみたいに棒読みじゃなくて、敬称に気持ちが籠ってる感が半端ないからかな。


「じゃあ、アウルさんて呼ばせてもらいますね。さっきからみなさん和やかに挨拶されてるのはお知り合いだからですか?」

「はい、そんなに大きくない村なので、家族や親戚みたいに過ごしてきた人達ばかりです。だから仕事ではあるけれど、久しぶりの里帰りで」


 そっか~、騎士さん達って訓練とか巡回とかでまとまった休みってなこなか取れなさそうだしね。日本の警察みたいに。

 …あ~従兄弟元気かな? 今交番勤務から別なとこに移動したとか言ってたな。


「へぇ~、ってことは、隊長さんがアウルさんを案内役にしたのはそれが理由ですか?」

「はい。この辺りを散策するにしても、部屋で休むにしても自分ならいろいろと周りにも都合が良いだろうとのことでした」


 わぁお、隊長さんってこんなことまで気を使うのね~。使わせたわたしが言うことじゃないけど。

 まさか誰がどこの出身か全員覚えてるわけじゃないよね? そうだったら優秀過ぎて引くわ~。


「そうですか。じゃあ、荷物を置いたら案内してもらっても良いですか?」

「はい! どこかご希望はありますか?」

「はい、あなたのご実家に」

「はいぃぃ~!?」


 久しぶりの帰省でいつ実家に顔を出すの?


「今でしょ!」

「えっ! 何がですか!?」

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