表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/16

歩けども歩けども

ドラえ○んの道具欲しいですよね…

「だっこ」

「ごめん、あかり。もうちょっと自分で歩いて。ママ抱っこ出来ないよ」


 斜め掛けに自分のカバン、肩に保育園の通園バック。

 右腕にエコバッグ、左手はあかりの手を引いてトボトボと歩く。

 もう何回抱っこと歩かせるのを繰り返したのか。

 歩けども歩けども広がる草原。遠くに山。

 まだまだ明るいけど、夜になる前にと思って子どもにもムリさせてるけど、こんなにゴールが見えないと焦りも出てくる。

 こんな何もないところでは夜は越せない。

 せめて身を隠せるような木とかがないと、どうぞ襲ってくださいと言ってるようなものだ。

 でももう限界だ。

 ほとんど抱っこだったとはいえ、保育園で1日過ごしたあかりは疲れと眠気でグズってるし、わたしも腕と足と肩が痛い。

 それこそ今何かに襲われても逃げることも出来ないくらい、ヘトヘトになってる。

 現代人には体力なんかない。


「あかり、眠いね。ちょっとお水飲んでごろんしようか」

「ぅぅ~やぁ~」


 ドサドサと荷物をおろし、通園バックから着替え入れ用の大きめのレジ袋とタオルを出してシートと枕の代わりにする。

 下がフカフカの草だから、これでも痛くない。敷いたのはあくまで汚れ防止だ。荷物はいい。バッグは多少汚れてもキニシナイ。

 レジ袋に座らせて、ストロー付き水筒を渡して自分のタンブラーも取り出す。

 あかりのもわたしのも中身はただの水。毎晩わざわざお茶を作るのが面倒くさいだけだけれど、あかりもお茶じゃなくて水っていうことが多いから、水以外を入れたことはない。

 水を飲んで一息つく。


「あー、荷物重かった。四次元○ケットが欲しいわ…」


 あれ便利だよね。バッグごと入れられるし、買い物しても荷物にならないから手ぶらだし、なにより子どものお出かけの荷物を好きなだけ持っていける!

 オムツとか着替えとか、おやつとか飲み物とか…ゴミだってごみ箱探さなくてもいいし。

 子どもが小さいときって、本人の倍くらいの荷物になる。

 他の道具よりあのポケットが欲しい。


「ね~、あかり。…眠いね、ちょっとねんねしようね」


 ほとんど目が閉じてしまったあかりを寝かせて回りを見渡す。

 ホントに何もない。

 身を隠す場所も、人影も。


(とりあえずで歩いたけど、マジでここ何処なんだろう? 日本じゃないのは分かるけど、絶対さっきまで街に居たのに)


 それに時間もおかしい。

 さっきまでは夕方だった。傾いた夕日が眩しかった。

 でも今はまだ日が高い。もしかしたらまだ午前中なのかと思うくらい。

 ロンドンあたりが時差的に合ってるかもしれない。

 でもイギリスってこんな広すぎる草原あるのかな?

 海外なんて高校の修学旅行でしか行ったことないし、場所もお隣だったし、イギリスは国土はそんなに広くないはずだし、ロンドンは霧の街ってことしか知らない。


「はぁ~、どうしよう…?」


 完全に寝入ってしまったあかりを見ながら途方にくれる。

 ボヘ~っと空を見ててふと思い出した。


「あ、ケータイのGPS」


 ここにきてやっと思い出す辺り、無自覚に混乱してたらしい。

 普段手放せないくらいのものなのに。

 反省しながらバッグからケータイを取り出す。


「…あー、やっぱり日本じゃないのかぁ?」


 圏外の表示を見て気持ちがズンと重くなる。

 予想はしててもショックだ。

 でもGPSは電波は別じゃなかったっけ?

 使えるかな…?

 一縷の望みをかけて表示するが。


「…あ"ーーー!! マジで! マジで出ない!」


 最後の希望は消えた。

 もう、呆けるしかない。


(意味が分からない。一体何が起こった? 神隠し? 神隠しってあんな街中で起こるの?)


 ここまでくると、だんだんと今の状況が現実味を帯びてくる。

 さっきまであった、ちょっと楽観的な気持ちは薄れて恐怖感がわいてくる。

 絶望が顔を覗かせたとき、本物の絶望が空から降りてきた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ